第39話 目の治療が終わり、状況を聞く。
「終わったってマジ? ねえマジ? いらっしゃいマーシー?!」
「何がマシなのか知らないけれど、施術なら終わったわー」「包帯巻いてる!!」
しばらく村の中を眠気と戦いながら見物したあと、
見知らぬインキュバスさんが見つけて呼びに来てくれて、
完了したというので臨時休業の札がかかった錬金術屋に戻ってきた。
「なんだか、右目が、感じます」
「あっ、右に入れたんだ、でも両目隠してるよね?」
「この方がねー、巻きやすいからよー」「ていうかお酒くさい」「終わったら呑むのが恒例でねー」
酒焼け声はいつもなんだろうな、
ていうか何かと理由をつけて呑んでいそう、
そんな酒乱淫魔より目の前に居る地味ハーレム候補だ。
「どう? クリスさん、光とか感じる?」
「光ではありませんが、感覚はあります、今までと違います」
「ゴルシ声さん、いつ包帯取れる?」「誰なのそれ」「どっかの馬!」
前世のね。
「念のため七日はこのままだねーー、変に急ぐと神経が切れるわーー」
「それはたいへん」「それでー、包帯外して最初に見たいのが、坊やだってー」
「ほんとクリスさん?!」「はい、必ず、お願いします!」「わかった待っててね」
もうタウンテレポートですぐだし。
「あとー、まだ心配なことあるかしらー? ふたりとも」
「私は、早く『色』というものを憶えたい、確認したいです!」
「僕は、ねえこれって両目には付けられないの? 最高級魔石、安いヤツ」
ふうっ、とため息をつくブルラズさん。
「まず、もう最高級魔石の在庫が無いわー」
「仕入れはー?」「売ってくれるなら欲しいくらいよ」
「最後のいっこだったんだ」「最高級魔石は様々な使い道があるのよー」
目玉専用じゃないのか、そりゃそうか。
「じゃあ、地面掘り繰り返して、土属性の最高級魔石とってくる!」
「同じ属性は駄目なのー、魔力が分散して視力が落ちるのよー」「じゃあ別の」
「そうだねーー、このあたりのダンジョンは昔に調べたから、他所で探してーーー」
そうなると、あそこしかないか。
にしてもお酒が入って酔うと語尾が伸びるのかな?
「クリスさん、やっぱり両目で見たいでしょう?」
「贅沢は言いません!」「でもやっぱり、両目で」
「まずは片目で見えてからです!」「うーーーん、眼帯ある?」「作ってあげてもいいわよー、有料」
と、ここでひとつ疑問が。
「しっつもーん!」「何かしらー」
「サキュバスやインキュバス同士の通貨って、何ですかー」「魔石よ」
「あっ、じゃあ最高級魔石もある意味、お金そのものってことに」「とも言えるわねー」
これはますます、
未開のダンジョンで魔石を漁らなきゃ!!
「ええっと、それで眼帯の代金は」
「やっぱりいいわー」「えっ」「ポーションのおつりってことでー」
「あっ、そんなに高価な」「もう返さないよー」「それはまあ、いいとして」
とりあえずお金は、
また最高級ポーションとかを毎日作って溜めれば良い、
それよりもクリスちゃんを、ここで正式に住まわせる対価だ。
(やはり、あの魔法を使うしかない!)
イシタさんの実家に住むとして、
まず最初にそのお世話になる代金を渡した方が良い、
いくら僕が人間側領主の息子でも、何も渡さず命令はしたくない。
(食費だって、かかるからね)
今ここで、確かめて貰おう。
「ちょっとおトイレ」
「あっちだよー」「おけーー」
「桶?!」「わかりました、って意味なんだ」
用は済ませる、
そして無詠唱で……!!
『クリエイトエリクサー!!!』
でたああああああああ赤紫に輝いている!
ていうか味はどうなんだろう、不味くないと良いけど、
まあ良薬、口に苦しって言葉もあるし、飲ませなくても、ぶっかけるだけで良い説もある。
(一応、ブルラズさんに見て貰おう)
トイレから出ると、
クリスちゃんの右目に更に斜め掛けで包帯が。
(厳重なんだな)
何せ、最初に見た男の人に惚れちゃうからね。
「ブルラズ女史」「なあにー?」
「酔っぱらいブルラズさん」「だからどうしたのー」
「ちょこっとこれを鑑定してみてくれたまえ」「たまえって……こ、これはあああああ!!!」
酔いが一気に醒めたようだ。
「そうです、エリクサーです!」
「どどどどどどうしたの、ここここここれ」
「家宝です!」「いや国王じゃないでしょ?」
そのレベルのアイテムなんだ。
「本物ですか?」
「……本物だわ、確かに本物」
「これでクリスさんの、もう片方の目の手術を」「だから最高級魔石が」
うん、それは俺の仕事だ。
「じゃあ、見つけてきたら、このエリクサーで施術を」
「良いけど、ううん、嬉しいけど、それは自分で持っておきなさい」
「なんで?!」「自分の命をもうひとつ、持っているようなものなのよ」
これも毎日造れるのかな?
すぐに出ないのは明らかだから、
壁に向かって試してみよう、無詠唱で再び、っと……
<次にこの魔法を使用できるのは7日後です>
長~~~い。
(でも、また造れるんだ!!)
ちなみに残り魔力は、
って無限大だから変わりはないな、
ひょっとしたら一瞬、ゼロになったかも知れないけれども。
「それでもクリスさんのために、どーーーしてもと言ったら?」
「対価が、お釣りが払いきれないわ」「身体で返して貰いましょ」
「そうね、大人になったら、人間に生まれた事を後悔するくらいの快感を」「いや、そっちじゃなくって」
お抱え錬金術師に、
くらいのことを考えていたんだけどな、
有名冒険者パーティーが鍛冶屋を抱えているイメージだ。
「……もし本当にくれるなら、長老様にあげて」
「いや、だからクリスさんを」「そのおこぼれで、命令がくるはずよ」
「あっ、そういうことか」「長老からの、お礼の一部として、やれるでしょう」「かしこーい」
ということで、
クリスちゃんのもう片方の目も、
最高級魔石(ただし土属性以外)を入手すれば、なんとかなりそうに。
(まあいいや、毎週手に入るんだ……でも、そうなると……)
うん、実家にもひとつ持たせておきたいけど、どうしよう。




