表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

眠りたい夜の800字

贈る言葉

作者: もも

 先輩方、御卒業おめでとうございます。在校生を代表して挨拶をさせて頂きます。先輩方が入学されたのは今から三年前。明るい高校生活への期待に、胸を膨らませていたに違いありません。淡く色付いた桜が視界いっぱいに咲き乱れる中、正門をくぐったことを覚えていらっしゃるでしょうか?

 初めて出会うクラスメイト、新しい机と椅子、慣れない制服に気恥しい思いをされたと思います。今私の目の前にいる、さも一人前の大人のような顔つきをした先輩方を見ると、そんな頃があったことが信じられません。

 やがて時は過ぎ、私たち二年生が入学しました。あの日のことは今でも忘れられません。入学式の後、先輩方はとても丁寧に、私に教えてくださいました。校則ではない、先輩方だけのルールがあることを。ご存じない他の先輩方や保護者の皆様にもご説明しますと、そのルールとは殴られても一切動かないこと、毎月三万円を指導料として支払うこと、先生方への報告を禁じることなどです。私は先輩方からの温かい御指導のお陰で、多少のことでは全く痛みも苦しみも感じないようになりました。この場を借りて、御礼を申し上げます。

 これから先輩方は高校を卒業し、大学、そして社会という大海原へと旅立ちます。昨日、私は警察署へ行き、ブレザーの下に隠れた無数の傷跡と先輩方から頂戴した叱咤激励の言葉を録音した音声データを提出してきました。どうか先輩方、そのように青い顔をして俯かないでください。せっかくの晴れの門出です、いつものようにへらへらと笑い、胸を張って前を向いてください。

 最後になりましたが、先輩方の未来が輝かしいものでありますようにと心から御祈りしております。以上をもちまして送辞とさせて頂きます。ありがとうございました。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