第43話 頼んでいた物と、返品された者。
すっかり日が昇った村の出入り口、
今日の門番は知らないインキュバスさんだ、
それはともかく、待っていたのは山賊がふたり。
「イシタさん、これって」「返品だそうです」
そうそう、ちょっと忘れていた、
この村へ来る途中に襲ってきた山賊二十人、
それを『ティムヒューマン』の魔法で全員、捕まえた。
(魔物ではなく人間をティムするという、とんでもない魔法だ)
いやこれ禁呪レベルでしょうっていう、
それでこのサキュバス村へクリスちゃんの、
目の治療の対価として引き渡したのだが問題が。
(死刑まで行かないレベルの罪人が、ふたり居た)
殺して良い悪人なら喜んで貰って好きに使うが、
どこまでの罪人か調べるアイテム『業の天秤』が悪に傾き切らなかったふたり、
それが返品させられた、代わりに超貴重らしいポーションを魔法で造って渡したのだが。
「ええっと、お名前は」「ガルダだ」「サバサ、新入りで」「あっそうか」
まだ悪落ちして、山賊に入って間が無いからなのかな、
とはいえ、あのまま居たら傾き切るのは時間の問題だった気も、
さて、使い道はどうしようか、とりあえずイシタさんに相談だ。
「どうしましょ」「領地内ですから、アルトリアスのギルドか領主様に」
「うーん、父上に持って行くのはなあ、とりあえず商業ギルドかな、いいかな?」
「わかった」「それで、どうすれば」「やってきた事を洗いざらい、あ、あと十八人は崖に落ちたってことで」
ここで辻褄合わせの打ち合わせ、
横で聞こえちゃっているインキュバスさんは欠伸してら、
まあ興味が無いのだろう、あとようは人間でいう深夜番だから単純に眠そう。
(そう、イシタさんのご家族が見送りに来ないのは深夜のようなものだからです)
きちんとすでに、
お別れは済ませてきましたよ!
「……という感じで、僕らを襲った所で崖が崩れたと、そういえば崖崩れって最近」
「この間の大雨で何カ所かあったな」「元から廃道はそのあたりが危険だからと」「だそうですイシタさん」
「わかりました、私も証言を、あとは」「クリスさんについては完全秘匿で」「わかった」「了解しやした」
襲われたのは、
あくまで俺とイシタさんだけってことになった。
後はまあ移動手段についての辻褄合わせとかは、イシタさん中心の話なので省略。
「じゃあ行きましょうか」「その前に」「渡す物がありやす」
後ろに置いてあった重そうな麻袋、
中は……おお、金の延べ棒だ! ということは、
頼んでいたあの物が、こうなったということか! 一応確認で聞こう。
「例の傷ついた金貨をブルラズさんが」
「これで出所は、わからないはずだと」
「よろしく伝えてと言って酒呑んで眠っちまいやがりました」
まあ閉店と同時にそれじゃ、
見送りにも来れないよねっていう、
また七日後くらいに会いに来るからいいや。
「ありがとう、ではアイテムボックスに……僕がこれ使えるのも内緒で」
ということでいよいよテレポート、
ただ、タウンテレポートだと冒険者ギルド前だよな、
だからここはホームテレポートで一旦、俺の部屋へ……
「ちょっと先に行ってみます」
インビジビリティの魔法を自分にかけて、
ホームテレポートで自分の部屋へ、うん誰も居ない、
隣りは……マップを見るとミラさん居ないな、屋敷にも居ない、お休みで外出か。
(今度はタウンテレポート、サキュバス村!)
無詠唱で戻ると、
閉店の札がかかった錬金術屋の前、
そして普通のテレポートでさっきの場所、村の入口へ。
(インビジビリティ解除、と)
よし、これで改めて、
パーティーでのホームテレポートだ。
「では行きますよ……はいっ!」
自宅自室に、ただいまっと。
「ここは」「子供部屋?!」
「ええガルダさんサバサさん、僕の部屋です、では今度は外の、人の居ない所へ……」
パーティーテレポートだ、
後は歩きで商業ギルドまで行って、
イシタさんが山賊ふたりを突き出して終わり。
「ではグラン坊ちゃん、最初だけ居ていただければ、あとはこちらで」
「あっはい、じゃあ行きましょ行きましょ」「それで俺たちは」「どうなるんで」
「しっかり情報提供したら死刑は無いって感じじゃないかな、僕からも言っておくよ」
てな感じで七歳グランは、
イシタさん帰省の旅で山賊に襲われ、
たまたま崖崩れで十八人が犠牲になったのを、この山賊に助けて貰った事になったのでした。
(更生の余地は、あるっぽいからね)
そして俺だけ先に帰って良いことに、
いやあ商業ギルドは立派だったなあ、
お金に直接関わる所は豪華に見せないとね。
(ということで、出て人影の無いところでインビジビリティっと)
続いてホームテレポートで自宅自室へ、
もうこのまま、姿消したまま寝ちゃおうかな、
とはいえお腹空いた、イシタさんがサキュバス村で作ってくれたお弁当でも食べるか。
(姿消したままお弁当出して食べてると、横からはどう見えるんだろうか)
などと思っていると、
廊下から知っている女の子の声が!!
「ちょっと、私の下着が、盗まれてるんだけどーーー!!」
下の姉上きてたあああああ!!!
(そういやまだ戻してなかったかぁ)
迂闊だった、
姉上が帰って来てるのも予想外だが、
さっき戻った時にイシタさんに戻して貰っていれば……
(どうしよう、いやこれ、どうしよう)
素直に返して引っ掻かれようか、
いや、じゃあどうやって部屋に入ったって事になる、
うーーーーん……イシタさんが戻ったら、相談だな!
(俺が持ってたら、今すぐこっそり戻すのに!)
帰っていきなりの、
この大ピンチであーる。




