2 これからのことと、聖者降臨
2話目です。
読んで下さりありがとうございます。
今回はちょっとした説明回になっています。最後の方は早く成長パートに入りたくて結構適当になってしまったので、変なところがあるかもしれません。
説明回書くの結構苦手のようなので分かりにくかったらすみません。
転生してから実に一か月がたった。ただ感覚の話なので、もしかしたら一週間かもしれないし半年かもしれない。ただ、それはあまり問題ではない。今問題なのは、とても暇だということだ。
あっちに行こうがこっちに行こうが、光り輝く長身の大樹と様々な色の光の粒。
ふわふわと浮いている同族たち。
代り映えのしない景色に僕はもう、うんざりとしていた。
転生してからというもの、僕は食料、水などというものは一欠片、一滴も摂取してはいないが、この体にはそのようなものは不要のようだった。腹の減らないし、のども乾かない。
この変な光の玉に生まれ変わって、これだけはよかったのかもしれない。
しかし、これは逆に食べ物を味わうことができないということでもあるので、それは残念でもある。
そうとしても、これほどまでに木、木、木。光、光、光では飽きがまわってくるのも道理だろう。神秘的だはあるのだが、人であれば発狂してもおかしくはないはずだ。
最初は気の赴くままにふよふよと浮かんでみたり、草をかき分けながら転がってみたりしたものだが、それも長時間していれば飽きてしまう。
そして、だんだんと時が経つにつれて人恋しくなってくる。今でこそ天使という種族であるが、もとは人間であったことの弊害なのか、それとも天使もそうなのかは定かではないが、とても人恋しくなってしまっている。
だったら、遠くに人影のようなものが見えたとたん、そちらの方に素早く向かってしまうのもまた道理ではないだろうか。
ということで、僕は突然見えた人影向かって弾き飛ばされたように飛んで行った。
転生してから初の人影である。こんな変な場所に現れて何者だろうかとか、雑魚の自分が害されないかの心配など、冷静に考えれば躊躇してしかるべきなのだが、今の僕にはそんなことを考える余裕など微塵もありはしなかった。
僕が力を振り絞って出来るだけ早くと思い近づいていくと、人影の方から声が聞こえた。
「ここに来るのもお久だけど、全く変わんねえなぁ……」
その人影は何か喋っていたが、重要なのはそれが人ではなかったことだった。
きちんと視界に入ったそれは、人間大のロボットとでもいうべき姿だった。
しかしそれには機械臭さなど一つもなく、全体的に引き締まった細身。外殻の全身鎧のようなパーツは流線を描き、全体をシャープに見せていた。全身に入った青白く輝く溝のラインはその体を神秘的なものにさせ、同じく青に輝くサファイアのようなひし形の瞳はその意志の強さを覗わせた。
その白と銀の中間のような色合いのボディに、しかしそれが前座だとでもいうべき彼の象徴としか思えぬ圧倒的存在感を放つモノがその背中にあった。
純白の翼。
淡く光り輝くようにも見える、その大きな翼はこの場の幻想的な景色と一体となり、絵画の一場面とでもいうべき一枚絵となっていた。
小さな光の粒たちと混じりあり、祝福されたとしか思えぬその姿に、僕はブレーキをかけることも忘れそのままその姿めがけて突っ込んでいってしまった。
するとその人物は驚いたように腕をワタワタと動かし、次の瞬間、僕のことをパッとキャッチした。
「――ぬおッと、なんだよいったい。やんちゃな奴だな」
僕はおそらく彼、の言っていることなどきにせず、言葉を放った。
「……あ、あなたはいったい……」
「…………んあ?」
彼は間抜けたような声を出し、そして数度首を振るとコリコリと頭を掻いたのだった。
◇◇◇
そのあと、自らのことをラッセルと名乗った彼は、地面に座ると自身の隣に僕を誘った。
「お前、名前は?」
「……あ、ありません」
