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吸血姫百合物語  作者: doLOrich
第2章 有栖川領
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第2章プロローグ「触れられる肌、目覚める朝」

お久しぶりです。ゆっくり第2章投稿していきたいと思います。


あと肌色率高めな挿絵あります。苦手な方は挿絵オフにしてください。

「ねぇ、ユアン……」


 カルミラがそう呼びかけてきたのは、熱すぎることもヌルすぎることもない心地良い温泉に浸かり、ぼうと空を見上げていた時だった。

 すぐ横に座っているカルミラの方へ顔を向ける。カルミラの頬はほんのりと赤らんでいた。

 カルミラはユアンの足を跨ぐように座り、ユアンと身体を触れ合わせる。

 そこまでして、ユアンはカルミラが何を望んでいるのかを察した。


「ミラぁ、ベッドまで待てないの?」

「据え膳を食べないのは失礼というやつよ」

「すえぜん? 難しい言葉使うとわかんない」

「誘われてるのに、食べないのは失礼ということ……」


 別に誘ってない、とユアンは口にしようとしたがその前にカルミラの顔がユアンの顔に近づいた。


「ねぇ、ユアン。いいでしょ……」

「嫌っ。……ここで吸われたらのぼせるもん」

「手加減する。――――――我慢できない」


 背中に手を回されて、耳元で優しく囁かれる。そんな声で求められると、嫌とは言えない。

 幸か不幸か今温泉は二人きりだった。

 コクリと一度だけ頷いた。

 ニヤッ、とカルミラの口元が緩み鋭い犬歯が垣間見える。


 頭に巻いていたタオルが解け、長い髪が湯船に浸かる。小さな罪悪感を覚える前に、カルミラの口元が首筋に近づき


 かぷっ


挿絵(By みてみん)


「んっ……」


 何度もされて慣れた痛み。その後にクラっとくるいつまでたっても慣れない快楽。

 ゴクゴク、と血液を嚥下する音が耳元で聞こえる。


「はあっ……んんっ……」


 喘ぎ声が漏れる。首元から熱が広まり全身の魔力が震えだす。それと呼応するように身体中が敏感になり、肌が触れ合うだけで心地よい刺激が生まれる。

 そんな快楽に耐えるため、自ずとカルミラを強く抱きしめる。

 カルミラの絹のような肌が心地よい。温泉の匂いの中にカルミラの匂いが鼻腔をくすぐる。


「……ぷはっ。はへへ、やっぱりユアンの血は絶品……」

「……なんか……慣れた?」

「ユアンの血を吸い始めて二ヶ月以上は経ったからね。だいぶ落ち着いて飲めるようになったよ」


 口元を緩ませ得意げに微笑むカルミラを、ユアンは面白くなさそうな顔で見返す。なんだか自分だけがいつまでたっても吸われることに慣れずに気持ちよくなっていて負けた気分だった。


 ユアンのそんな想いを知ってか知らずかカルミラは、物欲しげな吐息を漏らしユアンに再び顔を近づける。


「ねぇ、もっと吸っていい?」

「………………どうぞ」


 既に吸血される快感の虜になっているユアンに断る理由など存在しなかった。せめてもの抵抗としてできたのは、素っ気なく返事することくらいだった。


 最近のカルミラは吸血する時に余裕が出来たのか、空いてる手でユアンの身体を触ってくる。背中に回した手で撫でてきたり、ユアンの黒い髪を解くように触ったり……。ぷにぷにとお腹を摘まれた時は流石に怒ったが、それ以外はユアンはされるがまま受け入れていた。


「……ユアン」

「……ふにゅ? どーしたの?」


 吸血の快楽でとろっとろにされてしまい呂律が回らない。そんなユアンにカルミラは一つの疑惑を投げかける。


「もしかしてユアン……妾より胸大きい?」

「…………んにゃ〜、お姉ちゃんからも成長した? って聞かれたよ。多分成長期なんだよ」


 吸血鬼になってから成長の止まったカルミラ。400年変わることのない自分の胸部とユアンの胸部を比べ、ぐぬぬ……っと悔しそうに顔をゆがめる。


「ねぇ、ユアン吸っていい?」

「さっきからずっと吸ってるじゃん」

「いや、血じゃなくて……」


 そう言いカルミラが指差す先。

 やや膨らんだユアンの胸の頂点。淡いピンクに染まった部分。


「………………正気?」

「もち。出来れば血液も一緒に」

「嫌っ。それ絶対痛いから!」

「じゃあ、舐めるだけ! ユアンの膨らみかけなソレを舐めれば妾の絶望的なココが膨らみ始めるかもしれないね!」

「いやいや、流石にないよ」


 全世界びっくり超絶理論を展開するカルミラに頭を抱えたくなる。

 とりあえずこの場から逃げようと思い、ユアンは温泉から上がろうと立ち上がる。


 ――が、カルミラは獲物を逃さない。


 ユアンの手を掴み引き寄せると、もう片方の手も拘束する。

 カルミラの長くて透けるような金髪がうねるようにユアンにまとわりつき、その身体を動けなくする。ユアンは必死に抵抗するが、全くと言っていいほど、動けない。


「えへへ〜、いただきまーす」

「ちょっ! ミラ! やめっ……」

 


 ゆっくり、ゆっくりとカルミラの口がユアンの胸に近づく。



 口を小さく開けてユアンの小さなそれを――――







 暑苦しさに目が覚めるとそこには知らない天井。

 カーテンの隙間からは明るい日差しがベットまで差し込んでいた。

 夢うつつの眠気まなこを擦りながら、今見ていた夢をユアンはリフレインする。


(昨日いっぱい血を吸われたから、へんな夢見ちゃった。いくらミラが変態でもおっぱいを吸いたいなんて流石に夢だよ)


