第129話 泳げるお風呂、そこは注意しないのね。
「グランご主人様、おかゆいところはございませんか?」
「うむ、くるしゅうない、くるしゅうない!」「……ロベル様みたいですね」
「イメージは確かに兄上をちょっと拝借した」「あそこに泊まらなくて良かったです、覗かれそうで」「そんなこと言わない!」
だったらウォルちゃんが心配になっちゃう、
まあ、あの兄上はなんていうか『自分なら従えられそうな相手』に入れ込む感じだから、
十二歳にしてあそこまで大人な身体のウォルちゃんは管轄外だろう、と思いたい、多分大丈夫。
(姿消して、テレポートでちょっと確認しに行きたいかも)
でも下手すると俺が覗くことになりかねない、
いやいやいや兄上だけをマークすれば良い話か。
とかなんとか考えているうちに頭をわしゃわしゃしていた手が止まる。
「お湯をかけます、目を」
「うんお願い、洗剤多めだったからね」
ばしゃーーーっと頭からかけられる、
広いお風呂にふたりきりだからって豪快だなあ、
顔を拭いて貰って視界が開けると、奥でホテルのメイドさんが洗剤の補充をしている。
(客が居るのにかよ、まあ監視だろうな)
十二歳の男女が一緒にお風呂とかまあ心配なのはわかる、
前世の、日本の露天風呂でも家族風呂は家族に限るって場所が多かったし、
とはいえ一応はみんな、婚約者みたいなものなんだけどな、そんなの知らないか。
「じゃあ湯船に入って泳ぐよ」「はい!!」
ざばぁ~~~っと入り、
すいすいと泳ぐ、うん、気持ち良い。
(ていうか、これは注意しないんだメイドさん)
むしろアトリちゃんが出たのを確認したら、
一緒について行った……これで俺ひとりだが、
溺れる心配とか無いんだろうか、監視魔石も無いし。
(潜って死んだフリでもしてやろうか)
いや、余計なことはやめておこう。
「僕を勝手にドラゴン殺しにするなぁ~~~!!」
うん、これくらいは言っても良いよね、
あとはひとりで落ちつこう、ぷかぷか浮かんで……
見ると十二歳の男の子の身体だ、具体的にはあえて言わない。
(寮のお風呂も広いといいなぁ)
でも貸切じゃないだろうからなあ、
先輩の背中とか流させられるんだろうか、
メイド同伴可でも、さすがに寮のお風呂場までは連れて行きたくない。
『おいグラン、ちょっとお前のメイド借りるぞ』
なんて展開になったら……
いやいや、どうしてそんな寝取られ展開を!
兄上みたいに『ざんね~んサキュバスでした~』作戦はそう通用するとは思えない。
(記憶を消すとか、人間のティムとか出来れば、できるだけやりたくは無い)
現に面倒臭いことになったし、
このあたり後であの人に相談してみようっと、
みんなが寝静まったであろう時間に、約二名を連れて。
(あっ、脱衣所が賑やかになった)
イレタちゃん達がもう来ちゃったか、
男のお風呂なんてさっさと終わらせろっていう感じかな、
念話魔法で聞きたいけど、多用すると怒るんだよなあ、あっそうだ。
(理由があればいいか、後はついでで)
ということで頭の中から話し掛ける。
『みんなごめん、監視のメイドは出ていった?』
『どうしたの大丈夫よ』『出て行ったよグラ兄ぃ』
『何かご心配な点でも?』『私が出たらそのまま行かれました』
とりあえずはもう居ないっぽい。
『いや、わかっていると思うけど、
いつどこでどう盗み聞きみたいなこをされるか、わからないからさ、
居ないと思ってお風呂でうかつなことは言わないでねっていう話です』
戻ってくるかも知れないからね。
『わかっているわ、大丈夫よ』『今も気を付けて雑談しているから』
『さすがグラン様、お心遣い感謝ですわ』『気にしなくても、大丈夫です!』
『ええっと、ついでに聞くけど、早く出た方が良い?』『好きなだけ入ってて、こっちはこっちでお話してるから』
それはそれで、寂しい。
「イレタちゃ~~~ん、寂しいよ~~~」
「子供ぉー?」「だって十二歳だもーーん」
「グラン様、お話だけでしたらお相手いたしますが」「いや、いいや」
ということでゆっくりしっかり身体を温めて、
お風呂を出るとアトリちゃんカロリちゃんふたりがかりで、
しっかりと身体を拭いて貰いました、他人の目がある場所ではこれが限界か。
(よくよく考えたら、なんであのメイドが入って来て良いんだろう)
ま、子供だけの宿泊しかも奢りだからね。
俺が脱衣所から出るとなぜかリビングでメイドが待っていて、
冷たいジュースを注いでくれた、グレープフルーツ系かな、美味しい。
「ありがとう、いやほんとスイートルームってメイドが付いているんですね」
「冒険者ギルドの方から、その分のチップが払われていますから」「なるほど」
自ら『監視用に雇われています』って言ってるようなもんだぞそれ、
相手が十二歳で貴族のお坊ちゃんだと思って……まあ無理もないか。
(じゃあ脱いで、とか言ったら脱いでくれるんだろうか)
いや、反応に興味は無いことはないが、
実際どうこうっていう行為には興味は無い、
ていうか真っ最中に地味ハーレムがお風呂から上がってきちゃいそうだ。
「それにしても、アースドラゴンの首ひとつ貰って渡しただけで、
なんでこんなに、もてなされるんでしょうね」「さあ、お詫びとしか聞いていません」
「でもなあ」「何も心配なさる事は無いかと」「そうなのぉ?」「詳しくは、申し訳ありません」
じゃあ浅くは知っているのかっていう、
なーんかこの過ぎるおもてなしの理由っていうか、
見落としている、忘れているような原因があるような……
(後であのお方に聞いてみようっと)
くつろいでいると、
かなり時間が経ってから地味ハーレムがキャッキャウフフしながら戻ってきた。
「良いお風呂だったわ」「グラ兄ぃ、寂しくなかった?」
「うん、メイドさんが、ってジュースをくれるみたいだよ」
「グラン様、あと何年経てば胸を張って一緒にお風呂へ」「いやいやいや」
風呂上がりのオッドアイ、綺麗だなあ。
「ではグランご主人様、今夜の添い寝は誰にいたしましょう」
「ええっと、じゃあとりあえずはアトリちゃんで」「はいっ!!」
あ、メイドの視線が痛い。
(本当に『添い寝』だけなんだってばよう)
ということで、
夜は夜で、いえ夜中にする事があるのですよ。




