第57話 帰宅前に、仕上げを。
「じゃあ、また会いに来るから」
「はいグラン様、お待ちしております」
「それで、どんな魔法を沢山マスターしたいか決めておいてね」「はい!」
そう言ってイシタさん家の地下牢からお別れ、
いや、あくまでもクリスちゃんを護ってくれているのです!
やはり予想通り、この家に結界が張ってあってテレポートでは入れないらしい、出るのはOK。
(だが、余白記入を使ったらどうかな?)
やらないけど!
という訳でまだ朝じゃないけど帰るのですが、
その前にひとつ、仕上げをしようと思いましてですね……
(まあ、やらなくても良さそうだけど、気分的にやりたい)
俺が向かった先は、
イシタさんの部屋ではなく……
コンコン、コンコンッ
「失礼します」「ええ、どうぞ」
入るなり、相変わらず良い匂いの部屋、
そこに居たのは父上のかつてのメイドだった、
イシタさんの伯母、ミロルさんだ、何やら本を読んでいた。
「あの、確認をして欲しくて」「何をかしら?」
「これです」「それは、まさか、本当に……エリクサー?!」
そう、七日経って出せるようになった二本目だ。
「一応、これをミロルさんからいただいた箱に、
って元は父上から貰ったプレゼントの箱でしたっけ、
意味ないかもですが、ミロルさんの部屋で入れたほうが匂いが入るかなって」
細かいけどね。
「そうね」「それで、できればミロルさんに入れて欲しいかも」
「……だったら少し待っていただける?」「はいはい待ちますよ~」
「もうあまり使ってないのだけれども……この香水ね」「それって」「私が人間として使っていたの」
この匂いでミロルさん一発判明ってか、
エリクサーを受け取るとその香水を軽くかける、
俺の出した箱の内側にも、そしてエリサーを入れ……る前に。
「これも意味がないかも知れないわね」
そう言ってエリクサーを抱きしめる、
温もりとか伝わらないだろうが、ひょっとしたら気持ちが……
まあ、俺のワガママとは言え、本当に最後の想いが伝わると良いが。
「……これでいいかしら」
そっと箱に入れた。
「はい、ありがとうございます、割れないように気を付けて持って行きます!」
慎重にアイテムボックスへ仕舞う。
「……これでまた来たりしないと良いけれども」
「そこまで察しの悪い父上では無いでしょうし、
僕を使って入ろうとしても断固、断っておきます!」
どうせ家を出される身だし。
「……私が正体を、本当の姿を見られてしまった後始末が、
まだこんなに長引くとはね」「ごめんなさい、本当に僕の勝手な」
「いいのよ、ただ、もうこれ以上は」「わかっています」「あの人を苦しめたくないの」
こうしてミロルさんの部屋を出て、
居間へ行くとイシタさんが待っていてくれていた、
もうイシタさんもホームテレポートを使えるので先に行っても良いのだが、なんとなく一緒に帰ることに。
「グラン坊ちゃん、では」
「ええっと、ちょっと改めて確認を、ミロルさんは父上のお付きメイドだった、でも正体を見られ、
その『身体』を使って無理矢理、誤魔化した」「はい、起きた時、全ては夢だったということにして」
これをもっと具体的に考えるには、
七歳児の僕には刺激が強すぎるかなっ!!
「しかし父上は、すでに妻と子が居るにもかかわらず、その一夜が忘れられなかった」
「相手は私たち淫魔ですからね、記憶を消す能力が伯母上は、得意では無かったようですから」
「魔法の効きが不完全とかあるんだ、で、父上は超高級なカチューシャを贈った」「メイド用品しか受け取らないって叔母様は言ったらしいわ」
なるほど、
ちなみにいまそのカチューシャは、
って聞かない方がいいよねこれって。
(タンスの奥に大切に仕舞っている、と思っておこう)
部屋に入ってサーチの魔法を使えば、
いやそんな無粋な行動はやらないよ!
「そしてミロルさんはお暇を貰ったけど、どうしても一目会いたいからか、
父上はこの村の周辺まで探しに来てしまった」「こっちも長老がヒヤヒヤしていたそうよ」
「でも見つからなかった、父上の愛が足りなかったのか、ミロルさんの」「両方ね」「両方かあ」
あとやっぱり妻子持ちに押しかけられても困る。
「ていうか、なんで大体の場所がわかったんですか」
「一応、領内の集落として登録してあるから、ここ」
「あっそれで」「大体のね、このあたりの細かい話までは知らないわ」
領地視察みたいな感じだったんだろうな、
その頃はまだ旧道が生きていたのだろう、
今だと本当に行き来が大変、イシタさんがめったに帰省しない理由になるくらいには。
(よくそんな所に俺を、僕グランを一人旅させたもんだ)
現に山賊に襲われたし!
それに関しては謝って貰ったよ、
ただ、やたら村までの道を聞かれたけど。
「そしてミロルさんは、もう会う気が無いと」
「会わない方が良いわ」「……僕のメイドになるアトリちゃんは」
「本人同士の気持ち次第ね、本当に互いが必要で最初から強い絆があれば」「地味にがんばる!」
さあ、帰ろう。
「ホームテレポート、私のに乗っていくかしら?」
「いえ、淑女の部屋に必要以上には、それよりも、
帰ってお父上に面会したいのですが」「エリック様にですか」
とエリクサーを渡す手筈を整え、
それぞれ各自ホームテレポートで明け方近い自室に戻ったのでした。
(さて、寝よう……って、僕のベッドに誰か入ってるううううう?!?!?!)
めくって見たら、
予備枕や脱いだパジャマで、
寝ているように偽装しているだけでした。
(自分でやっておいて忘れるとか、さすがは七歳児だぜ!!)
さあ、寝て起きて、エリクサー渡さなきゃ。




