(閑話)少女の捜索部隊
投稿します。
あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
「いないな...」
少女がエドワード領で生死不明で行方知れずとなり、数週間が経過した。日数が経過したことで生死も怪しいが、生きている場合かなり移動している可能性もあり捜索のために少人数で構成された複数の部隊が各地に派遣されていた。尤もそれだけでなく国境付近の見回りも兼ねている。男達はジェイクと共に派遣されてきた部隊の一員で、新たに指揮官となったアルフレッドの部下であるフィンの指示だ。
エドワード領にジェイクと共に派遣されてきた連中の中には行動思想が問題視される人物もおり、そのような人物は全て拘束された。一方中には比較的問題ないと判断された人物もおり、彼らは僻地に捜索、警戒に当たらされていた。
その1小隊である彼らはエドワード領から木々をかき分けてここまで移動してきた。しかし、移動中少女が見つかるとは微塵も思えなかった。険しい山と激しい流れの川が続いており、とても少女が渡れるとは思えないからだ。
そんな彼らに、不運は起きる。彼らの目の前に黒い巨体に遭遇した。巨体は2mを超えており、全身黒い毛におおわれ、大きな爪、鋭い牙、どう猛な瞳は赤く何かを見つめている。そう…熊の魔物に遭遇したのだ。
「グルルるるるるるる...」
熊の魔物は唸り声を上げるが、彼等の視線はそれだけではない。その熊の下に青い髪の少女が倒れていたのだ。熊の魔物は少女の身体をその鋭い爪で何度も転がしていた。爪に引っかかれた少女の体には幾重にも傷が刻まれ、今も増え続けている。
「おい、あれ...」
「ああ...」
だが、自分達よりも巨大な熊の魔物と戦うには戦力が足りない。
「すまん。救援を...」
「分かった。無茶するなよ。」
「ああ。」
一人の男は増援のために森の奥に消えた。残った2人はじっと熊を監視する。未だに熊は少女の体を転がしていた。このままでは少女の命が危ない。否、既に...少女の顔が熊に隠れて見えないので、分からない。だが、事態は更に悪化する。
「「グルルるるるるるる」」
唸り声をあげながら何頭ものくまの魔物が姿を表したのだ。熊は少女だけではない。騎士達にも目線を向けていた。その鋭い眼光に当てられた騎士達の頭には警鐘音が鳴り響く。
「不味いは気付かれた。」
「くっ」
男達はゆっくりくまと目線を合わせながら後退を始めた。幸い、くまとの距離はまだ充分ある。そして、バッと翻ると草木に隠れるように立ち去った。
「すまないっ」
男達は後ろ髪を引かれる思いで其の場から離れた。
数時間後、まだ日が出ているうちに、増援部隊と合流した騎士たちは、すぐに現場に向かう。騎士達はマークを残して移動していたので、スムーズに向かうことができた。しかし、騎士達の目の前には無惨に散らばる血痕と服の切れ端、ズタズタにされた青い髪がそこら中に広がっているだけであった。少女の体はどこにもない。熊たちに運ばれたのならその末路は想像するのに容易い。
「遅かったか...」
騎士は歯を食いしばりながら絞り出すように言う。その後、周辺を探したが、少女は見つからなかった。やむを得ず、騎士達は服や髪の切れ端を回収すると現場から撤退した。
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