1話 ひっつき勇者誕生
「おい、お前…大丈夫か?」
「何回死に戻っても、もう無理」
~~~~~~およそ一年前~~~~~~
俺の名前は影山。
高校を中退し、ニートをしているが職質を受けるときは高校生と言い張っている。
いや、年齢的には高校生ではあるが、。
そんなどこにでもいる俺だが、ある転機が訪れた。
宝くじが当たった。
5億。
これはある日いつものように昼に起きて散歩をしている時だった。
道端に一枚の宝くじが落ちていた。
まあそのあとは言わなくてもわかるだろう。
5億円ももらうとなると、人は返って冷静になるもんだ。
もう勉強する必要がないという解放感が気持ちいい。
いや、まあ勉強していたわけではないが。
俺はこっから4億円とともにスローライフを送っていくわけだ。
とりあえず本屋でラノベを大人買い…いや、本屋ごと買ってやろうか…
「おい!あぶねーぞ!!!」
ったく日中からうるせーな。
なにが危ないってんだ…
へ?トラック?
くそッ!!動けよ俺の足!2か月だけ陸上部だっただろうが!!
ここに来てずっと家に引きこもってた弊害が出てしまったか!
まずいまずいまずい…!!
俺は5億当たったんだぞ!!!こんなところで死ぬわけにはいかないんだよ!!!
「あぶない!!!!!」
どんっと、俺の二か月だけ陸上部だった体はあっけなく吹っ飛ばされた。
誰が俺のことを助けてくれたのかは俺からは見れなかったが、手は小さく、とてもかわいい声だった。
まずは、ありがとう。そして俺の身代わりになってしまってごめん…
「お疲れさまでした。そして、おめでとうございます。」
んん…
ここはどこだ…
あぁ…俺、死んだのか…
目を覚ますとあたり一面が白い蒸気で満たされていた、地面から1メートルくらいの高さで視界が晴れたことは立ってから気づいた。
「な、なによこれ…ここはどこなのよ…」
俺と同時、あるいは少し早く立ち上がった少女。
気の強そうな甲高い声で、ツンデレそうな声で。
黒髪でセミロングの。あ、俺と同じ高校の制服だ。
「おめでとうございます。あなたは不運にも死んでしまいました。ですがここには生前は善い行いを積極的に行っていたと記させています。」
おめでとうございます?死んだのにか?
そういって本をパラパラとめくるのは、2メートルくらいの美女。
神々しい…
「そこで、一つ提案があります。今いた世界には戻せない決まりですので。他の別世界、異世界に転生して、優雅に暮らしてみてはどうでしょう」
これって…異世界転生か?
本当にそんな馬のいい話があるか?
「もしかして、転生ってやつ!?」
先ほどまで不安だったこの女、今にも叫びだしそうな顔をしている。
「その通りです。あちらで暮らしやすいよう色々な祝福を授けます。そしてこれが…」
女神らしき人は、その女に手をかざす。
その瞬間に長細い剣が女の前に現れる。
「これは聖剣ね…わかったわ。倒せばいいんでしょう、魔王を…」
まだ女神は何も言ってないのに何かを悟った雰囲気をかもし出して大きく唾をのんでいる。
「ま、まあ倒してくれるに越したことはないのですが…どうかご無理をされぬようお気を付けくださいね」
ふうう。
この女の番は終わった。さあ俺の番だ…
「あのうぅ…あなたはどなたで…?」
困り顔の神々しい女の人は言った。
「影山だよ!なんで知らないんだよ!」
「影山さんね…今調べますわ。
えっとなになに…宝くじが当たってしまったが故、末代までの運を全て使い果たし、車にひかれそうになったところを15歳の女の子に救ってもらい、突き飛ばされたときに頭を打って死亡した影山さんであってますか?」
ニコニコの笑顔でこの女は言った。
恥ずかしい。恥ずかしすぎる。だけど今ので分かった。
俺は死んだのだ。
「なんだよ末代までの運がなくなったって!!俺のスローライフはどうなんだよ!!返せよ俺の5億円!!!」
「ですが、もう死んでしまったので…」
「なんかあの子の時と態度違くない?もっとなんかへりくだってたじゃん!」
なんか俺の時はさ、変なことで文句言ってるクレーマー対象する時の受付嬢みたいな顔してんじゃん…
「…まあ異世界に行くからには、魔王は倒して見せるわよ!!」
こいつは本当にワクワクしているな。
「それとぉ影山さんなのですが…」
転生なんか嫌だとはさっき言ったが、訂正しよう。こんなチートがあるなら話は別だ。
死んでしまったものはしょうがない!!割り切って転生スローライフを楽しもう!!
