第86話 これがまさに、手の平返し。
「ウチの娘を人間ごときには、やらん!!」
まるでちゃぶ台をひっくり返しそうな親父さん、
いや例えが古いな、昭和のドラマではそういうの居たんですよ、
インキュバスなのに、いかつい顔してるが身体は仕上がっている。
「そ、そこをなんとか」
「いくら族長や校長が許可しても、ワシは許可せん!!」
「ごめんなさいね、こうなってしまうと頑固で、どうしようもないのよ」
とまあ奥さんサキュバス、
いや巨乳団地妻ですか凄いですね翼生えてるけど、
そんなアトリちゃんのご両親のご自宅ですよ、お邪魔しています。
「でもその、当のアトリちゃんも人間の世界に行きたがっていますし」
「それとこれとは別だ、娘を幸せにしてくれる人間が居るとは思えん」
「あらあら、まあ粗茶をどうぞ」「あっはい……ぷはぁっ、独特な味で」「それを飲み干せる度胸は認めてやる!」
いったい何が入っているんだよ、
廊下ではアトリちゃんの兄姉弟妹が覗き込んでいる、
子供五人の真ん中らしい、二男三女の次女、嫁に出るのに問題は無いはず。
「あっ、その、つまらないものですが、まずはこれを」
そう言ってアイテムボックスから、
縛ったお肉を出す、例のワニ型モンスターのですよ、
人間は不味い、魔族は美味いと言っていたやつ、家族分。
「おお、これは、といってもこれではうむ、一晩で」
「十二個あります」「まあ」「お母さんどうぞ」「ちょっと覗いてないで手伝いなさい!」
「「「「はぁーーーーいっ」」」」「あの、私も」「アトリは座っておきなさい」「はい」
ママさんに言われて、
俺の隣で座り続けるアトリちゃん、かわいい。
「うむ、この肉は肉で挨拶として貰っておくが……」
「あっそうそう、中から出た高級水魔石、これも十二個セットで」
「なっ、なんと!」「箱に詰めておきました、どうぞお納め下さい」
実はあの後、まだボスのオオサンショウウオが復活していないと思い、
私兵のふたりと再び潜ったのですよ、大丈夫そうだったので……ということで、
追加の高級水魔石と淫魔大好きワニ肉を十二匹分、こうやって用意できました。
「むっ、娘のために、これは、いや、我が家のために、貰っておくかの!」
「あなた、顔がほころんでいるわよ」「まあ、少しは話のわかる人間で良かったわい」
「更に皆さんには、常備薬というか、こんなものも」「また箱とは」「これも十二個入りです」
蓋を開けると、そこには!!
「まあ、ポーションね、高級そうな」「パーフェクトポーションです!」
「ま、まさか、エリクサーに次ぐ効果があるという」「なにか大きな病気や怪我をした時に」
「我々の健康まで気を使ってくれるのか、人間が」「娘さんをひとり、貰う訳ですから当然です」
あと売れば大金になるはず、
わざわざ人間界まで行かなくても、
例のタウナー酔っぱらい垂れサキュバスなら魔石で買い取るだろう。
「なんだなグランくんと言ったか、少しは前向きに考えなくも」「最後にこちらを、お父様」
「お、おお、お父様?!」「アトリちゃんのお父様とうだけの話ですよ」「そ、そうか、それなら」
「あなた、そこは『誰がワシをお父さんと呼んで良いと』とかじゃないの?」「して、その箱の中身は」
まるでドラマでどっかの名医紹介所が、
手術の代金請求書と一緒に出すメロンみたいな箱だが、
開けるとそこにあった、煌々と輝くポーション、いや、ポーションなんてレベルでない物は……!!
「エリクサーです」「ほっ、本物か?!」
「娘さんひとりの命をいただくようなものですから」
「あなた、あとでブルラズさんに鑑定していただきましょう」
これで俺の手持ちエリクサーは無くなったけど、
毎週入るし同じ効果の魔法も持っているからね、
これで渡せる物は全部だ、これ以上言われたら寿命になるが、さすがにそれは。
「本当に良いのかね?」
「はい人間側の領主サイドから、ということで」
「良いのだな? 本当の本当に、ほんっっっとうに」「ええ、いいんです!!」
ガシッ、と俺の小さい両手を掴むインキュバスお父さん!
「娘を……アトリを、よろしく頼むっ!!」
「はいお任せ下さい、といってもすぐ連れ去る訳ではありませんが」
「アトリ、良い人間に貰っていただけるな」「アトリ、良かったわね」「うん、パパ、ママ!」
手の平返しきたあああああ!!!
(よし、これで地味サキュバスメイドはゲットだ!)
あとは大人になるまで、
しっかり魔物魔法を憶え続けて貰わないと……
何もしなくても憶えるんだっけ? じゃあ使い方をマスターして貰わないとね。
「それではお父様、お母様、改めて……娘さんを、アトリさんを僕に下さいっ!」
「やらんっ!!」「ええ、そんなあ」「ごめんなさいね、夫はこれをやりたかっただけなの」
「えっ、じゃあ」「最初から何の問題もなかった、すまんな、族長の命令は絶対であるしなっ!」
返す手の平なんて、なかった。
(まあいいや、これで地味ハーレムにまた一歩……!!)
というコント? を終えて、
錬金術師屋さんに戻ったのでした。




