VSネコ
「レイミ、周りに何か目印は無いか?」
フータが無線に呼びかけると、黒い恐竜のようなものがビルの屋上にいる、との返事。
(ゴ〇ラの模型か。 多分、歌舞伎町の方だな)
歌舞伎町にあるトーホーシネマの屋上には、ゴ〇ラの模型がある。
レイミは、その付近にいると推測できた。
フータの現在地は新宿駅の西口で、そこに向かうには駅を挟んだ反対側に行かなければならない。
その間、この付近に広く生息するネコ・ドラゴンに遭遇することは免れない。
(やつら、俺を見たらエサだと思って飛びかかってくるハズだ。 サシじゃ勝てっこないし、どうするか)
ネコのサイズは2メーター前後で、見た目はネコだが、鋭い爪と尾を有する。
フータは、空を見上げた。
「……アレだ」
空を翼竜が旋回している。
あれに捕まれば、歌舞伎町のある東口へとジャンプすることが出来るが、そのためには、翼竜を引きつけ、鎖を体から生やさなければならない。
フータは、ドラゴンキャンディを取り出した。
(この飴には、竜の血が混ざってる。 これを舐めれば、鎖魔法が1回だけ使える)
鎖魔法の運用の一つに、相手の体から鎖を生やす、というものがある。
今回は、翼竜から鎖を生やして、それに捕まって移動する算段である。
フータは、適当な建物へと向かい、その屋上から翼竜を引きつけようと考えた。
(……)
左右を窺い、建物へと走る。
が、その時、路地裏からネコが飛び出した。
「フシャーーーッ」
(げっ)
フータは、ナイフを抜いた。
キャンディを取りこぼし、足元に転がる。
相手は、空腹のためか、いきり立って飛びかかって来た。
ナイフを構えて、ネコの方へと駆け出す。
ネコが飛びかかると同時に、スライディング。
ギラつく爪の下をかいくぐり、ナイフを滑らせ、肉を裂く。
地面に血が滴る。
「ふうっ」
間一髪、攻撃を回避すると、ナイフに付いた血を舐める。
すると、更に1匹、2匹とネコが集まってきた。
瞬く間に、囲まれる。
(おいおい、マジか!)
ネコが飛びかかるべく、体を折り曲げた。
ナイフを構え、周りを窺う。
(一番最初に飛びかかって来たヤツの下を潜る)
同時。
ネコ2匹が同時にフータに飛びかかる。
「ぐっ」
辛うじて、反応。
同時に来るとは思わなかったが、ネコの体の下をスライディングで抜ける。
そこに、もう一匹が待ってましたと飛びかかってきた。
狙われていたのか。
咄嗟に手をかざすと、突然、地面から鎖が生え、飛びかかってきた3匹目のネコに繋がる。
伸ばした腕が、フータのギリギリ手前で止まる。
(あぶねぇ!)
転がっていたキャンディをつまんで口に入れる。
残り2匹が、こちらに狙いを定める。
(魔法一発じゃ、凌げないか?)
その時、騒ぎに気づいた翼竜が、上空から迫ってきた。