第126話 ここまで豪華なおもてなしには当然、理由がある訳で。
厳しい尋問のお詫びなのか、
王都でおそらく最高級であろうホテルの、
最上階スイートルームに宿泊することとなった俺たち。
(俺の地味ハーレムは、のん気にはしゃいでいるな)
さっそくあちこち見ている。
「お菓子あるよ、すごいちゃんと五人分!」
「わあ、ソファーが身体が沈んじゃう、溺れちゃう」
「まあ、大きな水晶が、これは回復魔法の媒介にも!」
「ちゃんとお付きメイドの部屋もありますね、助かります!」
冒険者用でもメイドルームはあるんだ、
まあメイドでなくても雑用係、小間使いは居るだろうし、
タレントで言う所の付き人の部屋かな、芸人だと弟子とか。
「ドラゴンバスターらしく、やはり気になりますか」
「真っ白ですね」「珍しい光属性のドラゴンですよ」
「ホーリードラゴンでしたっけ」「これはこれは、よく御存じで」
よく見るとお爺ちゃんドラゴンだな。
「討伐して良いドラゴンなんですか」
「人間でも、立派な賢者が悪事を働く事もありますし」
「なるほど」「では何か御用がありましたら、そちらのベルでお呼び下さい、チップはすでに騎士団の方から頂いておりますので」
深く深く礼をして出て行った、
紅茶を淹れるメイドとかは居ないのか、
いやアトリちゃんが居るからかな、あと騎士団の馬車でジュース飲んだし。
(さて、サーチっと)
……うん、思った通りだ、
なので俺はテレパシー魔法でみんなと会話する。
『ええっと、そのまま無邪気に、子供っぽくあちこち見ててね』
『グランくん、お菓子ちゃんと分けたよ、紅茶準備する? 私がやろっか』
『食事の部屋もある、椅子も私みたいに背が低くても乗れるのがあったよ!』
イレタちゃんカロリちゃんも、
ちゃんと念話で返事をしてくれる、
あと二人もちゃんと無邪気にあちこち見てるっぽい。
『グラン様、お風呂が、お風呂が泳げる広さです、しかも、もうお湯が!』
『ご主人様、これがウォーク・イン・クローゼットという部屋なのですね』
『いや公爵邸クラスだと普通にあるからそれ、そんなことよりそのまま聞いてね』
ルシアちゃんアトリちゃんも大丈夫そうだ、
あえてみんな個々に離れたまま、頭の中での会話を続ける、
えっ俺? 寝室のチェック中です、いやこれ八人くらい一緒に寝られるベッドがあるぞ。
(まさにハーレム用か)
いやだからハーレムは四人までだって、
KTCことキルタイムコミいやもういいや。
『うんわかった』『はーい』『どんなお話ですか?』『承知致しましたご主人様』
『さっきサーチでわかったけど、居間と寝室と食堂に、映像と音声を記録できる魔石が仕込んである』
『盗み見されてるの?』『音まで、声まで』『裸を記録されるのでしょうか』『犯人は』『冒険者ギルドかな』
に頼まれたホテル側、と。
『グランくん、なぜそんなことを』『やっぱりまだ疑ってるんだろうね』
『ひょっとしてグラ兄ぃ、私達、何か失敗した?』『失敗って程じゃないかな』
『ではグラン様、疑惑は払拭されなかったと』『そのあたりは、さすがだと思うよ』
もう完全に疑惑は晴れた、
と思わせるための、この豪華ホテル宿泊措置だろう、
すっかりリラックスさせて、完全に油断させて勝手に自白させようっていう。
『グランご主人様、ではここへ宿泊させて貰えたのは』
『NNNが来るかも知れない、もしくは話してないNNNの情報を聞けるかも知れないと』
『でもグランくん、私達がNNNだってことは』『ひょっとしたら可能性のひとつとして、引っかかってるかもね』
いやほんと、勘の良い人達は居る、
この場合は勘と言うよりも嗅覚とでもいうか、
なんとなく怪しい、ひょっとしたら何かある、そういう予感というか気配を感じ取るプロは、居る。
(さすが王都の冒険者ギルドだ、大金を使ってでも、そのあたりの確認はぬかり無い)
まあ子供五人をここに泊める料金なんて、
冒険者ギルドからしてみたら、そこまで大した負担でも無いのだろう、
チップ不要はありがたいな、こんなホテル、下手すりゃチップだけで破産する。
(そしてリビングに戻って座ると、イレタちゃんが隣りへ)
いやほんとテーブルの上のお菓子豪華だな、
新宿京王百貨店の地下で五千円(税込五千五百円)で売ってそうなアソートだ、
色んな種類があってそれがちゃんと五個ずつある、そのうちひとつを俺の口元へと……
「グランくん、あーん」
「あっはい、あ、あーーーん」
とやりながら念話魔法は続ける。
『ならグランくん、私達は普通にしていれば良いのね』
『うん、普通に普通の十二歳の冒険者学校に通う冒険者見習いで』
『グラ兄ぃ、ここまでされたら頑張らないと』『まあそうだね、将来性も感じ取っているんだと思う』
中身が実ほぼは完成されているんだけど、
それを表に出さない事によって何か雰囲気みたいなものが漏れて、
冒険者ギルドや騎士団から『将来性がある』と感じ取られたのかも。
(あと運ね、全てが本当に仕込まれてないとしたら、あまりにも運が良過ぎる)
冒険者の間では、
そういう『運』も重要視しているのだろう、
変な言い方をすれば『幸運パーティーを育てる』という意味での先行投資か。
「お紅茶を淹れますね」
「あっアトリちゃん、ありがとう」
「私も手伝う!」「イレタさんは正妻としてグランご主人様のお世話を」
♪カランカランカラン
あれ、部屋の玄関から軽い音が。
「行ってくるね」
リビングに戻ってきた入れたちゃんが、
そのままの足で玄関へと行って扉を開けると、
やってきたのはメイドさんだった、ホテルの本職の。
「グラン=フィッツジェラルド様、下のラウンジにお客様です」
えっ、誰?!?!?!