気後れしてしまう僕は、これは人と会っていない一か月の弊害かと思った。しかし、よく考えてみれば前世も人と話すのはそれほど得意ではなかったし、超常的とも言える彼と話すことに気後れと緊張を抱いてしまうことは当たり前だと、それこそ気後れと緊張でいっぱいいっぱいの頭の片隅で、わずかに考えを巡らせていた。
「ン~、まあ生まれたばっかなら当たり前か。それにしても、こんなナリで知性を持った奴なんか初めて見たぜ」
「は、はぁ……」
ラッセルは頭を掻くと、再度僕に話しかけてきた。
「いや~、お前がいきなり話しかけてきたときはビビったビビった。まさかこのオレっちも会話できる奴がここにいるとは思いもしなかったからなぁ。それで、なんかオレっちに聞きたいこととかあるかい?」
「き、聞きたいことですか……」
会話できるなんて僕自身もビックリしたけど、なんで口もない僕がしゃべることができたのか、ラッセルは教えてくれなかった。「変なこと気にするやつだな。しゃべれたらしゃべれたでいいじゃねぇか」と言われた。もしかしたらラッセルもその原理は知らないのかもしれない。
ラッセルが何を話そうと思っているのか。自分が彼に何を聞くべきなのか分からず黙っていると、彼は頭をコリコリを掻き、そして納得したかのように頷く。
「あ~、そうか。何を聞くっつうか、何を知らないかも知らない状態だもんなぁ。悪かったな。じゃあオレっちが教えてやるよ、この場所の事とか、外の世界の事とか、あとオレっちの事とかな」
ラッセルはそう言うと、一拍おいて僕にこの世界のことを話し出した。
「え~とだな、まずここのことだな。ここは天使族の中じゃ聖地って呼ばれてる場所の一つだ。天使族っていうのはオレっちやお前の種族のことさ。種族っていうのは魂を持つモノ、つまりオレっちとかお前みたいなやつのことだな。
外の世界にはオレっちやお前とは違う別の種族ってもんがいるんだが、それは追々話すってことで、ともかくオレっちたちの天使族っつう種族が新たに生まれる場所を、天使族が自分たちの聖地ってことにして守っているわけだ。それはもうオレっちなんかより遥かに高位の天使たちが結界を張って、天使族以外がこの地に訪れることを封じてるから、この場所には誰一人として入ってこれねえよ。仮に入ったとしても一瞬で馬鹿みてえに強え天使に囲まれて袋叩きで殲滅だ。そもそもそれに怖がって、近づこうとするやつさえ皆無だかんな。
外の世界はだなあ、こことはまるで違う場所がいっぱいあんだよ。木がいっぱいの森、水だらけの海って場所や、木がなくて一面草だらけの草原ってとことかな。まあ、ここで聞くより見た方がよっぽど早いから、外に出歩けるほど強くなってから見てみることだな。
あと種族っつうとやっぱ人間のことと悪魔だな。人間っていうのは二本の足に二本の手、二足歩行してある程度の理性と知性、そして命を完全に肉体に依存してるやつらのことだ。
まあ難しいことはほっといて、そんな感じだと適当に思っとけばいい。人間にもいろいろ種類がいてな、人族、獣人族、魔族とかな。あいつらは巨大な繁栄圏を持っていてな、とくに人族は狡賢くて有名だから気をつけろよ。
んで、悪魔族だな。あいつらは天使族と大昔から犬猿の仲で、互いに見つけたら殺すか殺されるかってもんだ。だから弱いうちは絶対に見つかるなよ? もし見つかっても一目散に逃げろ。そうした方がいい。じゃなきゃあ殺されちまうからな。
あとはオレっちのことだな。オレっちはお前より高位の天使族だ。名前はラッセルだ。イカしてるだろ?んで、ここにはまあ、久しぶりに故郷に拠ってみるのもいいと思って来てみたわけだ。
そんでお前に会えた。面白いことに出会えてうれしいぜ、オレっちは。
オレっちはいろんなところを旅してまわっててな、冒険してるんだよ。それが好きでな。
まあオレっちのことはこのくらいでいいだろ。
ここで出会えたのも何かの縁だ。そうだな、まずは強くならなくちゃ何も始まらねえから、強くなる方法を教えてやるよ。
まずはステータスってもんがあるんだけどな。どう説明したらいいもんか……
ん? だせる? まじかよ、すげーな。ステータスって出すのに結構コツってもんがあって、出せるようになるまで時間かかるんだぜ?
