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case2 貴族令嬢ーfile010102001

一旦話は変わって、二人目です。

だいぶ短めー

  最悪だ。


「………っ!!……」

 

  わたしは意識を取り戻して、まず呻いた。

  そして感じたのは痛みだった。

  全身が痛い。

  まだ視界がボヤけているので目で確認することは出来ないが、その痛みによって自分の状況は理解出来た。


  まるで悪夢だ。


  まず、顔は殴られたようで熱を持った痛みがある。

  歯が折れていないことから強く殴られたわけではないのだろう。

  腕も足も擦り傷が沢山あるのか細かい痛みがノイズのように押し寄せてくる。

  特に手首と足首が酷い。

  そして、胸の痛み。

  これは精神的にではなく物理的な痛み。

  輪郭がハッキリせずボンヤリと視界に浮かぶ年相応の大きさの胸は、細かい傷が無数に付いているらしく、いくつもの小さな痛みを主張してくる。

  極め付けは、下腹部の痛み。

  お腹が切り裂かれたかのように痛い。

  しかも表面ではなく内部が。

  事実内側が傷付いているのだろう。

  自分身を纏っているはずの服はボロボロで、ほとんど何も隠せていない。

  袖とお腹にちぎれた布が残っている程度。

  そして、現状を認識するための思考を邪魔するような頭痛と吐き気が絶えず続いている。

  これは脱水症状からくる症状な気がする。

  つまり、そういうことだ。

  嬲られたのだ。

  それも恐らく長時間かけてかなりの人数に。


「ん……っ!」


  近くから声が聞こえた。

  音を立てないようにゆっくりと声の方へ向く。


  過去形ではなかった、まだその最中だった。

  いや、今終わったとこだ。


  視界は徐々に晴れてきたが、暗くてわかりにくい。

  ただこの状況で影が見えれば大体想像がつく。


「んふぅ……」


  熱のこもった息を吐き出した男が、わたしより年下に見える小柄な少女から少し離れる。

  男は近くに置いてあった布を取って身体に巻き付けていく。

  服を着ているようだ。

  男は満足したように残った息を吐きだすと、明かりが見えるこの部屋の入り口らしき方向へ歩いていった。


  わたしはゆっくりと首を巡らせて周囲を確認する。

  近くの少女以外にも奥に2人ほど女性の影が見える。

  奥の2人はピクリとも動いていない。

  心の中でため息をついてから、わたしは意識してゆっくりと空気を鼻に吸い込んだ。


  はっきり言って臭い。


  辺りには体液の匂いに混じって血の匂いも充満している。

  近くの少女からはあまり血が流れていないことから考えると、奥の2人のどちらか、または両方から流れた血だろう。

  大人しくさせるために痛めつけたか、わたしと彼女を大人しくさせるために見せしめとして殺されたか……いや、こんなやつらが殺すなんて勿体無いと思うようなことはしないだろうから、死なない程度に斬られたとかそんなところだろう。


  反吐が出る気分だ。

  そして正しく悪夢だ。


  わたしにとっても、彼女らにとっても。

  確かにこれは肉体が死ぬより先に精神を手放してしまいたくなるほどに最悪な環境だ。


  そうでなければわたしはここにいないのだから。


  周りを少し確認していたら視界がハッキリとしてきた。

  ならばと、一番気になっていた自分の身体の観察をしよう。


  腕は上に挙げられた状態で手首を縛られていて動かせないし、足も股を閉じれないように足首が縛られていて動かせない。

  痛いから引っ張ったりしていないけど、絶対に逃げられないように頑丈に固定されているだろうことは予想できる。

  なので首を動かし視線だけで自分を眺める。


  まず目に入るのは胸。小さいなりにもしっかりと膨らんだ胸が、隠されることなく晒されている。

  先ほどから感じている痛みの具合で想像していた通り、酷い有様だ。何度も小さな硬いものが押し付けられたり、それらに挟まれたりして出来た切り傷や内出血が至る所にある。

  強く握られたり噛み付かれたりしたのだろう。


  でも、同時に少し嬉しい気持ちになる。


  次にそのまま下に視線を動かせばお腹と腰、そして太ももが見える。

  細い腰に丸みを帯びた下腹部、程よく脂肪のついた太もも。

  下腹から足の付け根にかけてと太ももの内側に、ドロリとした液体が大量に纏わり付いている惨状は極力無視して、じっくりと股間を見つめる。


  オーケー、付いてない。


  こんな惨状だというのに、少し顔がニヤけてしまう。

  しかし同時に、こんなことを仕出かした人間に対する怒りもしっかり湧いてくる。

  自分の顔は見えないがきっと希望通り美人なんだろう。

  そんなたぶん美少女に対して大人数で寄ってたかってこんなことをするなんて、もう人間と思わなくて良いんじゃないかな?

  まあ、見目麗しくなくとも、女性にこんなことはしてはダメだけど。


  とりあえず、視線を上へと移し天井を見上げる。

  デコボコとした岩肌が見える。

  洞窟の中のようだ。

  そんな天井を見上げながら、わたしはその更に上の空へと祈りを捧げる。


  ありがとう。

  状況以外は希望通りであることに感謝を。


  そう、希望通り。

  綺麗で可愛く、働かずとも生きていける可能性のある人間に転生させてくれたはず。

  そう、声が変わり髭が生えてきたことに絶望して自殺したどうしようもない男の娘を、女に転生してくれたことに感謝を。


  だからこそ、わたしはこの少女の体がまだ自分の身体という認識が薄く、こんなに冷静に観察して、状況把握に努められる。

  さらに転生特典として半年ぐらいは異常に回復力が高いとか。

  理由は転生してすぐに死なれても困るかららしい。

  おかげで痛みは楽になってきた。

  とりあえず、自分の置かれている状況は分かったし、生きていけることは確認できた。


  ただ問題があるとすれば……


  このどうしようもない絶望的な状況から逃げ出せるかどうかだけだ。


  どうしよう……?


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