深夜
帰ってから、フータはベッドの上でさっきの事を考えていた。
(ドラゴンの子って、一体誰なんだ)
枕元にはナイフ。
部屋に戻る途中、ホノカに言われた為である。
もし万が一、夜中に襲われた時、戦えるようにしておいた方が良い。
「なあ、シマリス、お前顔見たんだろ」
しかし、シマリスは尻尾のコンセントを電源に差し込み、スリーブモードである。
「……充電中かよ」
枕に頭をもたせると、大きく欠伸をする。
(そろそろ眠たいな……)
ふと、壁の時計を見やると、まだ9時である。
いつもならまだ誰かの部屋でだべっている時間だが、今日は流石に疲れたか、気づけば寝息を立てて眠りに付いた。
夜中の0時。
シマリスは目を覚ますと、尻尾を電源から抜いた。
(今日はまだ終わりじゃないでいす)
フータが熟睡している中、音を立てないよう、ゆっくり扉を開けて、隣の部屋をノックした。
ひたすらノックを続けていると、現れたのはドクター。
「一体誰ですか? こんな時間に」
メガネを掛けていない為、視界がぼやけている。
「シマリスでいす。 ちょっと話しがあるから、さっきの教室に集まるでいす」
「……明日じゃダメですか?」
「ダメでいす」
その格好でいいから、下に降りろと急かす。
続け様に、レッド、クルミ、ホノカに呼びかけ、先ほどの教室で合流。
みな寝ぼけ眼で、早くしてよ、と欠伸をしながら言う。
「てか、フータがいないけど」
ホノカが周りを見渡して、4人しかいないことを指摘する。
壇上のシマリスが、口を開いた。
「フータに聞かれたらマズいでいす。 結論から言って、ドラゴンの子はフータなのでいす」
「……んな訳あるかよ」
レッドが鼻くそをほじりながら言う。
「ちょっと、汚いんだけど。 てか、シマリス、あなたもそんな冗談言うために連れてきたんなら、怒るわよ」
「これを見るでいす」
テレビに変身したシマリスは、ある映像をみなに見せた。
「……これって」
ホノカは気がついた。
この映像は、さっき見た時は音声だけだった箇所である。
今回は、はっきりと相手の姿形が見えている。
みな、呆気に取られた。
仰向けに倒れているフードをかぶった男。
顔は、フータと瓜二つであった。
「うそ……」
クルミが、思わず口を覆う。
「どういうことですか!? フータ君が、カミノーケ先生を刺すなんて……」
ドクターも事情が飲み込めない。
シマリスが言った。
「フータはドラゴンの子でいす。 今はその自覚な無いだけでいす」
シマリスの話では、フータは記憶喪失のような状態らしい。
未来では、何らかのスイッチが入り、ここの同級生を手に掛けていった、との事だ。
真相として、彼らは神竜に挑む前にフータに殺されてしまったのである。
「フータ君が操られていた、という可能性は?」
「フータの素性を調べたでいす。 フータは養子で、両親の代わりをしていた夫婦の話だと、記憶喪失の状態で行き倒れていたらしいでいす」
つまりは、両親がいない=ドラゴンに育てられた可能性、との事だ。
確証がある訳では無い。
しかし、フータがカミノーケを襲ったのは事実であり、シマリスは4人にこう命じた。
「どさくさに紛れて、旅の途中でフータを始末するでいす」




