十年
せわしない、せわしない、せわしない
だけど仕方がない
これを性と呼ぶのだ
鎮まりゆく闇、僕は上を目指す
明かりは要らない
ここがどこなのか知らない
四肢の感覚を頼りに、僕はのぼる
はじめまして、聞きなれた音と風が優しく触れる
そして今、一ところを見つけた
せわしない最初のステップが、一つ完了した
次に僕は、全身に力を込める
渾身の力で、僕を覆う衣を脱ぐ
光を知らない僕の身体は、燐光のように煌めく宝石のようだと君は言うだろう
初々しい二枚の羽は、玉虫色の沙羅のようだと君は言うだろう
湯上りのような湿り気が大気に溶けたなら、僕は飛び立つ
新たな世界へ
繋がれた命を放つ
長い眠りの末、刹那の命を生きる僕らの世界へ