9話 主人公っぽくなってきた
「俺には鑑定がある。これで見つけられる」
「頭脳系主人公によくあるやつね!」
「鑑定はお前らのステータスを見れる。名前や性別なんか、ただ視界に入らないと見えない。で、目を合わせるとより細かく見える。」
コージさんの右目の歯車は次第に消える。
「今、目を合わせたお前らのことはある程度分かる。」
つまり、コージさんは便利スキルを持っていて、それが仲間を集めることに繋がる。
だがこれには、俺たちは全く関係ない。
「でも、なんで私たちに声をかけたの?魔王軍幹部だって倒せない私たちをわざわざチームにする理由はなに?」
そう、それだ。
鑑定があるなら、勝手に仲間を探せばいいと思う。
「まあユーカちゃんが自体、素質はこの世界トップレベルだから、極限まで鍛えればかなりの戦力になるはずだ。」
「褒められたって、なにもでないわよ」
「まあそれは単なる理由の一つだ。俺がこう直々に来て確かめたのは少年の方が主な理由だ。」
え?俺?
スライム一匹に苦戦してユーカの足手まといにしかならない俺?
「おまえ、そのステータス見る限り、『模倣』持ってるだろ。」
「いや、持ってないですけど。祝福もスキルも何も持ってないですけど。」
「そうよ!カゲがそんな最強の能力持ってるわけないでしょ!!」
おい、それはそれで傷つく。
「いやすまない、聞き方が悪かった。お前はコピーを知らず知らずのうちに持ってる。スライムの固有スキル『エナジードレイン』を持ってる時からな。」
コージさんはきっぱり、そういった。
「鑑定の効率を二倍にする方法があるんだ。少年、指を貸してくれ。」
ちゃんと返してね?なんて言わずにすんなりと、人差し指を向ける。
「おりゃッ」
コージさんは、俺の人差し指を自分の眼球に突っ込む。
「ひいぃい!!なにそれグロイグロイ!!!」
ユーカがドン引きしまくっているので、返って俺は冷静になる。
ポンっと、指を出し、血まみれの人差し指をハンカチで拭く。
「模倣の条件は攻撃されることだ。俺は今お前に『鑑定』で攻撃した。」
いや、強引すぎでしょ。
そんなんで攻撃したことになるのかよ。
「お前も『鑑定』が使えるようになってるはずだ。動かしてみろ。」
『鑑定』を動かす。
それは、突如肩から腕が生えたように、舌が二つになるように。
当然のごとく『鑑定』がある。
それは、指を動かすように、瞬きをするように。
「おお…」
コージさんと目を合わせると、邪魔なくらい大量のステータスが表示される。
コージさんの本名、浜名浩二なのか。
それから、頭脳。魔力量。魔力放出量。筋力…色々なステータスが10段階で表示され、
その隣に70%とか40%とか、
「量は次期に調節できるようになる。百分率はどれくらい潜在能力解放率だと思っている。」
次に、ユーカを見てみることに。
祝福が多すぎて、よくわからないが。
「な?ユーカちゃんのステータス面白いだろ?」
「おまえ、どんだけ神様に好かれてんだよ」
「そんなにすごいの?」
いや、ステータスとしては、全てと言っていいほどにコージさんを下回っている。
面白いのはそこではなくて。
「おまえ、開放率全部10%以下だぞ…」
「やっぱ私って才能あるかしら…」
まだ二人しかステータスを見ていないが、これは異常だとはっきり言える。
ああ、やばい。
なんか頭が重い…『鑑定』解除しないと…
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んん…
二日酔いの気分だ…
「ねえおじさん!カゲが起きたわよ!!」
起きると、目を覚ますと。
ユーカの顔と、大きくも小さくもない程よいユーカの胸が俺の真上で、
俺を見つめているじゃありませんか。
これは膝枕というやつか。スカートなのでほぼ生足…
「下乳…」
思わずつぶやいてしまう。
「はは!思春期だな少年」
コージさんもいるということに今気づき、起き上がって現状を楽しむことを辞めた。
コージさんは右目に眼帯を付けている。
「ここはどこだ?」
「私たちの職場よ!」
少し古びた感じの木造住宅。いや、小屋と言った方がいいのか。
「『鑑定』の使いすぎだ。情報量を抑える訓練しておけよ…」
このおっさん。またコーヒー飲んでるよ…
「仕事ってなんだ?」
俺はアルバイトすらしたことないぞ?
