第53話 見えてしまったインキュバス、まさかの寝取られかと思いきや。
「ちょっとープラド、勝手に入って来るんじゃないさー」
「うお、人間か、長老が手出し無用って言っていたな、悪りい悪りい」
「さっさと出ていくんだねー」「ポーションなら私が」「おうマルスト、居たのか」
突然現れては去って行ったインキュバス、
それをしっかり見ていたクリスちゃん、いやいや、
余白記入のスキルで、目が見えるようになる対価というのが……
(最初に見た男の人に、惚れる)
ということはだ、
まだ七歳半のクリスちゃんが、
さっきのプラドというインキュバスに……
「あの、まだ前が、よくわかりません」
「ぼやけてるのー?」「まだ、なにがなんだか」
「見えてはいるのー?」「はい、これが、光りかと」
セーフ! セーーーーフ!!
(まだ、はっきりと見えてなかったか!!)
ブルラズさんがクリスちゃんから離れて、
木の棚から何か出して持って来た、小さな瓶だ。
「目薬よ、これで良くなるはず」「はいっ」
「瞬きも慣れてないみたいね、上を向いて」
「こうですか?」「目は開けたままね、沁みるかも知れないけど……」
あっ、口調が酔ってない!
さすがにシラフに戻ったのか、
そして目に一滴一滴、目薬を入れて目をぱちくり……
「あっ、わかってきました」「本当?」
「はい、こ、これが見えるっていう……」
「はっきりしてきた?」「ああ、これが、これがブルラズ様の、顔……」
認識できるようになってきた!
よし、今度こそ改めて、クリスちゃんの視界に……!!
「おい、パーフェクトポーションが入荷してるって本当か?!」「プラド!!」
またクリスちゃんが、
インキュバスを見てるううううう!!!
(あぁ、もう……もうおしまいだぁ……)
「プラドさん、こっちです!」
「いてててて、引っ張るなよマルスト!」
……これはもう、
わざとやっているのでは?!
恐る恐るクリスちゃんを見ると……目が合った!!
(片目だけどね)
うん、地味な茶色い目だ、
最高級土魔石だからね、でもちゃんと瞳とか、あるっぽい。
「貴方が、貴方様がグラン様なのですね?!」
「えっ、あっ、はいグランです、グラン=フィッツジェラルドです」
「クリスです、全部の名前は忘れました!」「ええっとなんだっけ」「クリス=ヴィクトワール=バシュロナルカンですね」
さすがイシタさん、
兄上が少し調べてくれてたから、
そこから知ったのかな、まあ冒険者ギルドに貼られてたし。
「それでグラン様」「はいクリスさん」
「結婚しましょう!」「えっ、誰と」「私とです!」
「誰が」「グラン様がですっ!」「ええっと」「惚れさせていただきました!!」
あっれえ???
目が付いて、最初に見た男って、
さっきのプラドとかいう、インキュバスでは???
「ちょっと背中にまわるね」「はいっ!」
ステータスをオープンして……
うん、見えていてもスキル『盲目の真贋(魔力20倍)』は健在だ、
これはもう生まれ持って取得していて消えないのだろう、そして余白は……
『最高級魔石を目玉の代わりに出来る』
『※ただし、最初に見た男の人に惚れてしまう→グラン=フィッツジェラルド』
僕がお気に入り登録されちゃっているううううう!!!!!
(なんでだろ……あっそうか、男の『人』かぁ)
インキュバスは魔物だからね、
人じゃない、更には亜人ですらない、
獣人とかでも無いから、この文章の適応外か。
「謎は解けた! クリスさん」「はい」
「まずは、お友達から」「その後は?!」
「大きくなったら、ハーレムの一員に」「はい、喜んで!!」
早速ひとり、
ゲットしちゃったよ……
前世を思い出してから直だな、これであと三人か。
(えっ、なぜハーレムは四人かって?)
昔、知り合いの脚本家が二次元ド○ーム文庫とかいうので小説書いてて、
そこの編集が『ハーレムは四人と相場が決まっています』って言っていたらしいよ、
いや、それが異世界に来てまで守らないといけないルールだとは、思えないけれども。
「あの、グラン坊ちゃん」「はいイシタさん」
「さすがに名前は変えないと、まずいかと」「あーーー……」
「私の名前、ですか」「うんクリスちゃん、でないと命を狙われる」
新しい名前が、
必要かぁ……さて、どうしよう。
「おーい、パーフェクトポーション」
「だーかーぁーーーら」「ブルラズさん、もう行ってきてあげて下さい」
「あらそーおー?」「クリスさんの世話は僕らで」「ではお願いするわー」
ということで、
寝取られ回避でとりあえずは、
見えるようになって大喜びのクリスちゃんでした。
「グラン様」「はい」
「好きです、愛していますっっ!!」
(可愛いなぁ……)
うん、これをもっと、
地味に可愛くしてあげるために、
もう片方も必要だよね、頑張ろうっと。
「ええっと、目が疲れたら目を瞑って良いから、閉じて良いから」
「こうですか?」「そう、人っていうのは、まばたきというものをするんだけど……」
って説明ここからか、
色というものを教える段階に行くまで、大変そうだなぁ。




