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天使が正義でなきゃいけないと誰が決めた?  作者: 上七川春木
世界を覗く深淵編
5/16

5 二度目と不穏な街

読んで下さりありがとうございます。

活動報告でも書きましたが、この話から投稿の時間を18時にしたいと思います。よろしくお願いします。


そして、次はもっと長くなるといったな、あれは嘘だ。


もっと長くしようと思ったのですが、書く時間が取れませんでした。すみません。

次回こそは、もっと長くしたいです。


 光が収まるとそこは、先ほども召喚された都会だった。

 夜のオフィスビル群。天を突くような摩天楼は、その先にある星々にその身をとどかんとばかりにくうに伸びていた。

 そしてその空間に先ほどの召喚時と同じ違和感。

 天空の星々が多く肉眼で観察することが可能ということ、つまりこの場には科学文明の象徴ともいえる人工の光たちが姿を消し、天を除けばその目の前には暗闇が広がるばかりであった。


 召喚されたその正面、暗闇に煌々と光る赤があった。しかしそれは希望というよりは絶望の世界の住人に拠っているものであろうことは容易に想像がついた。

 身体は流動したマグマように赤熱し、相手を地獄にでも誘うかのような一本の手と腕をかたどる。その身には怨念を具現化したような粘り付くような炎を纏い、アスファルトを赤黒く照らしていた。手の平には大きな眼球がギョロリと剥き、本来白色をしているはずのその球体は赤と黒に侵食され、あらゆる怨みと憎しみ、負の情念を凝縮したような視線をこちらの方に垂れ流していた。


 空気をも蝕み、空間を侵食しようとするその赤は、こちらをその目で捉え今にも取り込み食らい尽そうとしているように見えた。


 なにこれ聞いてないんですけど。


 後ろを覗うと、すぐ前にも自分を召喚したスラリとしたスーツを纏った青年がいた。


 テメェが呼びやがったのかこの修羅場に、と口調が崩れるほどの恨みを抱く。

 先ほどまで強制召喚にノリノリだったのに、やはりエライ変わりようだった。


 面倒くさいことは大嫌いだが、これはそれ以前に命の心配をする必要のある問題だったからだ。

 一目でわかってしまった、コレが自分が逆立ちしても倒しようのない存在だということが。


 しかし危機的状況を中でも、青年は冷や汗こそ流してはいたが、それほどの危機感を抱いているようには見えなかった。


 おそらくその理由は、自分と同じくこの青年に召喚されたと思われるモンスターの存在だろう。

 全てが水で構成された女性だった。背丈は青年と同じくらい、目だけはその形をとっていたので位置を把握できたが、口や耳に相当する器官はその顔に描かれていなかった。

 体を構成している水もまた不思議な存在だった。無色透明でもなければ汚泥に汚れているわけでもない。色の濃いアクアマリンのような色合いの水が暗闇の中でも淡く輝いていた。


 いくつもの体と同じ色の水の帯を纏った水の女性は、青年の命令に従い赤黒の手に攻撃を開始する。


「いけッ、あいつを倒せッ」


 次の瞬間、水の女性が放った水のベールを赤黒の手が可視化したような赤の陽炎で迎え撃った。


 青年は顔を強張らせつつも、戦いが水の女性が徐々に優勢になっていくのを見て安堵しているようだった。


 僕も自分の命が無くなることはどうやらないようだ、と安心して戦いを見守りながら、だとしたら何のために呼ばれたのかな、と思った。


「お前は光をだせ」


 デスヨネー。なんとなくわかってましたとも。

 僕はスキル「光をルクス」を使って青年の周囲を照らした。


 戦いは当初の通り水の女性の優位に展開しているが、相手を倒すのにもう少し時間がかかりそうであった。余裕が出てくると、当初の目的を果たしたいという欲求がだんだんと膨れ上がってくる。即ち、レベル上げである。

 しかし、今あの戦いの中に自分が飛びこんだらおそらく秒でお陀仏確定。天使がお陀仏はおかしいということには触れないでおくことにして、どうにかしてレベルを上げたい。


 どうするか……


 んー、もしかしたらサポート経験値みたいなのが貰えるかもしれないし、検証もかねて援護をしようかな。


 とはいっても、その結果自分にヘイトが向くのは御免である。召喚者である青年の目もあり、いきなり命令外の行動を取ったら問題があるだろう。

 そこまで考えると、僕はラッセルさんに助言に従い取得した「魔法使い」の職業アビリティのスキルである「理術系魔法」を使い、付与魔法の〈魔気微活性タイニー・マギ・アクティベーション〉を水の女性にかけた。

 これは対象の魔力を僅かにではあるが活性化させ、魔法系統の攻撃の威力を上昇させる付与魔法である。


 〈魔気微活性タイニー・マギ・アクティベーション〉をかけた瞬間、水の女性がこちらをチラリとみたような気がしたが、気にしてはいけない。


 青年は僕が付与魔法を使ったことに気づいてはいないようだ。少しホッとない胸をなでおろす。


 付与魔法をかけたこともあってか、しばらくして水の女性は赤黒の手を倒し青年は安堵の息を吐き、僕はレベルが上がったかどうかステータスを確認した。

 すると、「魔法使い」アビリティのレベルが2から3に上がっていることが分かった。僕はない口を歪ませ、次もこの方法でレベルを上げることにしようと決めた。

 戦いが終わって青年のもとに帰ってきた水の女性が僕のことをじーっと見ているような気がするが、気にしてはいけない。


 しかし、今までは戦闘の轟音で気が付かなかったが、どうやら他の場所でも多くの戦闘が起こっているようだった。周りには数えきれないほどの戦闘音が響き渡っている。


「どうなっているんだ、これは……」


 青年は呟き、もう一言二言口の中で言葉を話すと、クルリと回り赤黒の手がいた方とは逆の方向に歩き始めた。水の女性はそれに従って歩き、僕も青年の周りを照らしながら青年に付いていった。


 この間も水の女性が僕のことをじーっと見ていたが、気にしてはいけない。


お読み下さりありがとうございます。

設定の不備、誤字脱字等ありましたらご報告よろしくお願いします。

感想、意見などをもらえたら嬉しいです。

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