第66話 娘さんを、僕にくれるって。
「領主様、エリック=フィッツジェラルド子爵様っ」
「どうか我が娘、イレタをフィッツジェラルド家三男、グラン様に献上させて下さいませ!!」
夕方、イレタちゃんと一緒にやってきたご両親、
いやお母さんはさっき眼鏡屋で見て隣りはどう見てもお父さんだろう、ふたりして伏せてる、
そしてやけに可愛らしい服のイレタちゃん、でかいリボンまでつけているが眼鏡はいつもの地味なやつ。
(まるで嫁入りにでも来たみたいだ、七歳なのに)
と思ったら献上ときたもんだ、
来客部屋でふんぞり返る父上、
すまし顔で立つ母上の隣に僕っと。
(カロリちゃんは俺の部屋でゴロゴロしていたはずなのに……)
マップを見るとドアの隙間から隠れて見てるな、
六歳だからって覗きは許されないのでは、怒られるぞ、
かと思ったら保護者のアナベガさんも見てら、ならいいのか……いいのか?!
「ほう、我が息子、三男グランの嫁にくれると」
「ははっ、領主様には我に農地を貸して下さり、本当に感謝しております」
「ですので、こんな地味な娘ですが、学校ですっかり仲良くなったようですので」
せっかく学校で出来たお友達まで、
俺の所へドナドナさせられるのかよ……
なんというか、チョロイどころか人生イージーモードだな。
(まさか女神様による、俺への異世界接待か?!)
なんだかパチンコ屋で当たる台に座らされている気分だ、いや、やらないけど。
(正確には、ほとんどやらなかったけど、だな)
いやパチンコ屋でロケはしたよ、
確か『和製ヨン様大集合』とかいうテレビの企画で、
ヨン様になりきった日本人十人がヨン様のパチンコを打っていた現地司会というか実況というか。
(たまーに、そんな仕事もやっていた)
かなり若い頃、
前世の二十一歳くらいだっけ、
俺もまだギャラ安かったしなあ……それはそうと、話は続く。
「しかしウチのグランは、この子爵家を巣立って冒険者になるつもりだが」
「最近、娘は攻撃魔法を憶えました、種類も少しずつ増えているようです」
「きっとグラン様への愛ですわ、そうに違いありません、是非ともお受け取り下さい!」
ぐいぐい推してくるイレタちゃんのご両親、
そして、はにかんで嬉しそうなイレタちゃんご本人、
いやまあ、俺としては断る理由は無いというか、むしろ嬉しいのだが。
(いいのか、本当にいいのか、ってちょっと思う)
まず領主といってもスケール的には前世の市長みたいなもんで、
そこに嫁を差し出してそこまでメリットはあるのかっていうのと、
しかも冒険者として実家とも事実上、切れる訳で……いやほんと目的を知りたい。
「大切な娘であろう、確かそちらの家は……」
「はい、ハイターとハマッタという双子の兄が居ます」
「領主様にお貸し頂いている農地で、一生懸命働かせていただいておりますわ」
農地、借地……あっ、そういうことか。
「イザベルは、どう思う」
「はい、直感的にも、話した感じも、嫌な部分はどこにも」
「そうか、イザベルがそう感じるのであれば、間違いないだろう」
あっ、こんな感じのシーン、
参加したテレビドラマであったな、
直感と言いながら実は裏で、相手家族を全て調べていたっていうやつ。
(それで大丈夫な家族ならOK、駄目ならNGを『妻の直感』ということにして言うやつ)
表に出来ない理由は、
奥様の『なんとなく』というジャッジにしてしまえば良いのですよ。
「では当事者であるグランはどうだ」
「ええっと、まずはお試しで、泊まったり帰ったりで」
「つまり、通い妻か」「はい、僕もまだ七歳ですし、こういうのは慎重に」
あとカロリちゃんも居るからね、
イビって追い出そうとしたらその時点でアウトだ、
幼い『魔が差した』で僕との関係を終わらせるには、もったいなさ過ぎる。
「ということだそうだ、イレタちゃん、どうだね」
「はい、泊まって良い日はお泊りします、駄目な日は帰ります」
「では婚約という形に異論は無いな?」「「ははーーー」」「はいっ!」
平伏した感じのご両親と元気に喜ぶイレタちゃん、
あと僕も口を挟まないから、異論なしで話が進むだろう。
「ではそちらの農地、徴税は婚約中は停止とする」
「ありがとうございます」「どうか娘をお願い致します」
「では細かい書類はスティーブン」「はいご当主様、お任せあれ」
うん、やっぱりこれが目当てだったね!
(それはそうと、今夜のところは、どうしよう)
カロリちゃんも、
六歳ながらドキドキしているのかな?
だったら心配のまま寝かせるのは良くないか。
(両手に花で眠るのも、悪くはない)
六歳と七歳だけれども!
あっそうだ、大事なことを聞かなきゃ。
「イレタちゃん、今夜、ここに泊まるとして」「うん」
「着替えとか、明日の学校の準備は、あるの?」「あっ」
「私が取ってきますわ」「ママ!」「だそうだグラン」「はい父上」
そこまでご両親がしてくれるのであれば、
乗ってあげないと、これで帰すと『かわいそう』まであるか。
「わかりました、イレタちゃん、約束を」「はい」
「喧嘩はしない、だったら良いよ」「ケンカはしません!」
「良かった」「グランくんとケンカしたこと、ないのに」「うんまあ、そうだね」
いや俺が心配しているのは、
カロリちゃんとなんだけれどもなあ。
(俺がしっかりすれば、いいか)
地味ハーレムの、
ある意味で予行練習だ。




