第133話 ルシアちゃんの戸籍が、はっきりしました。
「ふう、なんだか精神的に疲れた」
「グラン様、ありがとうございます」
「いや、僕らは単について行っただけだし」
と言って出てきたのは、
冒険者ギルドへ行く前に一件片付けようと入った、
ローチオービー公爵家、そう、ルシアちゃんの戸籍が入っている所だ。
(最初は何て言うか、塩対応だったんだよな)
淫魔村学校の校長であるメッシュさんのつてで、
時間をかけてこの公爵家に籍だけ作って貰ったのだが、
会った当初は顔だけ憶えて『ああわかった、もうわかった』で終わるところだった。
(厄介事は持ち込むな、深く関わる気は無い、って嫌な感じだったのだが)
それが、メッシュさんからということで、
手紙と一緒にエリクサーを渡したら態度が一変した、
急にルシアちゃんを『よく帰ってきてくれた』とハグまでしてくれたな、あの当主。
「ローチオービー公爵、全員の方ときちんとご挨拶できて良かったです」
「いつでも帰ってきて良いって言ってたね、なんなら部屋を空けようかとか」
「やはり適度に顔を出した方が」「いや、やめておこう、こういうのは適度な距離感っていうのがある」
おそらくエリクサー程じゃなくても、
行くたびに手土産が必要になるからね、
何かで実際に籍を利用させて貰った後に、お礼に行けば良い。
「大きな手続きの時は」
「一応は独立した養子なんだからルシアで良いけど、
必要ならルシア=ローチオービーを名乗る場合も、最終手段的に」
このあたり、貴族の場合は家を出ると家名を名乗るなってなる、
まさに俺が、いや僕グランがそうだ、独立後は『フィッツジェラルド』の家名は名乗らない方が良い、
それと同じことがルシアちゃんの今の立場では、すでに……ということになっている、公爵家なら、なおさらだ。
(こういう貴族の面倒くさい所を、逆に利用してやるのですよ!)
なにはともあれ、
これでルシアちゃんの出自については解決した、
オッドアイも右が茶色、左が水色としっかり憶えてもらったし。
「あ、ウォルちゃんまで付き合わせてごめんね」
「ううん、ルシアってなかなか複雑な家庭だったのね」
「ウォル様には言っていませんでしたね、申し訳ありません」「いいのいいの」
そう、真実を知らないウォルちゃんも一緒だから、
たとえ屋敷を出ても迂闊なことは言えない、いまだ色々と秘密のまま。
「グラン様、いっそこのまま教会へ」
「まあそうだね、そっちの登録は公爵家を書いてもいいかも」
「では早速」「みんなも大丈夫だよね?」「すぐ終わるなら」「はいはい」「わかりました」「ルシアが安心するためにも!」
確か場所は冒険者ギルドからそんなに遠くないはず、
ということでみんなで移動するも見知らぬ冒険者パーティーとすれ違い、
先頭の勇者っぽい男性に『若いな~~』とか言われてしまった、ええ、みんな十二歳ですもの。
(ということで、協会連合の王都本部ですよ)
いやあ大きい、立派、綺麗、
さすが『教会ギルド』の二つ名があるだけのことは……
僧侶系は冒険者ギルドの登録以外に、ここにも登録すれば様々な良い事があるとか。
(とはいえ、なんでわざわざ目立つようなことをするのかって?)
ちゃんと冒険者ギルドに登録しているのに、
特に能力のあまりない地味な僧侶のはずなのに、
登録していないっていうのが逆に不自然だからなのです、はい。
「なんか勧誘とかいっぱいあるみたいだから、みんなで囲んで護ろう」
「ええ、任せて」「守ります」「ルシアさんのメイドとしても」「斧をちらつかせれば良いの?」
「ウォルちゃん物騒なことはやめて! まあ受付だけで良いからね、で、どこ選ぶの」「無所属で!」
……まあいいや、無所属も立派な登録だ、
選挙で白票入れて参加しましたみたいなものとでもいうか、
まあ突っ込んで言われたら『考え中です』で済ませようって話は、ちょっとしてある。
「それじゃあ……みんな良いね? 突撃ーーー!!」
入ったとたん、
俺たちは注目される……
が、みんな視線を逸らせた!
(あっ、向かってくるお姉さんも居る、が、止められた)
なんだろう、この空気。
「新規登録はこちらですよ~~」
わざわざ職員さんに呼ばれる、
みんなでぞろぞろ行くとみんなそわそわしたり、
どっか行っちゃったり、小声で雑談してたり……
(あ、ひょっとして)
こっちもこっちで話が行っている?!
ホテルでここへ行くって話はしてたもんな、
それを聞いていたメイド経由で……そこまで気を使われると、怖い。
(もっとこう、勧誘攻勢に備えていたのだが)
そして黙々と受付をするルシアちゃん、
俺たちは後ろをしっかりガードしているも、
本来は勧誘係であろうお姉さんお兄さんは、来てもチラ見程度だ。
(ロワイエクール教会に注意、どころの話じゃなかった)
しばらく何やら受付嬢と会話したのち、
あっさり終わったみたいだ、が、何か大量に抱えている。
「どうしたのルシアさん、その大量の紙は」
「各宗派、教会からの勧誘の冊子みたいです!」
「えっ全部そうなの?!」「26の宗教だそうですよ!」
アトリちゃんがアイテムバッグへ仕舞ってあげる、
いやこれ大変だな、おそらく声かけ禁止の状況でも、
こうやって資料で勧誘してくる……恐ろしいなあ、もう。
「んじゃ、冒険者ギルドへ」「はいっ!」
ということで、
今度こそ冒険者ギルドへと向かうのであった。




