第117話 なぜだか知らないが、お見送りが。
「おい、こっちだこっち!」
「あれっ、ティーナさん、こんなに朝早くどうして馬車乗り場へ」
「昨夜は私達の部屋から、声は漏れなかったか?」「窓際が大変だったみた、ってその確認ですか?!」
あいかわらず百合ハーレムに、
ぴったりとくっつけられている女勇者……
これ、彼氏が居る時はどんな感じになっていたんだろう。
(あの鎧の中に押し込められているとか、ってそんな生きた牢獄は残酷か)
それはそうと、
王都行き乗合馬車が意外と客が多い、
途中の村や町で何人か降りるだろうが、逆に乗る人も……
「馬車の代金は、もう払ったのか?」
「いえ、乗る時の渡すシステムですので」
「なら良かった、私の乗って来た勇者専用馬車を使うと良い」「えっ?!」
ティーナさんの合図で、
白馬三頭が引っ張る巨大な白い馬車がやってきた!
「こ、これは!!」「八人乗りだ」
「いやいやいや、良いんですかあ?!」
「ドラゴンキラーに敬意を表して貸そう、チップも払ってある」
いやほんと、
ウチの子爵邸が使う馬車より遥かに豪華だ。
「ティーナさん達が使うためでは」
「なあに、SET隊が王都へ行って帰ってくる間くらいは、
ここのダンジョンに専念しているから大丈夫だ、道中何か言われたら私の名前を出してこれを見せると良い」
簡単な手紙だが、
僕らがティーナさんの代理って書いてあるな、
ちゃんとS級勇者、個別に決められているスタンプとサインもある。
(まあ、水戸黄門の印籠みたいなものですよ)
まったく、ここまでしてくれるとは、
なんて男前な勇者なんだ、って手紙を確認している間に、
僕らが乗るはずだった乗り合い馬車が出発しちゃった、時間に正確だなあ。
「ありがとうございます、ではお言葉に甘えて」
「またいつか会える日を楽しみにしている、背が縮んだら教えてくれ」
「さすがにそれは」「うむ、背の高い、良い大人になる匂いをしているぞ」
あっ、そういう意味だったのか、
なんか安心、中身が三十九歳のおっさんとは見破られていないらしい。
そうこう話している間に、アトリちゃんを中心にみんな荷物を運び入れちゃった。
「グランご主人様、終わりました」
「うん、それじゃあティーナさん達、ってパーティー名あるんですか?」
「一応、彼氏が出来て一緒の時にだけ使っている名前が……その時に教えよう」
もったいぶるなあ、
それだけ大切にしている名前なんだろうな、
これで『チーム淫乱バーサーカー』だったら派手に転ぶ演技の用意はあるぞ。
「では失礼します」
「そうそう、中は私の特注仕様でな、音は運転手には漏れない」「えっ」
「だからどれだけ騒いでも、何をやっても中のカーテンを閉めていれば聞こえないぞ」
いやいやいや十二歳のハーレムが何をすると思っているんだ、
とはいえ秘密の話を遠慮なく出来るのは良いな、うん、ありがたい、
俺も馬車に乗り、ティーナさん達に見送られながら発車した、加速えぐいな。
「で、ではーーー!!」
あっという間に先行の乗合馬車を追い抜いて、
領都を出た……って街を離れると遠慮ないな、
そしてこの馬車内の広さとソファーの大きさよ!
(巨女が寝そべってナニできるサイズです!)
いやほんと、
この馬車に泊まれるくらいだ。
「ふう、それにしても凄いお姉さんだった」
「実際の年齢は、いくつくらいなんでしょうね」
「あっ、ステータス見るの忘れた」「変な動きは勘付かれるわよ」
さすが正妻イレタちゃん。
「あの、グラン様」
指に手をあてて、
無詠唱で何か魔法を発動。
「ルシアちゃん、いま何を」
「結界魔法です」「えっ、どうしたの」
「音が運転手に聞こえないように」「えっ??」
どういうこと?!
「運転手さんをちらっと見たら、女性でした」
「うん、それがどうか」「ティーナさんのお仲間ですね」
「ソロって言ってなかったっけ」「怪しいです、それにこれ……」
運転手と通話できる筒、
これ、覗くと前が見える、ということは……!!
「ひょっとして、ここの会話、丸聞こえ?」
「だったようです、私が光魔法で音声遮断しましたから」
「中の声が聞こえないようになってるっていうのは」「その魔法自体は本当ですね、壁に施されています」
ただ、肝心の通話口は開けっ放しだったと、
よく見ると向こう側に蓋っぽいのが開いたままだな、
何か言われたら『閉め忘れていましたーてへてへ』で誤魔化す気か。
「つまり、この馬車を貸してくれたのは」
「私達の会話を聞いて、色々と探るためでは」
……すげえ切れ者だな、
さすがS級女勇者、でかいだけじゃない。
「よく気付いたね」
「アトリ様のおかげです」
「こういう所に気を配るのも、メイドの仕事ですから!」
撫でておこう。
「あれ、カロリちゃん、ソファーに立って、どうしたの」
「……この照明魔石も、ちょっと、おかしいかも」「どれどれ」
じーーーっと見る……
うん、いま少し変な光り方をしたな。
(無詠唱で、サーチ!)
すると表示されたのは……!!
『監視魔石:録画し、後で様子を見ることができる』
盗撮されてるうううう!!!
「……通りでサービス良すぎると思ったよ」
とにかく、気を付けよう。




