生徒たち
フータが手をかざすと、地面からネット状に編んだ道が立ち上がり、空へと伸びる。
「こいつを辿れば、学校までたどり着ける」
「あんまり大がかりな魔法やると、ハゲるでいすよ」
「どいつもこいつもそればっかりだな。 こんなんでハゲるわけ……」
言いかけたその時、ぼとり、と何かが頭から落ちる。
「は」
カツラ、否、フータの髪の毛の束であった。
「ンナアアアア!?」
「だから言ったでいす。 でもまあ、毛根が死んで無ければ大丈夫でいす」
動揺を隠せないフータ。
しかし、モタモタしている暇は無く、アクセルを捻ると、その場から離脱した。
学校まで戻って来ると、入り口の脇にある呼び鈴を鳴らす。
中から現れたのは、熱血教師、ジャージである。
年齢はほにゃらら才で、現在、彼氏募集中である。
ジャージは、フータの顔面を思い切り殴った。
「っ……」
「何で外に出たんだ!」
「……すいません」
「……話は後で聞く。 心配させるんじゃないよ、全く」
フータを抱きしめる。
厳しくされた後に優しくされると、何故か涙が出てしまう。
フータは、ボロボロと涙を流した。
「うっ、ぜんぜい、ごめんなざい」
「気にするな。 先生、もう怒ってないから」
傷だらけのフータを保健室へと連れて行くジャージ。
途中、青春に傷は付きものだな、と独りごちた。
傷の手当てが終わると、夜、フータは同級生の部屋を回った。
シマリスの話したいこと、をみんなで聞くためである。
そして、フータを加えた5人の生徒が、2階にある教室へと集まった。
壇上には、フータとシマリス。
「初めまして、シマリスでいす」
ツンツン頭の、レッドが言った。
レッドは、このグループのリーダー的存在 (になりたい)である。
「何だ、こいつ」
「シマリスでいす」
「そういうことを聞いてんじゃないのさ。 フータ、こいつは何者なんだ?」
レッドの問いに、フータが答える。
「シマリスっていう、未来から来たデータ、らしい」
「レイミっていう女に成りすましておびき出したでいす」
フータが慌ててシマリスの口を塞ぐ。
「何言ってんだよお前!」
すると、ふ~ん、という女子の冷たい視線。
「フータさんって、そういう人だったんだ……」
ぼそり、と呟いたのは、クルミ。
大人しい性格で、グループを作って下さい系のイベントを毛嫌いする。
「別にやましいことは考えて……」
「話を先に進めましょう」
メガネを押し上げ、そう言ったのは、ドクター。
データを駆使した戦いをするが、戦闘中によくメガネがズレる。
「映像を見せるから、暗くして欲しいでいす」
ホノカが立ち上がり、明かりを消す。
シマリスは、32型のテレビに変身すると、ビデオレターのような物を映し出した。
どこかの部屋。
そして、頭の禿げた見覚えのある男が一人。
「こいつ、カミノケだ!」
レッドが叫んだ。