壁
猫は三度、体を屈めて攻撃態勢に入る。
上空から翼竜が迫る。
「……」
猫は飛びかかって来ない。
相手はこちらが動いた瞬間を狙うつもりらしい。
(だったら……)
フータが、手をかざす。
その瞬間、ネコが動く。
「……ニャ!?」
空中に跳躍したネコは、面食らった。
フータの周りを竜巻みたく、鎖が巻き始めた。
鎧のように覆われた鎖で、猫と翼竜の爪を弾く。
「ニャンダテメーッ!」
何だてめー、と猫が叫ぶ。
しかし、フータに猫の言葉は通じない。
鎖の先端が翼竜の体に繋がる。
「ギェェーーッ」
空へと逃れた翼竜。
体が引っ張られた。
「うぐっ」
翼竜は、低空飛行で移動。
フータの体が地面に激しく擦れる。
(くそっ、このままじゃ大根おろしだ)
鎖を巻き取り、背に飛び移ることが出来れば、鎖の手綱で翼竜を操れる。
フータが鎖を巻き取り始めたと同時に、今度は高く飛び上がった。
「うぷっ」
飛んだ先には、複数の翼竜。
一匹が、フータ目がけて襲いかかって来た。
フータは、鎖を掴む手のひらに力を込めると、逆上がりみたくして体を持ち上げ、振り回してきた腕から逃れた。
爪が髪に引っかかって、20本くらいむしり取られる。
(マジでハゲるから、やめろ!)
どうにか鎖を巻き取って、翼竜の体にしがみつくと、背に這い上がる。
繋がっていた鎖を、翼竜の顔に素早く巻き付け、手綱にすると、上空からゴ〇ラのあるビルを確認した。
ビルの付近までやって来ると、翼竜にナイフを突き立て、血を採取。
「運んでもらって悪いけどな」
翼竜の背からダイブ。
ビルとビルの間に、ネット状に編み込んだ鎖を作り出し、そこに飛び降りる。
「ふうっ」
どうにか、地上に降り立つことができた。
あとは、レイミがどこにいるのか探るだけである。
ポケットにねじ込んでいた無線で呼びかける。
「レイミ、聞こえるか?」
すると、今度はクリアな声で反応があった。
「聞こえるわ」
「ゴ〇ラの建物の付近まで来た。 俺の姿が見えるか?」
すると、ここよー、というくぐもった声。
「どこだ!?」
フータが辺りを見回す。
急がないと、またネコや翼竜が集まってくる。
「……は?」
くぐもった声は、目の前のブロック塀から聞こえてくる。
「壁の、中?」