分からない
猫は、歩いていた。空に輝く小さな光が欲しいから。地面の端っこからのぼって獲りに行くために。
しばらく歩くと、魚が泳ぐ池の畔に池を眺めているたくさんのオットセイがいた。
穏やかな天気と反してオットセイの表情は険悪だった。
猫は、しばらく眺めた後再び歩き出した。すると後ろから大きな声が聞こえてきた。
「どうして魚は、私たちのもとに来ないの!!」
「なんでだよ、何時間も待ってるのに。」
思わず振り返ったが、通りすがりのワニがやって来てこう言った。
「オットセイさん、魚は自分で捕まえないと食べられないよ。だから待っていても時間の無駄だよ。」
それを聞いた、大勢のオットセイは口を揃えてこう言った。
「知らないわよ!私が食べたいんだから魚が私のもとに来るのは当たり前でしょ!」
「なんでそんなことにも気づかないのか。これだからワニみたいな愚鈍な生き物は嫌いなんだ。」
ワニは顔をしかめたが、何も言わずその場から立ち去った。
ワニが猫の近くを通りすぎたとき猫は思わず話しかけてしまった。
「ワニさん、オットセイはどうして何もしないで待っていられるの?」
するとこう答えた。
「あのオットセイさんたちは、分からないんだ。自分が置かれている状況が。
だから分からないことがあると混乱してつい意地悪になってしまうんだ。
誰だって自分だけでは分からないこともある、どうしようもない時もある。
それはとても恐ろしいことだし、助けを求めてしまうんだ。
だから待っているんだ。助けが来るのを」
そういうとワニは歩き出した。
ワニが言ったことは猫には分からなかった。でもオットセイが助けを求めているのがわかった。
だからオットセイに魚をプレゼントすことにした。
しかし猫の体は小さいのでたくさんの魚を運ぶことができないため、何度も往復して運ぼうと考えた。
そして近くの魚屋さんで魚を買いオットセイのところに持って行った。
「オットセイさん、魚が欲しいのならこれを食べるといいよ。」
すると一匹のオットセイがこう言った。
「たったこんだけの魚で満足するわけないでしょ!持ってくるなら、もっとたくさん持ってきてよ!」
続けざまにほかのオットセイも声を上げた。
「まったくだ、猫とオットセイだと体の大きさも違うんだからそこんとこ考えてから持って来いよ。」
「これだから、猫みたいな怠け者は困るんだ。」
猫は驚いてしまった。てっきり感謝されるものだと思っていたからだ。
けど違った。だから猫はこう返した
「魚をあげたのに何でこんな事言われなきゃいけないんだ。」
猫は、驚き半分悲しみ半分の気持ちを抱いて再び歩きはじめ、その場を後にした。
数年後、池の周辺に小さな花畑ができました。しかしそこには、ある動物の骨が埋まっていました。