「お前らには『なんでも屋』として街の情報を集めてほしい。で、転生者がらみの問題なんかを聞き出して、仲間集めをしてくれ。」
と、言ってもどうせ特に何も起きないだろう。
「前までは俺がやっていたのだが、おっさんがここに居ても誰も来ないからな。」
「あんたはなにすんのよ」
「俺はジョア大陸にいって召喚魔法とやらを少し学んでくる。」
俺たちはここが何大陸なのか、なんて名前の国なのかすらわからないが、
おっさんがスーツの上からコート着てアタッシュケースのようなものを持っていることから、まあまあ遠い所に行くんだなと行間を読んだ。
「一か月は返ってこないだろう。じゃ、頼んだぞ」
「ちょっと待ってください!」
「なんだ、手短に話せ」
あっさり出かけようとしたおっさんに一つ聞きたいことがある。
「なんで僕が模倣使えることを知ってたんですか?なんで必要条件が攻撃されることって知ってたんですか?」
一つと言わず、二つも質問してしまった。
「俺の娘も、模倣を使えたからだ。」
朝はパンは派かご飯派くらいの軽い感覚で答えた。
そしてすんなりと「じゃあ行ってくる。」なんて言って、家をでた。
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それから7日がたった。
ユーカの売り込みや人柄の良さから、かなり大繁盛で、草むしりや『鑑定』での武器の査定など様々に使いっぱしられている。
まあやってることは劣化版冒険者みたいな感じで。
ただ国や街の管理ではないため、
安価なうえ即席でクエストをこなせるというのが良かったのか。
おかげ様で毎朝太陽が昇ったらすぐに小屋まで行って、夜は日が暮れるまで働いている。という生活をしている。
色々な手伝いをしてわかったことなのだが、俺の『エナジードレイン』は魔力を吸い取るもので、対象物に触れないとドレインできないようだ。
で、俺は魔力量と魔力出力がどちらもZEROなので吸い取っても相手が少し怯むだけだ。といことが判明した。
「なあユーカ。」
「なに?」
「せめて俺を起こしてから出発してくれないか?いい加減引きずられると、背中が血まみれなんだよ」
俺は朝が苦手なため、なかなか起きれない。
ユーカは俺を起こさずに出かけてしまう。
そうすると何が起き得るかというと、『永久所有の祝福』で寝ている間に外、体が引きずられながら出勤する羽目になってしまうのだ。
「あーわかったわ。明日からはちゃんと起こすわよ。」
「昨日もそれ言ってただろ!毎朝パジャマで街中を引きずられる気持ちになってみろ!」
「いいじゃない、小屋にはシャワー室あるんだし、あなたアイテムボックスに私服入れてるじゃない」
まあここからならスカートの中をがん味できるので、いいっちゃいいのだが。
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「いらっしゃーい。なんでも屋だよー。なんでもするよー」
「もっとハキハキ大きい声で集客しなさい!!」
俺の頭をぶん殴る。
「うるっせーな!なんでも屋なんて集客のしようないだろ!服屋じゃねーんだぞ!?」
殴り合いになったら当然勝てないので、口げんかに持っていこうとする。
「まあ前世引きこもりだったやつに接客も集客もできないでしょうね。期待した私がバカだったわ。」
俺の心にユーカのナイフがグサグサと刺さる。
どうやら言葉まで聖剣らしい。
「あのう…」
声が聞こえた。
あたりを見渡すが、誰もいない。また幽霊か?
「あ、子供だわ。どうしたのかしら?」
下にいたようだ。
7歳くらいの男の子。
「お姉ちゃんが…お姉ちゃんが…」
とりあえず室内で、話を聞くことにした。
「で、お姉ちゃんがどうしたの?」
「お姉ちゃんが、悪い人に…捕まっちゃって…みんな信じてくれなくて…」
誘拐か…相変わらず中世というのは物騒だな…
みんな信じてくれないということは、おそらくギルドでの討伐募集もないだろう。
最後の手段として来たのか。
「みんなは信じなかったかもしれないけど、私は信じるわ!」
「ほんと?」
「私が嘘言ってるように見えるかしら?」
少年はコクっと頷く。
「やめろっユーカ!!まだ子供だぞ!!」
殴りかかろうとするユーカを羽交い絞めにして取り押さえる。
「…で、どこで誘拐されたんだ?」
俺は名前を聞くのが面倒だったので、『鑑定』で名前をみることに。
『無津呂 光 (8)』
日本語。間違いない。
「ユーカ、」
「なに?」
「この子、転生者だ。」