未来からの配信
(つか、部屋を暗くする意味あったか?)
そんなことを思ったフータであったが、周りは画面に現れたカミノケに気を取られていた。
「先生、やっぱり禿げちゃったんだ……」
クルミが小さな声でボソリと言った。
画面のカミノケが話し始めた。
「えー、私はカミノーケだ。 私は鎖魔法の他にも、物体を過去へと送る魔法に目覚めた。 それを使ってこの映像を送る」
カミノケの話では、鎖魔法や空間魔法は、使うたびに自身の髪の毛を消費するため、これが自分の使える最後の魔法になると言った。
生徒らに動揺が走る。
(シマリスの話しはマジだったのか!)
「これを見てくれ」
突如、画面が動いて移動。
恐らく、カメラをカミノーケが掴んで移動しているのだろう。
そして、1台の液晶モニターの前に来ると、スイッチを入れる。
ホノカが呟いた。
「何これ、映画?」
1台の戦車が、ドラゴンに向かって大砲を放つ。
しかし、ドラゴンは無傷で、兵隊たちを爪で切り裂いていく。
クルミが口に手を当てて、嘔吐く。
「おいおい、何なんだよこれ!」
レッドが一旦止めろ、と叫ぶと、カミノケの声。
「これは、今実際に行われている、ドラゴン・パーティー ~人間全滅させるまで帰れま10~ の一端だ」
カミノケは、西暦2020年7月24日に、ドラゴンの祭典、ドラゴンパーティーが行われると説明。
ドラゴンパーティーは、火竜が東京にあるスカイツリーに火を灯し、開幕する。
世界各国の竜がここに集結し、人類は未曾有の危機に陥る、とのことだ。
「ポイズンドラゴンの毒ガスによって、地上へと追い立てられた我々は、ドラゴンとの戦いを余儀なくされる」
途中まで話を聞いたレッドが、ちょ、待てよ! と似てないモノマネを披露。
「俺たちは何してんだよ!」
ドラゴンを倒すためのドラ専。
そこの生徒は何を遊んでいるのか。
その疑問を聞いていたかの如く、カミノケが答える。
「生徒諸君らについてだが、君らは戦いを挑み、敗北した」
「なっ」
レッドが固まる。
(負けたのか?)
フータも思わず、聞き入る。
「ドラゴンパーティーと共に復活した神竜には、勝てなかったんだ。 だから、君たちには、ある提案をする」
5人全員が、耳をそばだてた。
「和解案を、ドラゴンの長老らに提出するんだ。 大陸を捨て、人類の何パーセントかをどこかの島で生きながらえさせてもらうよう。 絶滅の危機を逃れるには、それしかない」
「ふざけないで下さい!」
普段は声を荒げないドクターが、声を張る。
「諦める、などと……」
「ちょ、落ち着きなよ、ドクター」
ホノカが思わずドクターに向き直る。
カミノケが続けた。
「君たちには、チームを2つに分断して、長老の元へと向かって貰いたい。 2つに分ける意味は、生存率を少しでも高める為だが…… とにかく、長老は北の雪国、南の島国にいる。 彼らに会いに…… なっ、何だキサマッ」
突然、画面が暗くなり、カミノケの悲鳴。
そこで、映像は途切れた。




