贈る言葉
先輩方、御卒業おめでとうございます。在校生を代表して挨拶をさせて頂きます。先輩方が入学されたのは今から三年前。明るい高校生活への期待に、胸を膨らませていたに違いありません。淡く色付いた桜が視界いっぱいに咲き乱れる中、正門をくぐったことを覚えていらっしゃるでしょうか?
初めて出会うクラスメイト、新しい机と椅子、慣れない制服に気恥しい思いをされたと思います。今私の目の前にいる、さも一人前の大人のような顔つきをした先輩方を見ると、そんな頃があったことが信じられません。
やがて時は過ぎ、私たち二年生が入学しました。あの日のことは今でも忘れられません。入学式の後、先輩方はとても丁寧に、私に教えてくださいました。校則ではない、先輩方だけのルールがあることを。ご存じない他の先輩方や保護者の皆様にもご説明しますと、そのルールとは殴られても一切動かないこと、毎月三万円を指導料として支払うこと、先生方への報告を禁じることなどです。私は先輩方からの温かい御指導のお陰で、多少のことでは全く痛みも苦しみも感じないようになりました。この場を借りて、御礼を申し上げます。
これから先輩方は高校を卒業し、大学、そして社会という大海原へと旅立ちます。昨日、私は警察署へ行き、ブレザーの下に隠れた無数の傷跡と先輩方から頂戴した叱咤激励の言葉を録音した音声データを提出してきました。どうか先輩方、そのように青い顔をして俯かないでください。せっかくの晴れの門出です、いつものようにへらへらと笑い、胸を張って前を向いてください。
最後になりましたが、先輩方の未来が輝かしいものでありますようにと心から御祈りしております。以上をもちまして送辞とさせて頂きます。ありがとうございました。