「転生したくないとのことでしたので、記憶を消して…」
「大丈夫です!!!転生します!!!!」
「そうですか。では良い異世界ライフを…」
下に魔法陣が出現し光を放っている。
あ、あれ俺にチートくれないの…?ねぇ俺にも『祝福』とやらはくれないの?
「おーい俺にもなんか武器くれよー」
俺と女は段々と上昇する。
「あ、すっかり忘れていました!!その剣に『永久所有の祝福』をお付けします!
これであなたの所有物となり、近くに無ければすぐ手元に来ますし、貴方以外が使えないよう、そしてどこにあるかもわかるようになります!!」
「あ、ありがとう女神様!!ぜーったい魔王倒しますからぁぁっっ!!!!」
「では、よい異世界ライフをーーー!!!!!!」
こうして僕たちは転生した。
~~~~~~~~~~~~~~
目を開けるとそこには、期待通りの中世ヨーロッパの街並み。
レンガで作られた家、空気もなんだかきれい。
電柱やコンクリなんてのは無いし、街一体が美しい。
「あなたも転生してきたのね!私、優夏よ!!」
あ、さっきの女の子だ。
「うん。俺は影山。転生者同士頑張ろうな。」
年下の女の子と喋っちゃったよ。
「そ、そうね!じゃ私はこっちいくから!」
こうして二つある道の右のほうに優夏行った。
いい感じで別れたのにまた会うのも気まずいし、俺は左から行って、とりあえず街並みを散策するかぁ。
せっかく5億も当たったのに残念だが、まあ妥協だ。
アレは親と国(相続税)にプレゼントするとするか…
俺が歩いて5歩、いや、3歩の時であった。
『永久所有の祝福』発動。
俺の体は光って、勢いよくさっきいた場所、よりさらに奥にいる優夏と飛ばされ、ぶつかった。
「い、いてっ!!」
優夏は地面に倒れる。
「ご、ごめん!!なんか急に吹き飛んでこっち来ちゃったんだ」
「ああ、いいのよ…異世界だもんね。多分よくあるわ」
また歩き出して4歩のことだった。
何が起こったかわからないが、誤ってしまった。
日本人らしさが出てしまったな。せっかく異世界に来たんだしもっと胸を張って…
『永久所有の祝福』発動。
またもや俺が少しだけ発光し、優夏のもとへ突進。
「ちょ、ちょっとしつこいわよ!!つぎちょっかい掛けたら、試し切りするからね!?」
「ごめんごめんごめん。ほんとにわざとじゃないんだって…」
…………察しのいい俺は気づいてしまった。
「優夏さん。その剣ちょっと貸してもらえない…?」
「え、いいけど、貴方には扱えないわよ。なんてったって、『永久所有の祝福』がついていて…」
「えいッッ」
俺はその剣を思いっきりぶん投げた。
「な、なにすんのよっ!!!私の剣を!!!」
剣は地面に落ちた後カタカタと動き出し、光って優夏の手に戻ってきた。
「やっぱすごいわねー!!!この剣素敵だわー!!!!」
優夏は自分に見事戻ってきた剣を撫でている。
この時、影山はその気づきが、仮定が確信に変わった。
「えっと。優夏さん…」
「な、なによ。申し訳なさそうな顔して…さっきのは全然怒ってないからもういいわよ。」
「僕にも祝福がついてるっぽいです。」
「へー!よかったじゃない!どんな祝福がついてるのよ」
「そういうことじゃなくて…」
「なによ勿体ぶった言い方をして。早く言いなさいよ」
「あ、僕にもついてるっぽいんですよね…優夏さんの『永久所有の祝福』…」
優夏は猛ダッシュで俺から離れた。
少し間のあと、俺の体が光る。
『永久所有の祝福』
「うわぁっ」
「こ、こっちこないでよぉ!!!!」
「とまれってぇぇぇぇ!ぶつかるぅ!!」
こうして、JKとの異世界共同生活が始まった。
影山は定番のジャージです。
優夏はセーターにリボンで制服です。