第100話 あれから半年、何が起きたかというと。
――それから半年。
「あれっ、ルシアちゃん髪の毛が……!!」
「ちょっと色が付きました、いかがですか?」
「ほんのり薄いピンクに」「グラン様に気に入っていただけると嬉しいです!」
綺麗な銀髪聖女だったルシアちゃん、
その髪がほんのり桜色に、これって染めた訳じゃないよね?
彼女がサキュバス村へ来て半年、前に会ったのは三週間前だけど……
「なんでまた、こんなことに」
「こちらでの食事が原因みたいです!」
「あっ、サキュバス用、淫魔用だからか」
体質が変わっちゃったのかも。
「これって今後、濃くなる?」「おそらくそうだと聞きました」
「人間界に、人の街に戻ったら、また銀髪になるかな」「蓄積だから無理だそうです」
「ブルラズさんの診断?」「あと保健の先生!」「なら間違いないか、うーーーん……」
むしろ、元のクリスちゃんの証拠が無くなるから、まあいっか。
「いいよ、このまま続けて」「こちらの食事をですか!」
「うん、ただこのままだと、髪の色がピンクでアトリちゃんと被っちゃうね」
「私の場合は、最終的には濃い紫になるそうです!」「深紫かあ、色っぽくなっちゃう」「嬉しい!」
そこ、喜ぶんだ。
「それはそうと、隣のアトリちゃんは何をもじもじしているのかな?」
「あの、ログインボーナスで、特等が出ちゃいました」「えっ、どんなポーション?」
「銀色の、こちらの」「えええ、これってまさかひょっとしてひょっとすると」「エリクサーです!!」
まさかの超超超大当たりきたあああああ!!!!!
「おめでとう!!」
「ありがとうございます、それでこれは」
「アトリちゃんが大事に持ってて」「えっ」「ポーションポーターなんだから、でも基本、秘密でね」
コクリと頷く。
「出さないようにします!」
「いや、目の前で知り合いとか本当に死にそうになってたら使って良いから」
「本当に……?」「うん、それはそういう巡り合わせということで」「わかりました」
そういうのは、
迷っている場合じゃないからね。
「もし、また出たらまた報告してね」「あっ、それでしたら」「他にも何か出たの?」
「出たというか、魔物魔法『モンスリザレクション』を憶えました」「効果は」「魔物限定の蘇生魔法です」
「……そっち使えばいいじゃん! ルシアちゃんとか人間にはエリクサーだけど」「わかりましたグランご主人様」
というWで衝撃的な事があったサキュバス村から、
朝になって子爵家に戻ると、執事のスティーブンさんが、
父上の前で土下座をしていた、隣りではメイド長のレイムさんも座っている。
「……それは確かなのか」
「はい、本当に申し訳ありません」
「そうか」「私もまさか、といった感じで」
遠巻きに見ている母上に聞いてみる。
「おはようございます、これはいったい」
「レイムがね、妊娠したの」「えええ」「父親は」「見ればわかりますよお母様」
頭を床にこすり付けるスティーブンさん。
「レイムの分も、働いてみせますので」
「いや、イザベル」「はい」「メイドのナターシャをしばらく借りるぞ」
「構いませんが、では私は」「グラン」「はい父上!」「ミラをイザベルに」
うお、まさかのチョイ出世きた!
「わかりました、それで僕のメイドは」
「少し早いがカロリで良いだろう、学校に支障のない程度でな」
「……どこまで出来るか」「形だけで良い」「わかりました、そうします」
そんな会話をしている間に、
必死に頭を下げる執事スティーブンさんの隣りで、
ちらっと見えたレイムさんの表情は……恐ろしい悪女に見えた。
(まさに、『計画通り』といった感じか)
いやほんと、
女性って怖いねっ!!
――ということがあった半年後だったが、
そこからさらに月日は進んでグラン達は十二歳になった、
いよいよ王都の冒険者学校へ行くタイミングである、そこには……
「父上、母上、では行って参ります、三年間で立派な冒険者になってみせます!」
「うむ、退学なぞしないように、イレタも頼んだぞ」「はい、お義父様、お義母様」
「カロリもよ」「イザベル様、お任せ下さい、この槍に誓って!」「頼もしいわねえ」
更に……
「ルシア、グランの治癒は全て任せた」「はいエリック様、体調管理も含めて」
「アトリちゃんもよ、グランのメイドもやってくれるのよね?」「はい、お世話させて頂きます!」
すっかり濃い紫髪のルシアちゃん、
もうクリスちゃんだった面影は無い、
そして、より鮮やかなピンク髪になったアトリちゃんはもう立派なメイド姿だ。
「では出発します!」
「ああ、ミラ、最後の仕事だ」
「はい、坊ちゃま、いままでありがとうございました」
そう言って銀貨の袋を!
「こちらこそありがとう、ってこれ父上からですよね」
「三年分だ、計画的にな」「はい、ありがとうございます!!」
手切れ金みたいなものか、
とはいえこれ以上に学費とか面倒みてくれたからね、
あと余計な事言うと、自分で稼いだ金貨が唸る程ある。
(ミラさんも、ようやく結婚かあ)
ということで、
五人して王都へ馬車で出発だ。
「まずは領都でターシャに会うのよ」
「はい母上、上の姉様にも報告します!」
「手紙も出すのよ」「もちろん! それでは」
こうしてグラン十二歳の一行、
冒険者パーティー『SET隊』は、
いよいよ王都の冒険者学校に入学するのであった。
(頑張って、地味な冒険者になって、地味ハーレムと、地味に暮らすぞー!!)
第二章へ続く。




