第21話 真桜からの罵倒再び!
「ここ、いいかな?」
一応、確認を取り座る。もちろん、真桜の近くには座らないようにする。
「あっ!かわいー。くまのパンだー」
げっ!急いでいて隠すの忘れてた。
「外見けっこう男らしいのに、乙女系なんですかー?かわいー」
「い・・いやだなぁ違うよ!妹がいてお土産にって思って。こんなむさい男がクマちゃん喜んで食べないって!!」
死にたい・・。
智明が「お前、妹いねぇじゃん・・」、と言いたげな目を向けてくる。
それを俺は無視して、智明に「あっちに座れ」、と顎をしゃくって指示を出す。智明がぎこちなく、ロボットのように移動する。あ、真桜にぶつかっている。なにやってんだよ。挙動不審すぎるぞ。
「あ、俺、弥彦っていうんだけど。名前聞いていい?」
「えっと、私は・・」
ぶっちゃけ、俺はこの女たちのことはどうでもいいので、適当に話しを聞く。あとは、ノリと勢いだけで話をつないで、聞き手に回っていく。そして、話の主導権を徐々に智明に渡すだけ・・、だったんだけど!
「えっと。・・今日は、いい天気ですね」
天気の話をするな。話術初心者か。
「え?ああ、うん」
真桜が困ったように返す。
「えっと、えっと、君の名前は?」
智明、特定の人物に話しかけてるんじゃない。あからさまにその子が目当て、って思われるだろうが!
「・・真桜、です」
「・・」
「・・」
そら見ろ。真桜だけ浮いているだろうが。あー面倒くさい!
見ていられなくて俺がフォローにまわった。
それから三十分くらいしゃべって、どうにか会話を終わらせ、彼女たちは帰っていった。メアドは聞き出すことに成功したが、問題がありすぎる。近くのコンビニ駐車場で、反省会だ。
「おい、お前ふざけんなよ!」
「ああ、幸せだった。あそこは天国だった」
駄目だ。智明は頬を紅潮させて話を全く聞いていない。このまま説明していいものか。
「お目当ての女子にだけ話したろ!お前が空気を読まないからフォローが大変だったんだぞ!」
そこまで言って初めて気が付いたかのように、智明はやっと俺の顔を見た。きょとん、としている。
「ん?何か言った?」
「もういい。頼まれても、もう二度とあんなことはしないからな」
「ああ、もう大丈夫だ。メアド聞けたし」
うれしそうな智明。
「そうなれば半分、もう彼女みたいなもんだし、な」
ふふん、と。
耳を疑うことを言い出した。とんだ勘違い野郎だ。もう、勝手にしてくれ。智明はいい奴だが、この件については、もう深入りしたくない。
「よかったな。じゃ、またな」
「ああ!早く帰って、真桜っちにメールするぅ!」
真桜っち、いうな。それにあの女はお前が思っているような奴ではない。
「・・ラーメン忘れんなよ」
さっさと自転車にまたがり、帰ることにした。
いつもながら登り坂がきついわ、と思いながら、こまくさ道路を登っていると、案の定、スマホの着信が。そして案の定、真桜だ。
「・・もしもし」
「こんっの、ナンパ尻軽男があーーーっ!!」
電話に出るや否や、音が割れんばかりの大声量で叫ばれた。
「尻軽男って初めて聞いた。・・かなり、怒ってらっしゃいます?」
「当たり前!ちょっと、こっち来なさい!今すぐ!全力で!!」
「あっ、はい!こっちってどこですか?」
真桜のあまりの剣幕に思わず敬語になる。
「図書館に決まってるでしょ!」
そう言って、一方的に電話は切られた。
あーマジですか。相当、キレてる。軽く頭痛を覚えつつ、図書館の方角へ自転車を向ける。何故かいつもより重く感じるペダルを漕ぎだした。
図書館の近くには小学校があることも関係して、下校途中の小学生が道草をして、よく遊んでいたりする。図書館の外の階段近くにある花壇のわきに、真桜がいた。自転車を止めて、腕を組み、貧乏ゆすりをしながら立っている。
薄手の白いTシャツを着て、その上から茶系のベストを身に着けている。靴はベストと同じような色したものを履いていた。紺色のスカートは、ふわっと軽やかそうな素材だ。
夜の紫ジャージ姿が、インパクト強すぎて、今の服装が信じられない。実に似合っている。なんだ、やればできる子だったな。
「あ、さっきぶりです・・」
「はやく!近くによって」
「?」
なんだろ。
真桜は、カバンの中からチケット型のあの隠ぺい結界を取り出す。手の間に挟んで柏手を打つと瞬時に結界が展開した。
周りにいるの小学生だらけだし、別に聞かれてもどうでもいい内容だと思うけど。いいのかなあ、私事に使って。後で怒られても、しらねーぞ。
「ちょっと!さっきのナンパもどき!あれは、なに!?」
結界が張られるや否や、真桜が怒りの第一声を上げる。まあ、そんなような内容を聞いてくることは想定していたけど。
「・・あー。女友達探し?」
「なんで疑問形。自分のことでしょ!それに、プライベートだったのに、何も無理して近くに来なくてもいいじゃない?」
