第134話 目立ちたくないのに、大声で呼ばれる。
「グランさん! グランさーーーーん!!」
冒険者ギルドに入っていきなり、
受付嬢の部長である眼鏡おばさんこと、
ココ=ジャスミンさんに大声で呼ばれた。
(目立ちたくないのにぃー……)
もうリーダーをイレタちゃんに投げようか。
相変わらず休止中の初心者受付で呼ばれまくる、
仕方なく行くと札を回収されて眼鏡を直しながら喋る。
「ついに、いよいよメインダンジョンへ行かれるのですね!」
「まあ行ける所までで良いというので」「ドラゴン討伐の冒険者カードを!」
「いやそんな周囲に聞こえるように言わなくても、初心者受付ですよね?」「はい!」
みんなのを集めて渡す。
「やや、ややややや!!!」「な、なんですか」
「新しい方がいらっしゃいますね!」「ウォルちゃんはまだKカードですよ」
「SET隊に加入なさるのですか?!」「ちょ、余計な事しないで、確かに冒険者学校に入るけど」
これ、話が行ってるな学校から。
「それでは仮加入ということで!」
「はい、前衛多めで頑張ってきます」
「そ・こ・で、提案なのですが」「はあ」
カウンターに身を乗り出して、
ぐいっと迫ってくる、うん、香水くさい。
「先生をつけませんか?」「えっ、冒険者の先生を??」
「はい、子爵家のお子さんなら銀貨は出していただけますよね?」
「まあ、それくらいなら」「枚数によって先生のクオリティが変ります!」
うーん、先生要るか?
おそらく監視役だろうしなあ、
確かに子供六人だけでちらっと入って出て来ると、学校で何か言われかねない部分もある。
(枚数による、かあ)
具体的な先生とか聞けるのかな。
「先生を見てからというのは」
「いえ、お金を払っていただいてから依頼するので、
お待ちいただく時間はそれほどかからないかと」「うーん」
思い出すな七歳のとき、
セクシーダイナマイトを母上に発注したら、
オネエ系セクシーなおっさんとぼよぼよダイナマイトなおばさんが来たの。
(一応は俺の師匠なんだから!)
もうちょっと探りを入れよう。
「僕からある程度の希望は、僧侶がいいとか」「もちろん」
「ティーナさんみたいな勇者とか」「金貨十枚ですね」「たっか」
「現役S級トップクラスですとそれくらいは」「銅貨十枚だと」「私が行きます」
おいおいおいおいおい!
ちょっと面白そうだけど。
「銀貨一枚でセクシーなお姉さんだと」「……四十五歳ですね」
「銀貨二枚でセクシーなお姉さんだと」「でしたら三十八歳の方が」
「金貨一枚でセクシーな」「娼館と掛け持ちしてらっしゃる二十九歳の」「それだ!」
イレタちゃんに頬をつねられる。
「いでででで」「銀貨五枚で、お任せで」
「はい、でしたら話は早いので一時間後にいらして下さい」
「わかりました、お願いします、グランくん行こう」「ふぁ、ふぁい」
さすがに十二歳で娼婦兼冒険者? はまずいか、
とにかく時間潰しに依頼でも見よう、壁にべたべた貼ってる……
低い位置が難易度低く、上の方ほど難しいらしい、どうやって取るんだ天井近いの。
(あっ、横の壁に梯子が、あと物干し竿みたいなのもあるな)
あの竿の先で挟んで取れるみたいだ。
「お約束の薬草採取があるや、銅貨が貰えるっぽい」
「グランくん、初心者向けに角兎の生け捕りですって」
「グラ兄ぃ、貴族の庭の草むしりがあるよ」「それ冒険者に頼むこと?!」
まあ裏の森から魔物が飛び出すとかならわかるが。
「グラン様、教会ギルドにもありましたが、屋根掃除の依頼が」
「まあギリ冒険者向けと言えなくもないけど」「フライの魔法があれば」「無いよ!」
「ご主人様、商業ギルドの依頼で新しいポーションの試飲が報酬高いです」「毒殺されそう」
こっちの世界にもあるんだ治験、
あれ寝てるだけで一日二万円とかだけど、
二か月拘束とか一日五回血を抜かれるとかなかなか修行らしい。
(知合いの俳優が出た直後、シャブ中の役とかやってたな)
ある意味で役作りか。
同部屋のおっさんが病院出たとたん、
借金取りに連行されてたとか聞いて戦慄を憶えたが、そんなに早く入金はされないだろう。
「ティムした魔物の飼育とかもあるね」
「離れた村の、畑のお手伝いってこれ耕すのもさせられそうね」
「侯爵家の護衛で冒険者百人募集だって、ランク問わないってグラ兄ぃ」
大名行列かよ!
ランクの低いのから肉壁にされそうで嫌だ。
「グラン様、教会でのお茶会の警備があります!」
「いやどんだけ物騒なの、その教会って……あっ」
「ロワイエクール教会だそうです、知らない教会ですねえ」
わーざとーらしっ!
ていうかほんとに内部争いが酷いんだな。
「戦闘メイド募集だそうです、これ、私でしょうか」
「微妙だなあ、アトリちゃんってほら、ポーターだから」
「パーティーを組むとか、団体戦とか」「とにかく個別依頼はまだ早いかな」
ウォルちゃんは十二歳にしては背が高いせいか、
無言で高い場所の依頼をじーーーっと見続けている。
「何か良いのあった? ウォルちゃん」
「ドラゴンの卵を持ってこいって、グラン行ける?」
「だーかーらー、昨日のレストランランチでも言ったけど、首を貰っただけだって!」
まったくもう、
無茶振りを……
そういうのはNNNに頼んでくれっていうの。
「グランさーーーん! SET隊のみなさーーーん!!」
だから大声で呼ぶなっていうの。
「はいはいはいはい、なんですか」
「先生がいらっしゃいましたー!」
「はっや!」「皆さんの後ろにいらっしゃいます!」
振り返ると、
そこに居たのは……!!




