第2話 ロボ発見! 俺、ダイブ!!
・・すっげー、面白そう。近くの大学生かなんかが、作ったオブジェかな?それとも三九郎?今は、秋だし、そんなわけない。
その大きく白い物体は、智明と話していたときは、見えなかった。滑り落ちて初めて見える。土手を下りないとちょうど見えない角度に隠れて見えなかったのだ。ワクワクしながら河原の中州の方を、少しずつ歩いていくと、大体の形が判明してくる。
えーと、これって、なんていうか。
「・・ロボだ」
今どき「ロボ」、だなんて昭和くさいけど、初めて見た印象は、そう思った。じゃ、なに?メカ?それも古いか。智明が「何で再放送をやらない!」、って時々テレビ局に怒っているSFロボットアニメな感じがする。アニメオタクの智明が見たら奇声を上げて喜びそうだ。俺はロボットにあんまり興味ないからよく分かんないけれど。
「うわー、よく作るよな、こんな凝ったもの」
材質は段ボールとかじゃなくて、ちゃんと金属で出来ている。今にも動き出しそうなくらい、精巧に造ってある。相当、金かけてるぞ、これ。こんなところに放置して、悪戯されないか?でも、なんで体操座り?もっとロボットなんだから、いろいろカッコいいポーズとかあっただろうに。
色々と考えながら、ロボの後ろを回り込んで、眺めてみる。
ぐにょ。
「おわっ!なんだ!?」
・・なんか、柔らかいものを踏みつけた。
コンニャクでも踏んだか?と思いながら、恐る恐る足元を見てみる。
人?女の子が倒れて・・って、おおごとだよ!しかも、お腹近くから血が出てるっぽいし!
このロボに乗っているって設定?それにしても、変なカッコ。ピッタリした服。ブルーとシルバーのストライプっぽい模様。コスプレっぽい感じが、何とも言えない。ロボの次は、そのパイロットかよ。変に作り込んでいることもあって、なりきり感が痛々しい。でも顔立ちは整っている。身長は平均、体は小柄。ボディラインが出ている服だからよく分かる。出血しているお腹当たりの服が破れて、片手で抑えている。
「おい!・・・おい!!」
あ、なんか、ダメっぽい。なんか、全然返事しないし。・・まさか、死んでないよな?
すっかりビビってしまい、後ずさりして、よろけたところロボットにぶつかり、そのままもたれ掛かる。ロボの硬質な感触が背中に感じる。
すると、なんか、「がしっ」、と。
つかまれた。俺が。
腹を、横抱きに。
「え、うそ」、と思いながらも、恐る恐る横斜め上を見る。
さっきのロボが。
「うごいたーーー!!」
そう。動いて、片手で俺の脇腹を抱え込んでいた。そのうえ、目?があった気がする。
「・・ぎゃーーー!!」
とりあえず、悲鳴を上げてしまっている、俺。そりゃびっくりするよ!今まで全く動かなかったロボが、いきなり動き出して俺に掴みかかってくれば。
と、焦っていると。
「あれ?」
止まった。
「・・とれねーし!」
逃げるなら今だ、とばかりに、ぐいぐいその手をこじ開けようとしても、開くどころか少しも動く気配のないロボの手。ガッチガチのロボの手から脱出しようと焦りながら、今更ながらロボの手の不思議な感触に驚いていた。なんだろう、質感がよく分からない。カチカチで堅いのに、鉄っぽくない。ひやっとした冷たさではない、敢えて言うなら陶器みたいだな。でも初めての手触りだ。
なにか、他人事のように考えていると、そのまま後ろ向きにロボが倒れていく。
俺を掴んだまま・・。
「おいおいおいおい!!」
ずるずると、引きずられるままに当然、俺も体ごと持っていかれる。
川の中に。
「あ¨―――!!」
ふざけんな!、とか、意味わかんねーし!、とか、あまりの事態に対応することができない脳がそんな役に立たないことばかり考える。抵抗することもできず田川の中に、入りたくもないのに派手にダイブしてしまった。今日は比較的暖かいとはいえ、それは陸の上の話で、川の中は全くもって別である。
「ひっ・・」
つ、つめたっ!体がひきつるのがわかる。
とりあえず、逃げようとロボの指を引き剥がそうとするけど、先程と同様、全然取れる兆しもない。全く抵抗できぬままに、川底に沈んでいっている気がする。
・・あ、やば。
全身が強張っていく。そして、ボーっとしてくる。これが、意識が遠のく、ってことなのか?なんて無意識に漂っていると、ロボが突然立ち上がった。
ざばばーーーーっ。
そのまま、川の中に直立不動になるロボ。俺は脱力しながらおもちゃの人形のように、ロボに片手で握られたままである。秋の日の川に突っ込まれた俺は全身ずぶ濡れで、濡れた衣服は見る見る内に俺の体温を奪う。もう、寒すぎて身動きもとれない。ダラーンと、ロボの指にもたれかかっている。
すると、視界の中に人が見えた。
え、なに?
頭がふらふらするが、視線だけそちらに向けると、
おっさんが宙に浮いていた。
かなり禿げ上がった感じのする、異様に目つきの鋭いおっさん。
もう、何でもありだな。空中浮遊おっさんまで出てきた。あまりの脈絡のない頓珍漢な出来事に気持ち悪さを覚える。早く帰りたい。
そんな素っ頓狂な状況にうんざりしていると、ロボが動き始めた。ぐぐーっと、しゃがんだ感じ。
すると、―――大ジャンプ。
やっとめでたく、
俺は、意識を失った。
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