はたらき者
猫はいます。よろしくお願いします。
森を抜けしばらく歩いた先は広いニンジン畑にたどり着いた。
そこにはたくさんのウサギがおいしそうにニンジンを食べていました。
ウサギたちは何やら焦っている様子でニンジンをかじっていました。
それに疑問を覚えた猫は近くにいたウサギに話しかけました。
「こんにちは。どうしてそんなに慌ててニンジンを食べているの?」
ウサギは食べているニンジンを食べ終わるまで待たせた後にようやく返事をした。
「ニンジンの数には限りがあるから、ほかのウサギに食べられないように急いでんの。
ていうか誰。ニンジンを食べているから邪魔しないで。」
うさぎは、突然話しかけてきた猫を突き放すように言いました。
「わかったよ、邪魔をしてごめんなさい。もう行くね。」
猫はこれ以上ウサギの邪魔をしないようにその場から立ち去りました。
ウサギは猫が離れたことを横目に地面からニンジンを引っこ抜き貪り始めた。
ニンジン畑をしばらく歩くと地面を掘っている何匹かの老いたウサギを見つけました。
猫は話しかけようかと思いましたが、先ほどのように邪魔になることを懸念し
近くの木陰で休みつつウサギたちの様子を眺めることにしました。
ウサギたちが地面を掘るのを終えたかと思うと一匹のウサギがこちらに寄って来ました。
目の前にまで来ると、その場に座り口を開きました。
「こんにちは猫さん。今日はいい天気だけど、少し暑いね。
この辺では見ない顔だね。何もないところだけどゆっくりしていくといいよ。」
先程とは大きく違い歓迎された雰囲気を感じました。
「こんにちはウサギさん。気になっていたんだけど、地面を掘って何をしていたの?」
猫はウサギたちがなぜ地面を掘っていたのか分からなかったため
先ほどから感じていたウサギたちの行動に猫は質問しました。
するとウサギは答えます。
「ニンジンを植えているんだよ。この土地に植えてあるニンジンは
すべて僕らの手によって育てられたものなんだよ。」
この広いニンジン畑は、数匹の老いたウサギたちが育てていました。
「さっき会ったウサギはニンジンを食べているばかりで育てようとする気配はなかったけど
君たちは違うんだね。」
猫は感じたことをありのまま話します。すると中から1匹の若いうさぎがでてきて答えます。
「彼らは、ニンジンがどのように作られているのか知らないウサギなんだ若いからね。
でも僕も前は同じだったんだ。ただ与えられて生きていたんだ。」
そんなことをこたえるウサギに猫は疑問をぶつけます。
「君たちは、自分の育てたニンジンを他のウサギに食べられているのにどうして文句を言わないの。」
当然の疑問だ。
「それは、僕たちは長い時間を生きることができるからだ。それは、とても大事なことで、このさきより大きな畑を耕すことができるし、ニンジンの効率的な育て方を見つけるかもしれない。たとえ今は役に立たなくてもその可能性がある限り誰一人として見捨てるわけにはいかないんだよ。」
「もし、その中から何も生み出せないウサギがいたとしても?」
「たとえ何も生み出せなくても、僕らは仲間だ。今まで生きてきたウサギたちはそうしてきた。」
猫は今まで一人で生きてきたためその答えには強い衝撃を受けた。
「僕は今まで一人で生きてきたからわかんないや。」
そう言って猫は立ち去ります。ウサギが言っていた言葉を反芻しながら。
後日談
ウサギたちは天敵の狼の群れに襲われ絶滅しました。




