第十一話 ヤキモチ?
冬です。
改めて言うことでもないけど、夕方から降り始めた雪は積る予報だった。
あまりの寒さで、目を覚ました私はそっと窓を開けてみる。
一面の雪景色に圧巻。
しんしんと雪が降る中、トコトコと猫が歩いて来るのが見え、思わずクリと叫んでしまった声が、思いがけない反響に、口を押さえる。
呑気にピョンピョン跳ねてみたり、転がって見たり、まるで子供がはしゃいで遊んでいるようで、クスッと笑ってしまう。
散々遊びまわったびしょ濡れの猫が、私を見上げてミャーミャーと、入れてくれと騒ぐ。
手がかかる猫だこと。
タオル片手に玄関を開けてやると、澄まし顔で入って来る。
「あんたね、こんな夜中に何してんの? 私が気が付かなかったら、凍死するところだったんだから」
「それはない」
きっぱり言い切った猫に、どこから来るのその自信、とタオルでごしごし体を拭きながら聞いてやった。
これはあくまでも嫌味なのに……。
「愛だよ、愛」
「はぁ?」
猫は時々、意味不明なことを言いだす。
それでもそうかもねと言ってしまえるほど、私と猫は信頼し合うようになっていて、ほっくりしている自分に気が付く。
深追いすれば碌なころにならない。
猫と数年暮らして、私が学んだことだ。
私もそれなりに大人になった。人の恋の話に、くだらないと舌打ちを打っていた頃と違う。私も年頃の女。恋の一つや二つしてもあたりまえ。
暦では、もうすぐクリスマス。
片思いの彼にプレゼントしようと思って編み始めたセーターの上、猫が何の迷いもなく寝床にし出す。
「何やってんの?」
うーん? 片目だけ開けて見る猫。
今日こそ許さない。
私にものすごい剣幕で追い払われた猫の爪が引っかかって、無残な姿になったセーター。
「私の2ヵ月間の努力を返せ!」
真夜中なのを忘れて怒鳴る私に、隣の部屋から兄貴がうるせーぞと顔を覗かせる。
猫が、パッと兄貴の胸に飛び込む。
ふいに飛び掛かられているのに、しっかり受け止めた兄貴が、愛しそうな目で猫の頭を撫でる。
「どうした? 殺されそうになったか?」
私は、兄貴の嫌味にムッとしながら、外で遊んでたから叱っただけだよと言い返す。
ミャ~オン。
嘘だ。と、猫が兄貴に訴えている。
「よしよし、オレの部屋で一緒に寝ような」
……って?
なんか変な感じ。
一瞬、一人と一匹に妬けた。




