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case3 第二王子ーfile010103003―tag1

活動報告に記載しましたが、この白色転生というお話は書き直します。

ですので、一旦こちらで終了となります。


「呼んだ?」


  唐突に声が響きました。

  わたしの声ではありません。

  つい先ほど、電話を掛け終わったタイミングまでわたし以外に誰も居ないはずでした。

  神様に電話が繋がらなかったので、わたしはクッションに身を沈め、脱力していたところです。


  そんなわたしを見下ろすように少女が立っています。

  真っ白で日本の民族衣装のようなデザインの衣装を着ていて、まるで白く輝いているようで神々しさを感じます。

  何の前触れもなく現れたにも関わらず、元からそこに居たかのような存在を主張しています。


  わたしは瞬きを数度繰り返してから、慌てて立ち上がります。


「か、神様! 来るなら一言仰ってからにして下さいよ!」


  反射的に声を上げたものの、神様はわたしの要望に応えるための一番良い方法を取られたでしょうし、この方の望まれることを否定することなど誰も出来るはずがありません。


「みうちゃんが呼んでるような気がしたからすぐに来ちゃったんだけど、迷惑だったかな?」


  申し訳なさそうに眉尻を下げて神様がわたしを窺っていらっしゃいます。

  神様の容姿を現代の日本基準で表しますと、どうひいき目に見ても小学校高学年の女児にしか見えません。

  今はまるで親に叱られた子供のようです。

  その容姿のことを神様に申し上げると「これでも一応中学生だよっ!」と頬を膨らませられるその姿が可愛らしいのでたまにからかってしまいますが、今日は止めておきます。

  今日はこの困ったような顔が充分に可愛らしいので、それ以上を望むというのは望み過ぎというものです。


「いえ、滅相も御座いません。神様でしたらいつでもいらして下されば結構なのですが……その……突然、前触れもなく来られると驚いてしまいます……」


  正しくはわたしの心の準備が出来ていないのですが。

  神様をお迎えするには、あの、ほら、儀式が必要でしょう?

  神社で舞を舞わねばなりませんでしょう?

  でなければ、身体ではなく心が踊ってしまいます。

  いえ、準備していても神様を前にすれば舞い上がってしまうのですが。


  神様はわたしの言葉に安心されたように笑顔を浮かべられます。


「そっか、それはごめんね。ごめんついでにお願いだけど、わたしはみうちゃんのこと名前で呼ぶんだから、みうちゃんもわたしのこと名前で呼んでくれれば嬉しいんだけど?」


「恐れ多いです……」


「みうちゃんなら気にしなくて良いのにー」


  神様が頬をぷっくりと膨らませられて不満を告げられます。

  ブーたれるという表現がぴったりです。

  可愛らしいです。

  この表情も見ることが叶いました。

  わたしは幸せ者です。

  眼福です。

  ああ……


「だって誰もわたしのこと名前で呼んでくれないんだよ? いじめなの?」


「それは……申し訳ございません……ですが神様は神様なんですもの……あなた様をおいて他を神様と呼べませんので、もはや固有名詞だと思うのですが……?」


「唯一神じゃないんだよ? みうちゃんや他のみんなも神様だよ? わたしがみうちゃんたちを神にしたのは確かだけど、いちのかみと言うわたしより上の神様も少なくとも一人は居るわけだし、何か別の呼び名が無いと個が認識できないんじゃない? 電話した時の本人確認用合言葉みたいなもんだよ」


  詐欺対策ですか?

  オレ、オレだよ、神だよ……みたいな?

  最初から嘘ついてるのバレバレですよね?

  それに個が認識できないなんてことはありませんよ?

  わたしたちにとって唯一神ですし、神様が仰る神様より上の神という存在をわたしたちは見たことも感じたことも無いのですから。


  と申し上げたところでいつもと変わらない問答が始まるのは間違いありません。

  むしろここまでも変わらないいつものやり取りで、どのパターンを選ぶかという違いがあるだけです。

  ああ、これが、暇を持て余した神々の遊び、というやつですね。


「では僭越ながら……にのかみ──」


「それじゃなくて」


「……ついのかみ──」


「それでもなくて」


「…………幼女神?」


「その呼び方初めて聞いたけど? というか幼女じゃないし、中学生だし!」


  ああ、やってしまいました。

  神様がまた頬を膨らまされて不満げにされています。

  可愛らしいお姿を拝見させて頂いてしまいました。

  とりあえず、手を合わせて拝んでおきましょう。


「ちょっと拝んでないで!」


「……………ヨリコ様……」


「ちゃん、が良いなー」


「もう……我が儘でいらっしゃいますね……よ、ヨリちゃん……」


  噛んでしまいました!

  神様だけに噛みました!

  いえ、そうではなく、一文字減らしてしまいました!

  ああ、もう、恥ずかしくて顔を上げていられません。

  神様をちゃん付けで呼ぶだけでもわたしにはハードルが高いですのに。


  しかしながらこれも神様のご要求なのです。

  何度やっても慣れないですし、やはり畏敬の念を込めた神様呼びの方がわたしには合っています。

  ただ……


「ヨリちゃん! 一文字減ってより渾名っぽい! 女の子同士仲良しっぽい!! みうちゃん最高!!」


  これです!

