第65話 山賊から、私兵となりました。
「お久しぶりです」「我々を、お憶えで」
「ええっと、確か……トンヌラさんとガリンペーロさん?」
「ひでえ、ガルダだ」「サバサっす」「そうそう、山賊さん!」
山奥の廃道で廃ドライブインみたいな山小屋廃墟、
そこでお弁当を食べていたら襲ってきた山賊二十人組、
それを魔法で『ティム』して、サキュバス村に引き渡したのですが……
(ふたりだけ、死罪レベルじゃないのが居ました)
なのでサキュバスさんから返品され、
こっちの商業ギルドへ引き渡して洗いざらい、
ふたりして罪を、白状して貰ったはずなんだけれども……
(アウトな十八人は、美味しくいただかれちゃってるんだろうなあ)
ぼくななさいだから、
くわしくはいえませーん。
「ええっとミラさん、どこまで聞いていますか」
「グラン坊ちゃまを襲った山賊の生き残り、それ以外は崖崩れに巻き込まれて死んだって」
「それでこのふたりの、今後については」「イシタ様が、我が家で買い取ったと、格安で」
犯罪奴隷みたいなものかな、首輪ないけど。
「それでどう使うと」「門番や使用人、あと用心棒」
「私兵かあ、本人達はそれでいいの?」「仕事がありつけるなら」「飯が食えるのは嬉しいっす」
「で、結局、罪は」「証拠不十分だ」「とはいえ被害の辻褄は合ってるらしいっす」「なるほどね」
場所が場所だ、あんな危険な廃道、
空から飛びでもしない限り普通は通らない、
やましい事があって隣国へ抜けるヤカラか、あの近くの集落……の住人はみんな飛ぶか。
(あとは魔物目的の冒険者、って特に美味しい魔物は居ないんだろうな)
ダンジョンだってサキュバス集落まで行かないと無いっぽいし。
「じゃあ無罪放免ですか」「正確には実刑猶予、証拠が揃ったらまた呼ぶだと」
「ただ、人手不足で冒険者も雇えないから、あえて現場を探す事はしないらしいっす」
「実際の所はどうなの、被害者は」「大人は殺されて魔物の餌だ」「子供は隣国に売られて、後は知らないっす」
うーん、このあたりどうするか、
まだあの親分とか生きてたら情報を聞けるが、
無理に首を突っ込むのもなあ、七歳の僕には、面倒くさい。
(冒険者ギルドに依頼でも出てたら別だけど)
確か無かったはず、
農作物運搬の依頼書の裏に隠れてたら知らないけど!
「まあいいや、カロリちゃん、怖くないよ」
俺の後ろに隠れていた六歳児が、
ひょこっと顔を出す、これには山賊もにっこり。
「ガルダだ、もう山賊は足を洗った」
「サバサっす、もう子爵家の従者、いや家来っす」
「……カロリ、です、住みます、よろしく」「「うっす」」
うん、山賊はティムしてるから大丈夫だ、
これ急にティムが切れたりとかしないよな?
魔法を掛け直す必要とかも無いか、とにかく回収して持って帰ろう。
「ミラさんとしては、このふたりは」
「男手は助かります、あとグラン坊ちゃまの送り迎えとか」
「ええっと、僕ひとりでテクテク歩くの好きかも」「でもカロリちゃんが通うようになれば」「あっそうか」
俺がいくら本当は強くて護れるって言っても、
七歳児が無詠唱魔法で暴漢をバシバシ倒してるのを、
人に見られたらやっぱり不味いよな、そういう意味では必要か。
「ガルダさんサバサさん、送り迎えとか平気?」
「そりゃあ仕事なら」「むしろ楽っす」「ならいっか」
後の話は、
ミラさんの居ない所で聞こうっと。
(あと、余白記入のテスト素材にも使えるな)
そう、人体実験に。
「それにしても、もうちょっとまともな服は」
「山賊だったからな」「風呂は入れて貰ったっす」
「坊ちゃま、そのあたりも含めて執事のスティーブンさんが教育すると」「教育かあ」
きっと、『わからせ』られるんだろなあ……あっそうだ!
「ちょっと、ないしょばなしー」
元山賊のふたりにしゃがんで貰って耳打ち。
「よけいーなことは、いわないでねー」
「もちろんだ」「わかってるっす」「ならばよし!」
「なんですか、隠し事ですか」「ミラさん、男と男の話だから」「そうですか」
ティムしてあるとはいえ、
テレポートとかバレてるからね、
あとサキュバス村についてとかも。
(ここは『言うな』と言えば、俺に絶対服従なはず)
スティーブンさんが変なスキルとか持っていなければ……
まあ、あのおっかない執事さんがインキュバスだとか聞いた事ないし、
一応はステータスを後で……嫌だぞ正体が実は悪魔だとかスライムだとか。
「じゃあ坊ちゃま、あと他に寄る所は無いですよね」
「うん、カロリちゃんは?」「んっと、だいじょぶ」
「そこは『大丈夫』ね、『う』が抜けてる」「だいうじょぶ」「こら」
こうしてゆっくり家に戻ったのだが、
このあと夕方、信じられない急転直下な出来事が起こるとは、
夢にも思わなかったのだった、いや、前触れはあったけれどもね。




