第102話 説明しよう、俺が前世で見た『妖精さん』とは?!
「妖精さんっていうのは……」
ってこれ、俺の前世の話なんだよな、
実際に見たんだよ妖精さんを! いやオカルトチックな話じゃないぞ、
若い頃、工場でバイトしていた時に居たんだ、会った当時60代のアルバイト爺さんを!
(俺の中では『妖精さん』と呼んでいた)
ごく普通の爺さんなんだが、
物凄い働き者でこれが本当に凄まじい、
ポジションは洗浄・清掃なんだが、手際が凄まじく良いんだ。
(二人で八時間かかってする仕事を、一人で二時間で終わらせる)
なもんで本来は二人置かれている場所なんだが、
他の部署が人手が足りないからともう一人は常時移動状態、
事実上その妖精さん一人で全てをこなしていた、ええ、それはもう完璧に。
(しかもそれだけじゃないんだよな)
部品洗浄がメインでそれとは別に決められた時間、
普通の掃除もするんだが本来の仕事が早々に終わってしまい、
休憩時間をずらしてみんなが昼食の時間に、一時間足らずでそれすらも終わらせるという。
(まさに見えない所で仕事を終わらせる、妖精さんだ)
ただ、この妖精さん、実は見える所でも大活躍、
部署から部署へ、そして俺の居る出荷部屋へと、
重くて多い荷物は基本、その作業をした人間が運ぶことになっている。
(でも忙しいから、みんな廊下へ出しっぱなしだ)
それをこの妖精さん、
器用に台車を使って運びまくる、
終いには廊下に出してないのに終わったのを回収して次の場所へ。
(みんな『気付いたら無くなって運ばれてた』『いつのまにか来ていた』て言ってたな)
与えられた仕事以上にめっちゃくちゃ働く、
まさに縁の下の力持ち、この爺さん、地味にすげえなって感心した、
しかもどこへどの時間までに運ぶとかも完璧に把握して、俺も随分と助けられた。
(しかし、工場側がアホだった)
この爺さん、まあ確かに見た目はアレだ、
俺から言わせると普通の爺さんなんだけれど、
パートのおばちゃん連中からすると『気持ち悪い』と。
(私語しまくってて部品塗装遅れたのを、せっつかれたのも気に食わなかったらしい)
で、『あの人、仕事もせずちらちらこっち見に来る』とか、
『邪魔なのでなんとかして欲しい』とか『よっぽど暇なんだと思う』とか、
まあ早々に仕事終わらせてるなんて知らなかったみたいで、工場側に文句言いまくった。
(こういうお局さんって、普通の社員より権力あるんだよなあ)
暇だったら掃除しろって話だがそれも終わらせている、
あちこちの部署でこっそり部品を、荷物を運ぶだけじゃなく、
本当に細かい、社員ですら気づかない仕事を淡々とこなす、もうあれ妖精どころか土地神の部類だったのに……
(俺が来て三年目には、もう居なくなっていた)
聞けば建前上『新しい人に入れ替えたい』とかいう理由でクビにしたらしい、
するとどうなるか、今まで各部署に対し気を使っていた、地味に重要な仕事をする者が居なくなった、
具体的には廊下に置いた部品の山を運ぶ人が居なくなった、いや作業した部署の奴が運ぶはずなんだが。
(おかげで、みんな物凄くラクしてたのが一気に負担がかかった)
それだけあの爺さんに工場全体が助けられていたという事実はは、
居なくなって初めてわかったっていうか、その洗浄の部署に新人が入るも、
八時間の仕事を八時間かけてやる訳で、見かねて社員もそこへ入ったりしていたが……
(社員ですら出来ないくらい、完璧な仕事ぶりだったんだよなあ、あの妖精さん)
いや完璧以上か、
結果、工場の効率があきらかに落ちた、
パートのおばちゃん連中の負担も尋常じゃなくなった、自業自得か、
(一応、工場長が電話で戻って来てくれって言ったらしいが、他のビル清掃に行った後だったそうな)
あの働きぶりなら、どこでも有難がられるだろう、
ちなみに辞めた日の、工場のホワイトボードにでっかく
『サラダバー』って書かれていたのは謎だったと、妖精さんが書き残したらしいのだが。
(未だに意味はわからない、不思議な人だった)
……という、俺が目指すのはああいう妖精さんなんだが、
俺に前世がある事は地味ハーレムのみんなには言ってない、
今後もこの世界では一生、話すつもりは無い、ええ、絶対に、絶対にだ。
(だから、ここでの説明は……)
前世でベタだった、
あの物語で説明しよう。
「……これは『靴屋の妖精さん』っていう物語なんだけど……」
とまあ、寝ている間に靴をこっそり作ってくれる妖精の話で誤魔化しました!
「……素晴らしい話ね」「じゃあ終わったら帰っちゃうんだ」
「まさにグラン様にぴったりな妖精だと思います!」「皆が寝ている間にこっそり解決するんですね」
「うん、『あの魔物、いつのまに退治されていたんだけど誰の仕業だろう』って話が広まった時には、もう居ないっていう」
冒険者ランクを上げたくないからね!
「じゃあグランくん、そういう作業の時は姿を消す魔法で」
「それもあるけど、ここはメタモルフォーゼかな、宿で確認しよう」
そう、実は俺には、
新たな『余白記入』を入れてありましてね、
その内容というのがこれまたチート級なのですよ! それは……!!