  神様は両手を挙げて破顔されています。

  何なら踊っていらっしゃると表現しても良いぐらいです。

  そうです、この儀式を乗り越えるとこの喜びようが見られるのです。

  わたしはもう、死んでも構わないと思えるぐらいにエクスタシーな体験です。

  テンションが上がって普段使わない言葉を使ってしまいました。

  そのぐらいわたしも舞い上がってしまいます。

  素晴らしいです。

  可愛いです。


「これだから、みうちゃんが一番のお気に入りなんだよね〜 やっぱりみうちゃんを最初の転生神にして良かったと思うわ〜 始まりの転生神はさすが、今までに無いことをしてくれるね!」


  楽しそうに神様が話されます。

  その上機嫌さは神様の周りに音符が浮かんでいるのを幻視してしまうほどです。

  そんな神様を拝むことが出来てわたしはもう立っていられません。


  タブレットを操作して私物倉庫からクッションをもう一つ取り出します。

  どこからともなくクッションが現れ、ラグの上にぽすんっと落ちました。

  そしてわたしは、先ほど倒れ込んでいたクッションに身体を預けます。


  すると神様も慣れた調子でクッションに腰掛けられました。

  嬉しそうにクッションにうずくまっていらっしゃいます。

  そのお姿も可愛らしく、わたしは更にクッションで悶えてしまいます。


「それで、みうちゃんはわたしに何の用事があったのかな?」


  わたしが落ち着いた頃に、神様がそう話を切り出されました。


  わたしは居住まいを正してクッションの上に正座をします。


「選定された転生者の行き先についてです」


「んー……?」


  わたしの言葉に神様はどこからともなくわたしが持っているタブレットと同じものを取り出され、珍しく今回の転生者の情報をご確認されました。


「別におかしな点はないかな……仕事とはいえ大酒飲みでナルシストと。オレスキーと呼ぶね? このオレスキーはみうちゃんの苦手なタイプ?」


  相変わらずの命名センスでいらっしゃいます。

  名前から彼の雰囲気がすぐに想像できます。


「はい。話を聞かないタイプでして。とりあえず死んだことを理解してもらうために3日ほど現状把握に努めてもらおうかと思っています」


「なるほど、辛抱強く説明するのが面倒くさいから一旦放置するってことね。うん、良いんじゃないかな。別に急ぐようなことでもないし」


  内心を一発で見透かされてしまいました。

  わたしの性格も熟知されていますので当然なのですが。


「でも、それはいつものことだし、みうちゃんがわたしにわざわざお伺いを立てるようなことしないよね?」


「仰るとおりです。行き先について相談というのは、新生と転生以外に進む先があるのかお伺いしたくて、お話しさせて頂きたく電話させてもらったのです」


  わたしの答えを聞いても、神様はわたしのことをジーッと見つめられています。

  可愛らしいです。

  そんな顔で見つめられるとわたしはドキドキして身体が火照ってきてしまいます。


  神様とご一緒させて頂くといつもそうです。

  わたしはそのお姿に畏敬の念を抱きっぱなしで、過程を表現するのも難しい感情ですが、わたしの中では最終的に『可愛い』に集約されるのです。

  ただただ存在するだけで可愛いです。

  そんな神様に見つめられると居たたまれなくなってきます。

  ソワソワしてきて身体をよじってしまいます。

  放置プレイというやつですか?

  それとも視姦なのですか?

  神様のお顔が段々笑顔になっていくのですが、それはわたしの反応を見て嗜虐心を満足させていらっしゃると思って良いのですか?

  光栄ですよ?

  わたしで愉しんで頂けるなら、これほどの悦びはありません!

  そう思うとわたしは更に熱が上がってしまいます。

  わたしはもう……触れられれば昇天していまいそうです。

  ここ以上に天国に近い場所はありませんが。

  神様はもう満面の笑みを浮かべていらっしゃいます。

  可愛いです!


「みうちゃん」


  そんな!

  溜めないで下さい!

  後生ですからこれ以上焦らさないで下さい……

  死なないわたしに後生があるのか分かりませんが。


「いつでも言ってくれたら良いのに! 1年でも2年でも付き合うよ! わたしには誤差みたいなものだし、付き合うよ!」


  ああ、そんな何度も付き合う付き合う言わないでください!

  ああ、わたしは……


「お喋りしたかったんでしょ? お喋り付き合うよ!」


  ああっ!

  わたしはクッションに崩れ落ちてしまいました……

  うつむけになり自分を落ち着かせるようにクッションにしがみつきます。


「あれ? 違った……かな?」


  神様は卑怯です。

  その可愛らしさで天然ボケをかまされては、わたしは悶絶するしかないじゃないですか。

  分かってやっていらっしゃいますよね?


「いえ、違わないです……確かにわたしは、早く神様とお話しできたら良いのに、と思っておりました」


  震える声を抑えながら、わたしは答えました。

  しかしながら神様のお言葉で楽になったことも確かです。

  気軽にお話が出来るのなら、神様とお話しすることに対して気負う必要もありませんから。


活動報告に記載しましたが、この白色転生というお話は書き直します。

ですので、一旦こちらで終了となります。


ブックマークして下さった方大変申し訳ないですが、別の話として記載しますのでそちらを読んで頂けると嬉しいです。


広告の下に書き直し作品のリンクを貼っています。


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