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蛇ノ足◆なんでそんなにおっきいの

 ──ある日の放課後。

 帰り道にいつも通り掛かる小さな公園。名前は石脇公園。……これは正式名称で、通称は隕石公園。公園の中心に大きな石のオブジェがあることが特徴だ。オブジェの横には看板があって、どこのだれのどういった趣向の作品なのかが記されているはずなのだが……同じく石でできた看板は子どもの悪戯で削られまくり、記してある文字のほとんどは解読不能となっている。

 つまりただ中心にデカい石のある公園。故に隕石公園。


 私とウイはコンビニで買い食いをする時に、この公園のベンチで休憩をする。


 誰を追跡するわけでもないのにあんぱんとパックの牛乳に交互に口をつけるウイ。幸せそうな笑顔だ。守りたい。


「ウイってさ」

「ふもも?」


 牛乳、というキーワードと、あんぱんの食べカスをボロボロとこぼし、その食べカスが彼女の胸元が受け止めていく光景が結びついてしまった。


「なんでそんなにおっきいの」

「──ごくん。なにが?」

「胸だよ。胸」

「ん? おっぱいのこと? うーん、牛乳好きだし、夜更かししないからかなぁ」

「あー……」


 私とは真逆の性格だ。牛乳は味とか匂いが好きじゃなくて、そのまま飲むことは少なかったし、迫りくる〝明日〟という存在に怯えて夜明けまで寝付けなかったことはザラにある。


 ……それにしても。ウイの胸はちょっとどうかと思うくらい大きい。学校中の男子生徒はおろか、女子生徒からも注目を集めるほどの大きさだ。

 歩くたびに、もはや両方の乳も二足歩行をしているかのように、揺れる、揺れる。


 ほれ見ろ。公園で遊んでいる小学校低学年らしきちびっ子もウイの胸をチラチラと盗み見ている。マセガキめ。


「こんなの、邪魔で仕方がないけどねー。肩凝るし。足元のぞき込まないと見えないし」

「嫌味にしか聞こえないよ……」

「ほんとだよ! 服のサイズだって難しいんだから。この前お洋服買いに行った時、大変だったでしょ?」


 うん。確かに大変だった。休日に二人でショッピングモールに遊びに行き、洋服屋さんで服を選んでいた時のこと。身長が同じくらいの私たちは、お揃いの服を買おうとしたものの、同じサイズをシェアすることができなかった。しかも、ウイは無理矢理私と同じサイズの服を着ようとしたことで、いくつかのボタンが弾け飛んでしまったのだ。

 弾け飛ぶボタンを顔面で受け止め、開けた視界にどでーんとウイのブラジャー。この時、私は無我の境地にいた。


「私も……」


 ぽん、と自分の胸に手を当てる。まずウイが同じ行動をした場合、擬音は〝ぽん〟ではなく〝ぼよよん〟だ。

 更地、ってほどじゃないけど、発育は充分とは言えない。


「ユイちゃんはそのままがいいよ。わたしね、ウイちゃんのおっぱい好きだよ」

「なに言って……」

「だって、抱きついても跳ね返されないもん!」


 ──と言って、あんぱんと牛乳をベンチに置いて、私に抱きついてくるウイ。ウイの胸で私が弾き飛ばされそうになるのだが……なんとか体幹を駆使して踏ん張る。


「ちょ、苦しいよ、ウイ」

「んーー、やっぱりユイちゃんは温かいにゃー」

「…………」


 ウイは童顔で可愛いし、いい匂いもするし、胸の柔らかさもこの世に存在する万物の全てが超えることのできない極上の感触だ。私の頬は真っ赤になって、きっと表情は化け物みたいな気持ち悪さをしているだろうけど、ウイに見られてないならそれでいいのだ。


「ありがとう、ウイ」

「ちゃんとこの感触覚えるんだよ? 浮気したら、ダメだからね!」

「ウイよりおっきい人、見つかりっこないよ……」


 その予想が覆されるのは1週間後。ウイと同等の胸を持つ悪魔との出会い。自分自身も強力な胸を手に入れてしまうのは、この時誰も知らない……。


 いや、或いは────

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