5話 10代にして夢のマイホーム生活
「うっぷ…」
「なんで私だけ酔えないのよ。」
「『不酔の祝福』とかあんじゃねえのかよ…」
宴をした後、3日が過ぎた。
俺たちは宿から一歩も出ていない。
「うぅ…頭痛が…ユーカ、『酔い止め薬召喚の祝福』とかないのかよ…」
「あるわけないでしょーが」
俺はというと、宴から、味を知ってしまってからは、ずっとこんな調子だ。
「私たち、このままでいいのかしらね」
「いいに決まってんだろ…なんせ俺らの財産は4億もあるんだぜ…」
そう。僕たちはお金も持ちなのだ。
みんなは覚えているか、俺が5億円当たったことを。
~~~~~~~過去回想~~~~~~~~
「アストぉ~お金貸してぇ~!!!」
「私からも、カゲにお金貸してあげて!」
お前も金ないだろ。
「久々に土下座を見たよ…」
「美しいわね…」
「お前も土下座をしろ!土下座を!!」
現状を説明すると、僕たちはお金がない。
宿屋にアストがつけてくれていた10日分。
今は10日目。めし代はユーカが下の階の料理屋さんから賄いを調達。
残された資金はユーカのバイト代。あと2人前2食分。
絶対絶命の状況。
俺たちはギルドでアストが来るまで張り込みをして、今って感じだ。
「たっく…お前が、冒険者全員分の飲み代を奢ったからこうなったんだぞ…」
「しょうがないでしょ…転生したら絶対にやってみたいことのランキング殿堂入りだもの」
そんなのねーだろ
「と、とにかくアスト!金貸してくれ…お前だけが頼りなんだ…」
「君たち、転生してきたときのお金はどうしたんだい?」
「そんなのもう使っちゃったに決まってるでしょ?」
「え、何それ」
知らない、知らない。全然知らない。
転生してきた時のお金って何?
「え、ステータス表示のところに書いてあったじゃない。」
「前世の財産をそのまま引き継いでいるはずだよ。」
「あぁーはいはい、またそのパターンね。俺だけまた、なんもないパターンね。『貯金の祝福』ですか?『タンス預金の祝福』ですか?でももう驚かないかr…」
ステータスを見た瞬間。思わず息をのんだ。数秒時が止まった。
「800000000」と書いてあったからだ。
「いち、じゅう、ひゃく、せん、まん、おく………おく!?!?8億カーキだから…総資産4億円…かかかカゲって、どこかの御曹司だったのかしら…」
「俺…宝くじで5億当たってたんだった…」
この世界に来てからというもの、色々大変ですっかり忘れていた。
「カゲ!カゲ!家を買いましょ!10LDK!」
「ふふふ…そんな貧相なこと言うでないユーカよ…100LDKだって夢じゃないさ!」
「私!お風呂付がいいわ!備え付けのお風呂!!!」
「まあユーカよ…そんなにはしゃぐ出ないぞ!!!」
「まあ、なんというか、問題は解決したようだね…じゃあ僕はもう行くよ…」
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というわけで現在である。
「カゲ!不動産屋へ行きましょ!!」
「よし!夢のマイホームを買いに行くぞ!!!」
僕たちは8億カーキを握りしめ、不動産屋へ向かった。
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「いらっしゃいませ。」
ドアベルの音に気付いて、部屋の奥からてくてくと小走りで駆け寄ってくる。
白髪なのに身長70センチくらいなのを察するに、おそらくこれが小人族だろう。
「どのような物件をお探しでしょうか?」
「マイホームを買いたい。それもこの街で一番でかい一軒家を!!」
「風呂付がいいわ!」
「かしこまりました。その条件ですと…こちらになります。」
小さい腕で1枚の紙を俺たちに1枚ずつ配布する。
「ふうんなるほど、立地も悪くない。風呂もついている。庭もでかい。買った。この物件はいくらだ?」
「10億カーキになります。」
「うん。なるほどこの物件は日当たりがよくないな。やめよう。どうだユーカ」
「そうね、そう。日当たりが…日当たりがよくないわ!」
「ご主人。ここは1日中日が当たるこの街最高の日当たりですよ?」
「「日当たりがよくないの!!!!!」」
「さ、左様ですか…」
「では、こちらの物件はいかがですか…」
「ふむ、なるほど。最新式のトイレ。お、3階建てか、それに魔法体制のあるレンガで作られた壁。うむ。すばらしい、買った。いくらだ。」
「お風呂もついてるわね!」
「18億カーキになります。」
「なるほど、庭がないな」
「庭がないわね!」
「お客様。大変お目が高いですね。ではこちらの1億カーキの物件を…」
「ふううむ…なるほど、立地よし、庭よし、トイレよし、間取りよしの魔法体制の物件か…」
「お風呂もあるわね!」
「ですが、こちらの物件少々込み入った事情がありまして…」
おいおいまさかこれって、そういうことか?異世界転生あるあるの。あれなのか?
「まさか、幽霊が住み着いているのね!?!?!?」
「左様です。亡霊が住み着いており、住人に悪さをするのです。」
「カゲ!ここにしましょ!貴方ならわかるわよね!?これは転生したらやってみたいことランキング18位にはランクインするわ!」
「ったくわかったよ。ここにすればいいんだろ…」
「ではここにサインを…」
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「…ここが俺らのマイホームか」
「いかにもって感じね…」
目に入るのは、木のでっかい家。
ここで暮らせるのか…
「いや全然そんなことない。ごく普通の家に見えるんだけど…」
「モンスターのオーラがぶんぶん感じるわ…」
ぶんぶんってなんだよ。ビンビンとかだろ。
内装はキレイではあるものの、暗くてぎりぎり見えるか見えないか。俺らは一つずづ懐中電灯のような魔道具を渡されたので、その灯りに頼って、一階を制覇。階段を上がり二階の一番大きい部屋に向かう。
少しきしんだドアを開けた。
ギシギシギシィ!!!
「ひぃぃ!!!!!!」
「カゲったら、ドアの軋みでそんなびっくりして、ほんと情けないわね…」
こいつ、やっぱり頼りがいがあるな…
「ん?なんか揺れてないか?」
「そうかしら、私はわからないわ…」
って…こいつの足が震えてるだけじゃねーか!
やっぱビビってんじゃん。
「モンスターが出たら、作戦通りに俺が縄で縛るからそこをユーカが切ってくれよ。」
「もう何回も聞いたわ!!!幽霊なんて動けなかったらこっちのもんよ!!」
「うぉっ」
ユーカが手をつないできた。そういえば15歳だったな…
こういう面もあるのか…
「まったく…とうとう俺のこと好きになっちまっ…」
左に懐中電灯を向けるとそこには、足が透けている禿げのおっさんがいた。
「ぎゃあ”ぁ”ぁ”ぁ”!!!!ユーカ!!!ユーカ!!!ユゥゥカァ!!!!」
俺は逃げ回る。それはもう見事なほどに。
「そこにいるのね!!!私の剣の初の餌食になりなさい!!!」
俺がおっさんにチューされそうになる寸前。スパッとユーカが幽霊を切る。
「ありがとうユーカ様!!!ありがとうユーカ様!!!」
「よしよしいい子ね…いい子だから年下の胸の中で泣くのはやめなさい…」
「ぐすん…」