第31話 さて、これからサキュバス村へと向かうのだが。
「んっとイシタさん、どうしよ」
「何がでしょうか」「今から故郷へ向かうんですよね」
「ええ、もちろん」「この山賊たち、連れて行けませんよね」
そう、ティムしたが良いが。
「坊ちゃん、では一旦、解散ということで」
「ティムを解くんですか、正気に戻ったら全力で逃げるのでは」
「では縛っておきましょうか」「ティムならこのままで良い気もするけど、うーん」
犯罪者だしなあ、
ガッツリ殺人もしてるし。
「あのっ」「はいクリスさん」
「焼くのはどうでしょう」「えええ」
「裏切り者は、生きたまま焼くそうですよ」
この間まで居た山賊の話か、
いや連れ去られる前の、教会の話じゃないよね?!
前世の記憶で『異教徒は焼く』というワードを聞いた気があるような、無いような。
(殺すのもなあ、いや多分、俺たちも殺されるに等しい目にあいそうにはなったんだけど)
七歳で初めての殺人、
は前世の記憶からそこそこ抵抗がある。
「それで俺たちは、どうすれば」
「ライドさんでしたっけ、まあ敵意が無いなら普通に話して良いですよ」
「まずはガストンを起こしてやっては」「あっそうか、はい解除」「……はっ、俺は?!」
ティムは寝ている間にしています、ええ、全員。
「んー、イシタさん、残しておいてもねえ」
「では今から冒険者ギルドへ」「あっ、うち(アルトリアス)の? くっそ狭い」
二十人も、とても入らないよ。
「一旦、冒険者ギルドへ行ってから」
「でもあれって、入口に飛んじゃうんだよね」
つまりは、俺が『タウンテレポート』を使えるのがバレてしまう、
一度テストで使ったときは魔法で姿を消していた、ちなみに解説によると……
『タウンテレポート 訪れた街や村へ移動できる
冒険者ギルドの前だが無ければ他の店、それも無ければ町長、村長の家の前に飛ぶ』
こんな感じなんですよ、俺が姿を消してコイツらが急に現れたとしたら、
誰がどう言い訳して、どう山賊だって説明するんだっていう……イシタさんが居ても。
(自首しに来ました、は不自然かなぁ)
うーん、どうしよう、
と、ここでなぜか少し違うことが思い浮かんだ。
「……あっ、お店があれば『タウンテレポート』が使える場所になるのかも」
「坊ちゃま、つまりは」「んっと、山賊のみなさん、何か軽く、複数売れるものは」
「さっき、キノコを食料として大量に」「それだ、十個程度で良いから売りましょう」
廃墟山小屋の、
おそらく売店だった場所へひとりを誘導。
「ここでキノコを1個につき銅貨5枚くらいで売っててください」
「客は」「来ません、まあもし来たら売ってみて」「へ、へい」
よし、これで確認のために魔法を使おうとしてみると……
おっ、『ボルザ廃道・山小屋の廃墟』って表示されている、ここへ飛んで来られるな。
(ていうか、ボルザ廃道っていうんだ、ここ)
家に帰ったら地図で確認しよう、
それより山賊らに指示しないとな、飼い主として。
「えっとじゃあ、悪い事はしない、普通に自給自足の生活をする、で、ここで待ってて下さい、普通に寝泊りを」
「へい、いいんですかい、ここで」「一応は領主のむす……まあティムされているんだから、言う事を聞いて」「へい」
「あの坊ちゃま、ホームテレポートで御当主様の所へ連れて行くという手も」「まーた面倒な事になるし、もう言い訳の域を出ちゃう」
正体を明かさなくてはならなくなるからね、俺の。
(地味ハーレムのメンバーにも、異世界人だという事まではバラすつもりは無い)
ここ大事、
異世界転生ものの肝である。
「んじゃ、あ。行こっか」
「はい、では改めて昼食の片づけを」
「俺たちがやりやす」「いいよ、落とされて壊されても困る」
あと、手がばっちいし。
「クリスさん、いい?」
「はい、ただ、あのお方が怪我を」
「えっ?!」「ヒール!」「……うお、治ったありがてえ、ただのヒールなのに!」
見えてないのに、
怪我してた山賊を治しちゃったよ!
(普通のヒールでもあの回復力、やはり聖女様か)
俺だとどうだろ、
ってティムしたとはいえ、
余計なものは見せない方が良いな。
「では見送りは良いから、行ってくるよ」
「へい、行ってらっしゃいませ!!」「イシタさん」
「終わりました」「そんじゃ、行きましょ行きましょ」
ということで、
廃墟小屋から出るとクリスちゃんを抱えるイシタさん、
サキュバス姿になりつつ空中へ、俺も続く、ぐんぐんぐんぐん上昇。
(あいつら、見てないよな)
さあ、後はもう、
サキュバスの集落へ一直線だ、多分。
「それにしても、あの山賊、使い道あるかな」
「聞いた限りだと死刑にしないと、亡くなった方々の魂が」
「サキュバスがそれを気にするんだ!」「……メイド、と思って下さい」
まあそうか、いくら魔物でも差別は良くない、
少なくとも我が家に尽くしてくれているメイドなんだ、
まだ七歳児の言う事だからアレだけど、ちょっとは傷つけちゃったかも?
(これからクリスちゃんがお世話になる種族だ、謝ろう)
中身の三十九歳としても。
「あの、イシタさん、ごめんなさい、魔物のくせにとか言っちゃって」
「……酷くなってませんか」「いえ、反省しています、お仕置されても良いです」
「それはもうちょっと、あとそうですね、五年後くらいに」「十二歳かあ」「その頃には、もう」「うん、毛は生えてるね!」
人間の、精神的な成長としての話だよ!
物理的な方は考えないで!! って誰に言い訳しているんだ俺は、
しかも心の中で! ……どこかから、声なき声で女神様の笑い声が聞こえたような。
「あの、グラン様」「はいクリスさん」
「私、十二歳くらいになったら客を取らせると聞いたのですが」
「前の山賊から?!」「いったい、どういう意味なのでしょうか」
この返事は……!!
「ぼく、ななさいだから、わかんな~~~い」
さあ、サキュバス村へ急ごう。
「それは、娼館というものがありまして」
「イシタさん、しっ、しぃーーーっっ!!」




