第105話 領都でご挨拶、姉上はどこに居るかというと。
あいかわらず土日は一日二回の完全不定期(不定時)更新になります。
「バルバトス伯爵閣下、我がグラン=フィッツジェラルド、
冒険者学校へ入学するため、ここ領都バルバートを通り抜けることをお許し下さい!」
「うむ、しっかりと学んで来るが良い、将来は我が領のダンジョンを攻略してくれ」「ははっ」
アトリちゃんが、
従者メイドらしくサササッと丁寧に献上品を出して並べる、
最高級水魔石にパーフェクトポーションは準エリクサーと呼ばれる高級品だ。
「ほうほう、王都の陛下に献上できるレベルだな、よくわかっている」
「父上から、くれぐれもよろしくと」「うむ、そちらのダンジョンも盛況のようでなにより」
「今後ともアルトリアスを、フィッツジェラルド子爵家を」「わかっておる、わかっておる!」
さすがにこれだけ出せばご機嫌か、
そして簡単なご挨拶は終了、問題ない。
「グランくん、あの奥さん、綺麗だったわねえ」
「伯爵レベルだと、正妻も見栄えて選んでるのかもね?」
「じゃあグランくんは?」「地味で良い、ううん、地味が良い」
目立つと取り上げられちゃうからね、
貴族はそれがある、だからこそとっとと独立して、
冒険者になって地味に活躍して地味に立場を固めよう。
「ありがとうグランくん」
「あっはいイレタちゃん」
「これからもよろしくね」「もちろん」
なぜか褒められちゃった。
「ねえグラ兄ぃ、お姉さんは側室?」
「あー、そうなんだけど、ここじゃない」
「というと?」「バルバトス領はさっきの伯爵が治めてるんだけど……」
馬車に戻って少し移動。
「ここ領都バルバートにもバルバート辺境伯っていうのが居てね」
「辺境伯も側室持てるんだ」「グラン様、辺境伯と伯爵の違いは」
「ケースバイケースっていうか、土地や国によっても違う、まあ辺境を治める貴族かな」
学校で習ったはずだけどな、
と思ったが聞いてきたルシアちゃんは淫魔学校卒か、
それでも元公爵執事で王城勤務経験もあるあの校長なら教えていそうだが。
(まあ、このあたりは難しいから、知ってても詳しく聞きたいってあるよね)
「どちらが上というのも」
「ただ、ここの場合は元から住んでたのが伯爵、
王都から見張りみたいな感じで派遣されたのが、辺境伯」
まあ複雑とまでは言わないが、
過去に色々とあってこうまとまったらしい、
学校で少し習ったのと後は実家で調べた、まあそんなことよりも、話を本題に戻そう。
「グランご主人様、ではその辺境伯家に」
「うん、基本的にバルバトスの、他の領地から一人ずつ、
第三夫人だったかな、もう随分と会ってなかったけれども」
街並みを見てはしゃぐイレタちゃん。
「お店がいっぱいある!」
「うん、後で色々と見て周ろう、
商業ギルドも大きいね、あっちは冒険者ギルドかな」
あそこも寄るだけ寄らないとね、
まずは姉上に会わなきゃ、と到着したお屋敷、
高さはさっきの伯爵邸よりあるが広さは、ってそんなの比べてどうする。
(とりあえずアトリちゃんがまず最初に入ってお話を……)
そして通された来賓の部屋、
なんていうか、お金かけてるなーっていうか、
これはなんとなくだが、伯爵に対抗しているな的な。
(どっちが上かマウントを取り合っている)
これ、俺に『どっちを選ぶんだ』とかされないよな?
父上はどっちも選ばないと言うか、どっちも大切みたいな方針だが、
当の伯爵側と辺境伯側はまた違うだろうな、そのためにも俺の立ち回りは重要かも?
「お待たせ」「姉上!」
早々に領都へ事実上、
嫁いで行ってしまった上の姉、ターシャ姉さんだ。
(俺より六歳上、今は十八歳か)
我が子爵家から一緒について行った、
個人メイドのナリュさんも一緒にやってきたが、
二人とも元気そうだ、そして早速、俺の前に座る。
「冒険者学校へ行くのね、もうそんな年齢なのね」
「はい、独り立ちの準備は早ければ早い方が良いかと」
「……追い出されたの?」「追い出される前に自分から出た方が」「やさしいのね」
物わかりは良い方だと思っている。
「姉上にこれを」
「まあ、このポーションは」
「あくまで僕個人からです、パーフェクトポーション」
メイドのナリュさんに、
大切そうに渡して仕舞わせる姉上。
「本当に潤っているのね」
「はい、ウチのダンジョンはひとつですが、質が高いので」
「噂は聞いているわ、大陸内部で水魔石の宝庫だって」「冒険者ギルドも建て替えましたよ」
そして僕の正妻側室(予定)に目が行く姉上。
「あっ、紹介します、婚約者で魔法使いのイレタちゃん」
「イレタです」「魔力は?」「そこそこ」「ウチの領民から献上されたのよね」
「姉上、よく御存じで」「でないと、こんな可愛い子はグランには」「まあ、そうですが」
実は順番がですね、
とか説明する暇も無く次へ。
「槍使いのカロリちゃん」「お義姉様、カロリです」
「ちっちゃいわね」「姉上、使う槍は大きいですよ」「レアスキル持ちの噂は聞いているわ」
「スキルだけです、そんなには」「それでも冒険者はもったいないわね」「よく言われます」
実際、あれから何度か騎士団へって話もあった、
ただカロリちゃんの場合はレアスキルに対して実力が伴っていない、
という演技で何とか凌いだ、それでも欲しがるのはおそらく血統だろう、子にもレアスキルは受け継がれる可能性があるからね。
(ただ、それにはカロリちゃんの身体は小さすぎる)
だからこそ今日まで奪われずに済んだ。
「僧侶のルシアちゃん、魔法使いみたいな見た目だけど回復役です」
「地味な回復魔法しか使えませんが、よろしくお願いします、ターシャ様」
「ええっと、よく見ると……オッドアイ?」「姉上、よくわかりましたね」「見る目は研ぎ澄ませてきたから」
色々と苦労があったんだろうな、ここで。
「そしてメイドのアトリちゃん」
「グランご主人様のお付きメイド、アトリです」
「リュックにバッグに荷物がいっぱいね」「ポーターをしてくれるんだ」
ちなみに爆弾ポーションで攻撃も出来ます。
「前衛、魔法使い、回復僧侶、ポーター……グラン、大丈夫?」
「僕も一応、前衛ですよ」「死なないでね」「もちろん」「無理は駄目よ」
心配してくれている、
まあこの十二歳メンバーを見た通り考えると無理もないか、
わざと頼りなく見せているから、むしろ計画通り、作戦通りなんだけど。
「それでグラン、どうする? ナレットさんに、私の夫に会って行く?」
「そりゃあ、渡す献上品もありますし、父からくれぐれもと」「会わない方が良いわ」
「えっなんで」「嫌な思いをするはずよ」「あーーー……噂はかねがね」「贈り物は私が渡しておくから、ね?」
ふむ、さてどうしようか。