「おう、それは俺も思った。でも、智明のやつが煩くて仕方なく・・」
「断ればいいじゃない。もう!さっきからメールとラインが鳴りっぱなしだし」
確かに先ほどから真桜のカバンの中で、着信音がひっきりなしに鳴っている。
「・・正直、すまんかった」
あのバカ。本当に空気読め。返事が来ないからって、連続して送っているのだろうか。どんだけだ。
「削除していい?」
「むしろこちらからお願いしたいです」
「アンタ殴り飛ばしていい?」
「殴るのはギリOKですけど、そのうえ飛ばすのは勘弁してください」
「あと、なんでサチに話しかけたの?あの子、面食いなんだから」
「?サチって誰」
「あきれた。ある程度は想像してたけど。弥彦、まったく興味なかったでしょ」
「そりゃそうだ。智明に頼まれただけだからな」
じゃあ、イケメン智明と面食いサチさんの方がうまくいったかも。世の中うまくいかないね。
「ほんと、最低。大迷惑よ」
「男の友情のためにやっただけだが、もう二度としない。懲りた」
「きゃべとんの友情なんて、薄っぺらいわ。まったく」
あ、聞こえてた。意外と地獄耳だな。以後、気を付けないと。
そういえば、テストの点があまり取れなかったこと、こんな話題早く変えたいし、聞いてみるか。
「ところで真桜ってテストの点ってやっぱ100点だったりする?」
「え?・・まぁインプットのおかげでだいたい90点近くはいくわね」
真桜が、(なんで急にテストの話題?)とでも言いたげに小首を傾げている。
「実はさ、今日テスト1個返って来たんだけど、65点だったんだよ。それっておかしくね?」
真桜は合点がいったように手のひらをポンと合わせた。
「それねー。私も最初の頃思った!どうして知識は頭の中にあるのに100点取れないんだろうって、ね。」
「真桜も!?じゃあ、何で思うような点が取れなかったかわかるのか?」
「うん、だいたい。私たちはインプットは完璧にされているけど、アウトプットが上手くいっていないんじゃなかって思うの。いくら知識が脳内にあっても、その知識をどういった場面でどう使うか?その知識をよく知っていないとできないよね。要は知識を使いこなせていないわけ。例えば、床が汚れていました、って時に何を使う?掃除機、雑巾、消しゴム、洗剤、いろいろあるけど、汚れによって何を使って一番きれいになるか、状況によって自分で選択しなきゃいけないよね」
「なるほど・・」
「だから知識がインプットされているからってテスト勉強をさぼっちゃいけないのよ。自分の中の知識をどういう風に使うか、ある程度、普段から練習しておかないと」
「・・」
勉強からおさらばだ!、とか思っていた俺。やっぱ、世の中そう都合よくいかねぇよなぁ・・。
しばしの間、俺は哀愁にひたる。
「後、言うまでもないと思うけれど、体験もインプットされていないから、いざ知識だけで実践してみると、いろいろ上手くいかないことがあると思うわよ。イグゼアの操縦も、ね」
そうだよな、インプットで全部済むくらいなら、イグゼアの研修も必要ないもんな。
「俺の中には、まだイグゼアの操作マニュアル類はインプットされていないけど。というか、インプットされるとき、またあのデカイ注射器のお世話になるのか?だったら、冗談きついぞ」
「それは大丈夫。もう弥彦の中にインプットする回路ができているから。酷いのはあの最初の一発だけだよ。あとは、普通の注射くらいの痛さかな?」
よかった。取りあえずそれを聞いて安心した。
「イグゼアの操縦って、俺まだ分からないんだけど、どうやって動かしているの?」
「なんとなく、思った通りに動いてくれるけれど、重要な決定は手動で操作するわ。前進するとか屈むとかは操縦桿とか無しでもできるけれど、急激な動き、例えばジャンプとかやむを得ない攻撃は、コマンドキー操作が必要ね」
ふーん。俺が思っていたのとちょっと違うな。何しろ神様が原案の神秘的な機械だから、身体とイグゼアが一体化して、自在に動く感じかと思っていた。考えていたよりちゃんとメカしているな。
「ああっ!そういえば!」
真桜が何か思い出したようだ。ニヤニヤしながらねっとりした口調で、
「弥彦さんたら、こーんな図体して可愛らしいものがお好きなようねぇ」
ギクギクッ!!
「なぁに?弥彦ったら、可愛いものが好きなの?それともくまちゃんが大好きなのぉ?」
・・再び、死にたい。
すると真桜は、カバンからピンク色のクマの顔がついたピン止めを取り出し、おもむろに俺の前髪をそれで止めた。
「そおねぇ、弥彦がこのカワイイくまのピン止め付けて、明日学校行ったら、今回の事、許してあげる」
・・殴り飛ばされた方が良かったかも。
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