表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/21

 その日の昼。

フータはトイレで弁当を食べていた。


「……」


 涙目になりながら、ガフッ、ガフッ、とサンドイッチを無理やり胃に押し込む。

いつもなら、5人揃って昼食を取るのに、なぜ、一人で食べているのか。


 きっかけは、班編成が決まってからのメンバーの態度であった。

あの日以来、フータはどことなくよそよそしいみなの態度が気になっていた。

そして、シマリスが現れ、フータの代わりと言わんばかりにその輪に加わり、自分の居場所が無くなるのでは? という不安を抱く。


 そして、溝が深まる決定的な事件。

それは、地下のショッピングモールでの出来事である。

このショッピングモールは、生存している人間らが新宿駅の地下を改良して作った施設で、ドラ専の地下と繋がっている。 (外敵が入って来ないよう、ここから外へは出れない)

そこには駅弁なる物も売られていて、遠征の際に食べる弁当をみんなで選ぼう、とレッドが提案し、フータはそれを楽しみにしていた。


 フータが翌朝起きて他の者の部屋に向かうと、既に誰もいなかった。

仕方なく一人で地下へと向かうと、自分を除くメンバーが先に弁当を買って戻って来たのだ。


(あいつら、どういうつもりだよっ!)


 フータは、拳を握り締めた。

みな、下を向いてフータをスルーしていく。

思わずカッとなって怒鳴り散らそうとしたが、どうにか踏みとどまると、彼らの背に向かって捨て台詞を吐いた。


「俺が何をしたのが知らないけど、別に謝るつもりはねーよ。 仲良しこよしでやってればいいさ」


 フータの本心ではなかった。

本当は、自分も仲間に入りたい。

それでも、フータにもプライドがある。

自分が悪いことをした訳でも無いのに、頭を下げるのは納得いかない。

そしてそのまま、一人でショッピングモールへと向かった。

クルミが一瞬気に掛けたが、ホノカが仕方ない、と諭した。


 あっという間に、決行日がやって来た。

フータは心を閉ざし、俯いて目を合わせようとしない。

なぜ、こんなことになってしまったのか、自分でも分からない。

つまらない意地で、後に引けなくなってしまった。

 唯一の救いは、こちらのメンバーがホノカだけであること。

シマリスは所詮データだし、今この状況でレッドやドクターと一緒にいても気まずいだけである。

武器一式を積んだジープが2台並んでいて、レッド、ドクター、クルミが先に乗り込み、出発した。


「……フータ、行くわよ」


「……」


 ホノカも、フータがこんな風になるとは思わなかったが、無理矢理車に乗るよう促す。


「いつまでそうしてるのか知らないけど、仕事はしてよね」


 ホノカも内心では、自分に非があることは分かっていた。

それでも、これが自分の使命だと言い聞かせ、ハンドルを握った。


「……」


 まだ若いフータは、中々気持ちの切り替えが出来ないでいたが、もし、和解案を先に通せば、みんなを見返せるかも知れない。

そうすれば、きっと態度も変わるだろう。

そう思うと、少し明るい気持ちになった。

3人を乗せたジープが、走り出した。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