告白
気がつくと、フータの肩から血が噴き出した。
「くっ……」
こちらが動揺している内に、勝負を決めるつもりか。
ホノカが剣を掲げると、フータは背を向けて走り出した。
洞窟の奥に逃げ込むと、ホノカが後を追う。
(完全に、俺を殺すつもりだ……)
すると、矢が飛んでくる。
ホノカは、手にしていた剣の形状を変化させ、ライトボーガンを構えた。
背中に向けて飛んで来る矢が、命中。
しかし、刺さらず地面に弾けた。
「ぐっ……」
フータは、さっき授かったばかりのドラゴンの力を行使した。
首から下が鱗で覆われ、攻撃を弾く。
「……」
それでも、お構いなしにホノカは矢を連射した。
徐々に押し込められるフータ。
気がつくと、すぐ後ろは奈落の底。
「ホノカ、教えてくれっ」
しかし、返答の代わりに矢が飛んできた。
それを胸に受けて、崖から落ちる。
(これ以上、ドラゴンの力を使ったらどうなるか分からない)
ホノカを獲物と見なし、襲いかかるかも知れない。
それでも、理由を聞くまでは死ねない。
ドラゴンの意志に、抗わなければならない。
フータは、背から翼を生やし、奈落から這い出た。
そして、天井に張り付くと、叫んだ。
「ホノカ、弓を下ろしてくれっ! 何で俺を殺そうとするんだ!?」
フータは、自分の予想が外れて欲しい、ただそれだけを祈った。
今、フータは理性を保つので精一杯。
もし、長老の言った通りの返答なら、即座に口から炎を吐き出し、ホノカを焼き尽くすだろう。
ライトボーガンで狙いをつけていたホノカは、口を開いた。
「何で、浮気なんてしたのよ」
「……浮気?」
フータは、ホノカの言ったセリフが全く理解出来なかった。
ホノカは、続けた。
「レイミなんて女を好きになるなんて、絶対に私は許さない」
レイミ? と一瞬、フータは考えた。
そして、思い当たった。
シマリスが自分を誘い出す為に使った女、レイミ。
「あれが何だってんだ!」
「私はあなたのことが好きだったのに! あなたは違う女に興味を持った……」
突然の告白。
そして、ホノカは語り始めた。
ホノカは、レイミに興味を持ったフータのことが許せなかった。
そして、シマリスによるフータの殺害命令。
メンバーが反発する前に、強引にこの計画を進めた。
「私はあなたを試した。 もし、旅の途中で私の気持ちに気づいて、謝罪したら許そうと思ってた。 でも、最後まで気づかなかった。 だから、殺すのよ。 でも今、もっと面白いことを思いついたわ」
ホノカは、ボーガンを床に捨てて、崖の方へと向かうと、そこから身を投げた。
「……!」
ホノカは、奈落の闇へと消えた。




