第46話 近い姉上と、ふたりっきりでお風呂。
「んもう、そんなに動かないの!」
「く、くしゅぐったいです姉上っ!」
「まったく、ミラがお仕置にくすぐりばっかり使うから」
それで敏感になっているってか、
いや鞭でしばかれるより何百倍もマシなんだけど、
あと何気にこの、ルミエル姉上の引っ掻き攻撃は痕に残るからやめてほしい。
「聞いたわ、ジェラルお兄さまのメイド、イシタの実家へ行ったんですって?」
「あっはい、一人旅というものをしてみたくって、七歳の記念にと、無理を言って」
「メイドが付いていて、一人旅も無いでしょ」「そこはもしも、何かがあった時のっていう」
あと、メイドが居ても『一人旅』っていうことにしておかないと、
この僕グランの権利を使った事にならなくなるからね、生涯で一度だけ願いを叶えて貰える権利、
七歳になって一人で旅をしたいっていう、周囲とグランが納得すれば、それはもう立派な一人旅だ。
(むしろルミエル姉様が、余計な事を言うなって怒られる、まである)
不成立になったら困るからね、
いやこれ俺が、グランが成人してから、
あれってノーカンですよね? って言ったらどうなるんだろう。
(時効……かな)
まあいいや、
そのおかげで地味ハーレム候補の聖女様をゲットできたんだし、
このまま上手く行けば第一号もあるな、クリスちゃんもすっかりその気で。
「道中は危なくなかったかしら?」
「ええっと、これ言っても良いのかな」
「言いなさい!」「山賊に襲われました」「えっ」
イシタさんが商業ギルドで説明してるし、
山賊ふたりも引き渡しているから事実として知られているはず、
当然、領主である父上にも……って姉上に余計な心配かけちゃったかな。
「大丈夫だったの?!」
「イシタさんが護ってくれました」
「でしょうね」「だからここに」「良かった」
なんだかんだ、
心配してくれている。
(あっ、後ろから抱きしめてくれてる)
実の姉なので、
変な感じは、まったくしません。
「姉上……」
「もう無理は、無茶は駄目よ」
「はい、とはいえ僕はこの家を出る身ですが」「それでもよ」
……なんだか懐かしい、
俺が前世で、嫁ぐ前までよく面倒を見てくれた姉さん……
結婚して一気に疎遠になったけど、まあお互いもう成人になったから。
(フィリピンへの極秘入院、伝えたら心配してくれたかな……?)
でも逆に、急に姉弟の関係さえ途絶えたのは、
姉さんも姉さんで思う所があったのだろうなと、
そこを詳しく聞く程、子供じゃ無かった、でも、でも異世界転生した今は……子供だ。
「姉上、心配してくれてありがとう」「当たり前じゃないの」
「僕が独立した後、姉上が困ったら、どうしてもと困ったら、僕を頼って下さい」
「嬉しい事を言ってくれるわね、大丈夫よ、ほら耳の後ろを洗うから動かないの!」
本当に懐かしい感じに浸りながら、
メイドも居ない中、洗ってもらったのち、
頭からお湯をかけられて……おしまいかぁ。
「ほら、先に湯船に入って」
「あの、今度は僕が背中を洗います!」
「私の?!」「まかせて!」「いいわ、痛くしないでね」「引っ掻いたりしないよ!」
爪、切ってたっけ?
まあいいや、と背後にまわって、
綺麗な背中を……鞭打たれた痕とかは、無さそうだ。
(いや、治癒魔法で綺麗に消して貰ったという可能性も)
洗いながら、
背中を流しながら、
ちょっと聞いてみよう。
「姉上は女学院は、いかがですか」
「なんていうか、嫁ぐテストって感じね」
「試されているんですか」「色々とね、奥さん仲間と上手くやれるか、とか」
これはつまり近しい貴族の奥さん同士で上手くやれるか、
あとは高位貴族に嫁いだとして、正妻や他の側室と上手く出来るか、
とかをもう11歳で教え込まれているとしたら、そりゃあもう大変だな。
(とはいえ十五歳で成人、正式に嫁ぐ世界……あと四年か)
厳密に言えば、
嫁ぐ先がすでに決まっていれば、
十四歳でも婚約者であればもう嫁入り先に行ったりする。
(どこへ行くんだろ)
これも聞こうか。
「嫁ぎ先は、決まっておられるのですか」
「候補は六つだけど、私からは決められないみたい」「あっ」
「だからその六つの間で話し合い、擦り付け合いになってないといいけどね」
……姉上のスキルとか、どうなっているのだろうか。
(そもそも魔法とか、使えたっけ)
七歳までの僕の記憶としては、
回復魔法や解毒魔法とか持っていれば、
結構良い所へ嫁げたはず、あと地味に大きいのは……加護女神だ。
(この世界での、ある意味ブランドだからね)
かといって、
それらをひとつひとつ、
いちいち聞くのは地雷を踏みそうで、怖い。
(いっそ、ステータスを見ちゃえ)
念のため……
「姉さま、もっと力を抜いて」
「こ、こう?」「そう、特に肩の力を」
「……丁寧にやってくれるのね」「はい、息をゆっくり、吸って、吐いてえぇ……」
と、いうことでえ……
(姉上の、ステータス……オープンッ!!)