なら時間短縮だ。まずステータスには名前があるだろ? そこは自分で付けられるから後で付けたらいい。ちゃんと考えろよ? 一回つけたら基本変えられないからな。
次は種族だな。たぶん古代の光球ってでてるだろ? 古代の光球っていうのは最下級の天使族のうちの種族の一つで、特に魔法が得意な種族だな。
使える魔法だったり、特性だったりはアビリティを見ればわかるんだが、たぶん「最下級天使」っていうアビリティがあるだろ? そこの情報みればわかる。んで、強くなる方法なんだが、そこのレベルを上げる一択だな。「最下級天使」のレベルを最大にすれば「下級天使」っつうアビリティが手に入ってアビリティの総合レベルの上限も上がる。いわゆる進化ってやつだな。基本それを繰り返していって、「最下級天使」から「下級天使」、「中級天使」、「上級天使」って上げていくわけだ。ちなみにオレっちはそれより上のクラスだぜ? んでこのレベルを上げるにはだ、ここにいっぱい光の粒があるだろ? これは聖力と霊力の欠片でな、たくさん取り込めばそれだけでレベルアップできっからまずはそれからだな。
あと、それと他にも職業アビリティってモンもあってな、基礎的なもんならステータスから取得できっから取っとくのをオススメするぜ? 取りすぎないように注意しろよ? まあ、職業アビリティは他のアビリティと違って簡単に取り外しできっから大丈夫だとは思うけどな。
あと最後の称号はな、まあ簡単に言うとスゲーことすると勝手について、その称号の名前にあった力がちっと増すんだ。あくまでちっとだから、そこんとこ気をつけろよ? ちなみにオレっちは持ってるぜ? いいだろ? まあ、そんなとこだな。ほかになんかあっか?」
僕はラッセルさんが言ったことを一つ一つ頑張って憶えていった。そしてこのあとやることを決めていった。時間はこの間にだいぶ経っているはずではあるが、この場所——ラッセルさんのいうところの聖地――の明るさは全く変化がなかった。ここはそういう場所だ。
「いえ、大丈夫です。いろいろ教えていただいてありがとうございます」
と言って、僕は頭を下げるような仕草をした。
「やめろよ、照れんじゃねえか。礼なんかすんな、オレっちがやりたくてやってることなんだからよ」
ラッセルの言うことはもっともかもしれなかったが、そうは思えずもう一回頭を下げようとすると、突如として、ラッセルの足元に青く光り輝く魔法陣が出現し、ラッセル自身の体も青く光りだした。
僕は突然のことに狼狽えることしかできなかったが、ラッセルは苦笑いでもしたかのような雰囲気になり、僕に言った。
「あー、そういえば言ってなかったな。魔法っつうモンの中には召喚魔法ってモンがあってな、オレっちには契約してる魔法使いがいんだよ。それに呼ばれちまったみたいだ。召喚魔法ってのは面白くてな、こことは全く別の世界に呼ばれちまうこともあるらしいぜ? んで、これが大事なことなんだが召喚には二つの種類があってな、強制召喚と契約召喚だ。強制召喚ってのはその名の通り、被召喚者の同意なしで召喚しちまうもんで、自分よりよほど低位の存在しか対象にできないが、行使者の命令には絶対服従になっちなうから気を付けろよ。早めに強制召喚されないぐらいの強さにならないと早死にするぜ? まあそうだな、あと3回進化すれば一先ずは大丈夫じゃねえかな。契約召喚は被召喚者と行使者が対等な契約を結ぶようになるから問題ねえけどな」
この情報は今の僕にとってはとても重要なものだろう。早死になどごめん被る。3回の進化で一先ず大丈夫だとするなら、5回くらいは進化しておくべきだろうか。それと、魔法陣が浮かび上がってからだいぶ時間が過ぎているが、まだ召喚されないのだろうか?
「あー、オレっちの契約してる魔法使いはまだまだ未熟でなぁ、結構召喚に時間かかるんよ。」
「そうだったんですね」
未熟とはいってもラッセルさんと契約できるほどの魔法使いだ。いったいどれほどの魔法使いなんだろうか。
するとラッセルの足元の魔法陣が輝きを増し、直視できないほどの光を放った。そして最後にラッセルは言葉を投げかけた。
「んじゃまあ、さいなら。お前と会えて結構楽しかったぜ。また会うときを楽しみにしてるからよ、失望させんじゃねえぞ。あ、それとあと結界の外へは2回進化すんまで出んじゃねえぞ。魔物に殺られて死んじまうからな」
それだけ言うとラッセルは虚空へと消えていった。その後には魔法陣の青い光の残滓と、ラッセルの座ったあとの丸い形に押し曲げられた草の跡だけだった。
◇◇◇
それをしばらく見つめた後、彼と話をしていた光の玉はこれからやることを頭の中で反芻しながら、その場から去っていった。
しばらくののち、その場所には他の場所と何ら変わり映えのない景色が映るだけだった。
読んでいただきありがとうございます。
もし説明で分からなかったところなどがあったらお聞きください。説明と改稿をしたいと思います。
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