第41話 やはり実家に、エリクサーをひとつ置きたい。
「おかえり、クリスちゃん帰ってきているわよ」
「まあお母様」「目に包帯を巻いているけれども」
「その件なのですが、少しお話が」「まあ、何かしら」
どうやらクリスちゃんを住まわせる件らしい。
「グラン坊ちゃんは」「ええっと、伯母さんと話を」
「ミロル伯母様ですか」「少しお話を」「まとめてしますか?」
「あっ、四人で?」「それとも」「ふたりきりがいいなか、ここは」
別に嫌なら四人でも良いけど。
「では伯母に聞いてきます」「あっ、イシタさんが」
そして居間に残された、
イシタさんのお母さんと僕のふたり……
ちょっと気まずい、そしてまたお茶を出してくれる。
「どうぞ」「ありがとうございます」
「これでもかなり薄めてあるのよ」「な、何を」
「精のつくお茶、子供にはまだ早いから」「そ、そうですね」
鼻血出ちゃったら、どうしよう。
「イシタはよく働いてくれているかしら?」
「それはもちろん、ばっちりですよ、ええ」
「なら良かったわ、朝には帰るんでしょう?」「ええ、僕は」
クリスちゃんは残るけど。
「人間の女の子の方は、もう寝てるわ」
「下の牢屋で、ですよね」「人間はあそこでないといけないの」
「その、聞いて良いのかわかりませんが、なぜ牢屋に」「それはね……」「それは」
やはり、捕食の餌だから……?!
「他所に取られないためよ」「あっ」
「閉じ込めてるんじゃなくて、守っているの」
「なるほど、そんな危険が」「念のためね、大丈夫とは思うけれど」
まあ、ある意味で貯蔵庫みたいなものか。
なんて話しているとイシタさんが降りてきた。
「秘密にしたい話であれば聞くそうです」
「あっはい、では行って参ります」「ドアが開けてあるわ」
一人で階段を上がる、
ってサキュバス飛べるのに、
と思ったが羽ばたくには少し狭いか。
(あそこだ、わかりやすーい)
開いている扉をノックして入る。
「失礼します」
「入ったら閉じてね」「はいっ!」
サキュバスの部屋なのに、
人間とそうは変らないな、
まあメイドをやっていたくらいだし。
「それで話って?」
「実は……名前を貸して欲しいんです」
「メイドの?」「はい、メイドとしての」「どういうこと?」
どこまで言おうか。
「実は、とある方法で定期的にエリクサーを手に入れる事ができるのですが」
「……本気で言っているの? 七歳だものね、駄目よ、そういう嘘は」「いえ本当です」
「証拠は?」「さっき族長さんにエリクサーを」「ちょっと待っててね」「えっ、窓から?!」
飛んでっちゃった、
行動力凄いなあ、ってこれ暇になるな、
夜空が綺麗、部屋を見回す……特にウチに居た時の物とか無さそうだ。
(俺がまだ生まれる前のメイドさんだったんだよな、確か)
あとベッドでけえ、
いや俺の身体が小さいからそう感じるのもあるかな、
地下の人間用はここまででは無かったが、ていうか眠気醒めたな。
(うん、他のサキュバス、インキュバスも飛んでる)
見つかって連れ去られるとヤバいから、
ちょっと隠れておこうかな、とかじっとしていたら、
十数分くらいで帰ってきた、確認と会話くらいはしてきたのだろう。
「お待たせ、理解したわ」
「それで、秘密は明かせないですが、まだエリクサーが入手できます」
「売りたいの?」「まずは実家に置きたいんです、それでお願いなのですが」
頭を下げる俺。
「ミロルさんが、父上に贈った事にして下さいっ!」
「えっ、私が?!」「僕が出所だって、バレたくないんです」
「でも、それだと私が」「ウチに戻ったり、人間の街へ行く予定は」「もう無いわね」
なら大丈夫だ。
「手紙の返事は無し、無視したい意向はわかりました、
でも僕は大事なエリクサーを、もし何かあった時のために」
「その時は君が」「七歳ですよ?!」「……まあそうね」「今すぐ置くには」
考え込むミロルさん。
「私はどうやって手に入れた事にするの?」「それは、そこは必要ないかと」
「エリクサー目当てに人間が押し寄せたりは」「父上はそこまで愚かじゃないでしょう」
「……エリクサーを贈る理由は」「んー、手切れ金?」「私の方が???」
普通は逆か。
「これを渡すから、もう関わるな的な」
「送り返されそうね」「嫌なら割れと言っていたと」
「それは出来ないわね」「まあ、上手くやっておきます」
俺をじーーーっと見るミロルさん。
「族長からという事にしちゃまずいのかしら」
「それならちょっと弱いかなー、贈る理由付けとして」
「お世話になっている、存在を認めてくれる領主様へということで」「なら尚更、ここへ来ちゃうかもね~」
……意を決したように立ち上がるミロルさん、
奥のたんすから何やらごそごそと持ってきた。
「箱はこれで良いかしら」
「綺麗な箱ですね」「ええ、昔、領主様から頂いたプレゼントの箱よ」
「中は」「カチューシャ」「なるほど」「これにエリクサーを入れて」「ほいさっさ」
これはこれで何か意味があるんだろう、
昔やったドラマの脚本でそんな感じのことがあった、
別れた恋人に渡せなかった旅行の写真を贈ったら、入れてあった写真立てだけ返されたみたいな。
(思い出だけ貰っておきますって意味、って余白に書いた気がする)
まさにそんな感じかな、
入れて返す中身がえげつないくらい豪華だけれども。
「もし、疑われた時に私ではなく長老からって話も」
「そのあたりは臨機応変に、いざとなったらぼくしらなーい」
「便利な立場ね」「七歳ですもの!」「知能は五十歳て聞いてきたわ」
残念、享年三十九歳です!!
「じゃ、そんな感じで」
「ええ、私も最後に役に立てるみたいで、少し嬉しいわ」
「もう会ってはあげないのですね」「……お葬式なら、あるいは」
このへんは大人の話だ、
いや相手が魔物だけれどもね!!
「ちなみにそのエリクサーは?」
「まだです! ちゃんと入れて渡すから!!」
七日後だね。
明日は国立競技場へサッカーを観に行くので、
平日と同じ時間の自動更新予定です、
もしまだの方は★評価☆を是非っ!!




