第6話 おかしな3人組が俺ん家に侵入!
と、何か妙案は浮かばないかと、ふと視線を庭に移す。
すると人が、いた。3人。
っていうかどちら様だよ?勝手に人の家の庭に入って来るな。勝手に人の家の敷地に入っておいて、すっげーこっちを睨んでるんですけど。そういう目をする権利があるのは、俺の立ち場だと思う。近所の人じゃないよな。見覚えがないし、第一、それぞれの服装と状況に関連性がなく、違和感を出しまくっている。
ソファから立ち上がって、窓をガラリと勢いよく開ける。おっさん2人と、女が1人。皆30歳代といったところか。男の一人は、禿げあがったスーツ姿のおっさん。女は、白衣を着ている。医療関係の人かな?神経質そうな細身で、ゲッソリと、やつれた顔だ。残りの一人の男は、スウェット姿でだらしのない印象だが、なぜか金色のアクセサリーをやたらじゃらじゃらと付けている。全員、こっち静かに凝視している。なにこれ。気持ち悪い。
ぱっと見、人ん家の庭に無断でいる状況はともかく、普通の人たちに見える。
だけど、隠しきれない何か、言い知れぬ威圧感がする。
「えーと、どちら様・・」
「その女を、こちらに渡しなさいー。悪いようにはしないわー」
OH。悪者セリフですね。よくわかります。まだ短い人生の中で、ドラマに出てくるようなセリフをよもや吐かれるとは思っていなかった。
でもこの女の人、語尾を無駄に伸ばすな。なんか常に発声練習しているみたいで、声を聞くたびに鳥肌が立つ。
「どういった用件ですか」
「もう言ったー。くどい」
問答無用の様子です。コミュニケーションがとれません、先生。
「どうしよ」
振り向きながら、真桜に聞いてみようとすると、何と彼女はリビングを這いつくばりながら逃げようとしていた。その無様な格好に脱力したが、とりあえず真桜に関係あるようだし、知っていそうだから聞いてみる。
「・・やばい奴ら?」
何も答えずに、勝手口に向かって、尚も身体を止めることなく、ほふく前進中の真桜。こっちも意思疎通できないのかよ。
「取りあえず、なんか言おうよ。真桜」
「ヤー」
「・・」
この女、ほふく前進しなきゃいけないような危機的状況でよくそんな冗談が言えるな。それとも、動揺し過ぎておかしな行動を取っているのか。どちらにしても、この状況を俺も乗り越えないといけない。
「わかりました。ちょっと支度があるので待ってください」
と言いながら、ぴしゃんと窓を閉める俺。
振り向いて、真桜の横にさっとしゃがみこみ。急いでささやく。
「おい、逃げるぞ。付いてこい」
「こ・・腰が抜けて」
「ったく、しょうがないな」
真桜の体を床から引っぺがして、無理やりおんぶする。
「ちょおっと!」
「静かにしてろ」
そのまま、真桜を背負った俺は、這いつくばりながら勝手口に向かう。ソファや家具の影になりながら、敵に悟られないように移動する。勝手口までたどり着くと、サンダルをひっかけ、真桜をおんぶし一気に逃走ぅ!これでここの密集した住宅街に身を潜めれば、敵を撒ける。地の利がある俺が勝つ!
「ぶぶっ」
「きゃー」
と、上機嫌でいるところを道路に出る直前で、顔面を強打し、そのままバランスを崩し真桜を背負ったまま転んだ。例えるなら、慌てた銀行強盗がガラスドアに気づかず、盛大に顔を打ち付けた感じだ。起き上がって目の前の見えない壁をそうっと触ってみる。何も感触がないが、それ以上、手が先に進まない。今までに体験したことがない不思議な、触っているのに何もない感触だ。
なになに?!本当に何もないのに壁がある!言っていることがおかしいが、事実、家の敷地から出られない!あり得ないだろ。
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