第13話 秘密機関の所属になりました
「なに!?」
俺が急に大声を上げたことに、驚く真桜。
「あしたテスト!」
「・・なあんだ」
真桜は飲みかけのジュースを忘れてた、くらいの呑気さで言った。
「ことは緊急を要する!まずいぞ!ここはひとつ、担任の家に突撃して、答案用紙を拝借して・・」
「落ち着いてよ、おらおら」
真桜は、いつの間にか手に持っていた警棒で俺の頭をぐいぐい小突いてきた。
「いてーよ!」
「よく考えてみてよ。ほら、大丈夫だから」
「え?」
えーと、明日のテストは古文と微積分と・・。
「おわー!!すげー!・・・すげーよこれ!!」
「相変わらずうるさいわね」
言っている言葉とは違って、自慢気に胸を張る、真桜。
そうだ。知覚インストールシステム。
組織の知識と一緒に、一般教養という形で、大学院卒程度の知識が、俺の頭の中に入っていた。
「これを早く言えよ。むしろ進んで改造されたわ」
「まあ、解る気もする。私も、あんまり勉強する気、ないし」
「・・お前見た目によらず不良だな」
正に暗記要らず。全国の高校生、いや、全人類が望むであろう、知識の詰め込み。テスト対策は、もう要らないんじゃないか?
「うっひょひょー、最高!」
「ちょっと、静かに!笑い声きもい!」
やべ。真桜のディスりも全く気にならないほどテンション高くなりすぎて、小躍りまでしてしまった。
松本城の、道路を挟んだ東側の建物。
県庁所在地でないのに、この市には何故かある白く冷たい石造りの日本銀行。その裏口から俺と真桜が出ていく。
「こんなところに秘密の組織が、あったんだなー」
思わず3階建ての建物を見上げる。
「普通、気づかないよね。地下へのエレベータも隠してあるから普通の来館者は、地下があることさえ知らない」
どういうわけか、俺と真桜の所属する、内閣情報調査室松本支部、第二準備係は、日本銀行の地下にあった。正確には、地下部分を間借りしている。この日本銀行に地下の階があることは、秘密だそうだ。
「うちの係だけらしいよ。日本銀行にあるの」
「そうなんだ」
もちろん、全国にこの調査室はあるが、他の支部は日本銀行の内部にはない。日本銀行の地下、という限定された場所だと、特定されて襲撃されるしな。
「帰る、か」
「じゃあね。私、こっちだから」
「送ってくか?」
「襲われたら嫌だから」
真桜が悪戯っぽい声で言ってくる。
「またそのネタかー?お前、取りあえずレバー喰って血増やせよ」
つい、3、4時間前の出来事が凄く昔のものに感じる。
「またね。明日から2人で怒られよう」
「やっぱり怒られるの前提かよ!?」
俺は忘れてしまっていた自転車を取りに行く。あー、面倒くさい。微妙にここからだと距離がある。まあ、今日の出来事を整理するには、いい距離かもしれない。
あの昼間の出来事があった河原の方向に歩き出すと、夕飯時なのか、冷たい風に乗って食欲をそそるいい匂いが漂ってきた。あー腹減った。
空を見上げると、すっかり日は暮れ、秋空特有の突き抜けるような高さを感じる空に、まばらな星が瞬いていた。
毎日17:00頃、更新しています。