 首元に手を当てる。もうそこには傷跡一つ残ってはいなかったが、指でその場所を触れるたびに記憶がチラつき身体が熱くなる。

 チラリと同じベッドで寝ているカルミラに目を向ける。満足そうにムニャムニャと眠るその顔の頬をツンツンとつついてみる。朝弱いカルミラはその程度で起きることはなかった。それに昨日の昼間は、鹿島領からこの有栖川領に来るまでずっとはしゃぐユアンの相手をしていて疲れが溜まった、という理由もある。


(温泉……気持ちよかったなぁ)


 人生初の温泉。カルミラと二人きりだったがとても楽しめた。本当は他にも人が入ってるらしいのだが、ユアンとカルミラが温泉に入ったのは夜遅くの閉店間際であったため二人じめ出来たのは運が良かったのだ。

 温泉は家のお風呂とは桁違いに大きく、バシャバシャと泳げるほどだった。それに温泉特有の香り。不思議なあの匂いをユアンは気に入った。


 ベッドから身を起こし、カーテンを開ける。強い日差しが部屋に差し込んできた。

 窓を開けるとあの温泉の匂いに混じって海の匂いが部屋に入って来た。


「すっごい」


 窓からは有栖川領の邦都を一望できる。

 綺麗な赤を基調とした建物。赤い柱に赤い装飾。蓮華皇国の影響を受けた建物が朝日を照り返しながら立ち並んでいる。そして、その彼方にはキラキラと輝く海原が広がっていた。

 夜になると建物たちは、『光球』によって赤く輝き不夜の都市へと成り変わる。昨日、魔導列車から降りて見たそれらは、故郷で見た夜景に勝るとも劣らない素晴らしいものであった。

 建物の下を覗き込むと、横に広い橋を独特のゆとりのある服――カルミラ曰く有栖川の民族衣装らしい――を着込んだ人達が足繁く行き来している。


「……うぅ、ユアン眩しい……」

「あぁ、ごめんごめん」


 布団にうずくまりながら苦言を漏らすカルミラにすぐ謝り窓とカーテンを閉める。

 ユアンはとりあえず寝巻きから着替えることにした。適当なワンピースに着替え、脱いだパジャマを洗濯カゴに放り投げる。この宿では洗濯カゴに入れておけば従業員が取りに来て、夜には洗濯されて帰ってくる。


 クシで寝癖を整えて顔を洗う。

 ふと、机の上にある『保温魔法』の魔法陣が刻まれたポットが目に入った。それを手に取り、コップにほんの少し注いで見る。

 湯気を上げながらポトポトと注がれた真っ黒な液体を見てユアンは首をひねる。


「なんだろ……これ」


 鹿島領でよく見る紅茶とは見た目が違う。

 クンクン、と鼻を近づけてにおいを嗅いでみる。

 淡く芳ばしいようなよく分からない匂い。でも何となく苦そうな感じ。

 口をつけてほんの少し含んでみる。


「……うげぇ〜」


 あまりの苦さにとても女の子が発していい言葉をは思えない声が漏れる。

 子供の舌にはコーヒーは早すぎたようだ。

 それでも何とか注いだ分を飲みきる。


「口の中が苦い……」


 口の中に残るコーヒーの苦さを打ち消すため、小さな入れ物に入っている砂糖を指につけてひと舐めする。それを何度か繰り返す事で苦味を中和した。


 時計を見ると朝と昼の間くらいの時間だった。さて、どうしようかなぁとユアンは考える。カルミラは日が沈むまでベッドから起きることはない。カルミラからは一人で遊んできていいと、言われていた。


「ミラぁ、お外行ってくるー」

「…………りょーかい。何かあったら『指輪』を使って……」


 布団から手だけ出してそうカルミラは答える。『契約』によって繋がっている二人の指輪は互いの危険を知らせ合う。

 先月起きた誘拐事件でも活躍したその右手小指に付けた指輪を軽く握る。

 正直言えばカルミラと一緒に有栖川を見て回りたかったが、目の前で猫みたいに布団で丸くなっている吸血鬼が夜行性であり、昼間は寝る時間である事は十分知っている。

 それでも少し寂しく感じる。


「……夕食は一緒に屋台に行くからお腹減らしておいてねー」

「ん! わかった!」


 とは言っても、日さえ沈めばカルミラとの時間も十分に楽しめる。カルミラとの夕食を楽しみにしながら、ユアンはお金が少し入った財布をポケットに入れて部屋を出るためにドアノブに手をかけた。


「あぁ、そうだった。『幻魔』!」


 自分自身に存在をごまかす『幻魔』をかけた。鹿島柚杏は世間的には存在してはならない。鹿島家の血筋は他の四大貴族と違い、黒髪黒眼と一般的な大東亜人の見た目と同じため、見た目で鹿島家の人間である事がバレる事は万が一にもない。しかし柚杏の四大貴族レベルの魔力(実際にはそれ以上)から関係性を疑われることは十分にあるのだ。だから柚杏は外を歩く時は『幻魔』をかけて一般人に偽装する必要があるのだ。それが、この旅を許してもらった約束のうちの一つ。


「……うん、完璧かな。ではでは、いってきまーす!」


正直言うと、肌を塗りたかったから最初のシーンを入れましたごめんなさい。夢オチですいません。

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