第三十一話 熱闘~第百三十八億ターン 「寂」(VS畜生類)
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岩層の底涯て
顔相
マグマ
似積めたそれは
のっぺらと
真っ白に輝き
宇宙
マグマを煮詰めて極限まで
そしてそれは白く輝いて
果てには光となった
すべてがそこにはおとされた
それはすべてのかたちをしている
畜生類
凄まじい速度で変幻する
ありとあらゆる存在や非存在的なものにいたるまで
眼をつぶる藤吉浪
最後に見たイメージ
絵合わせ
心の中で検索して
完全一致したものを殺る
目の前の相手を
心の中で殺害する
しかも測り知れぬ莫大なるエネルギーのぶつかり合いで
永遠の死闘を繰り広げていく
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藤吉浪は眼を開けた
目の前にいる相手
すべての変幻によって
すべてとなり
それはこの上ない
匿名だった
一語
結局
宇宙もそれだけで足る
総じて
形相も大小も
すべてが高速で流れゆくのだから
すべては剥奪されて
それは存在し
物質となり
それを追えば
ますますすべては忘却されゆく
こんどはフィジカルで
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藤吉浪の拳は
畜生類の芯へととどき
畜生類(すべての存在と非存在的なもの)は
はるか宇宙のかなたまで飛ばされた
一瞬にして
藤吉浪は
己をも拳にて
飛ばされた畜生類のもとへ
飛ばされた
かなた
下方を見おろせば
渦巻く銀河の星々の変幻
ああこの生滅に
我らのすべてが写されて
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宇宙に二つの筋が咲いている
果てから涯てまでを
格闘は無数の死を産んで
すなわち無数の生を産む
巨大なる格闘
そう
トリックスターは星だった
今
見おろせば
ある惑星の住人が
二筋の光の力によって
物語を刻んでいる
つまり
脳内のイメージを
物質へと
変換し遂せた、というわけだ
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さて
読者よ
お気づきのことであろうか
卵が先かニワトリが先か
主人公と大ボスの
もたらした死闘による
二筋のエネルギーによって
作者は
その物語を
その主人公とその大ボスとの
その死闘を描くのである
それは凄まじい速度であり
一方が進めば他方が追いついて
それを繰り返すことで
それは鏡面のように
貼り付いた世界と
世界
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起源
はてなど
考えるまでもない
すべてはあるのだから
言葉にエネルギーがやどり
エネルギーには存在がやどる
そして存在とは言葉であると
神話、つまり
起源とはてとが
語られてある
そして結局
それがすべてなのだ
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138億ターン
幾億もの死闘
光
影
闇
死
激突
イメージと
フィジカルの
ぶつかり合い
藤吉浪の拳が
畜生類のからだや顔面を襲うたび
バラバラバラバラに
崩れ落ちていく
宇宙全体を地平に
振るい落ちていく宇宙塵
エントロピー
宇宙は塵となりて
ゴミ山のように乱れゆくのであろうか
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「いいえ。おそれることなんてなににもありません。この宇宙において、闇とは母の胎内のように安らかなのです。すべてはかき消されていくのでしょう」
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とうとう狂ったのだな
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藤吉浪は思った
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幾億ターンもの死闘において、畜生類は、一語すら発することはなかった
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それが、突然喋りはじめたのである
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畜生類
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「エントロピー、秩序の混線・・・ですか?いいえ、宇宙全体は、加速的膨張でしかないのです。エントロピーは広がりゆく宇宙空間にやがては溶けゆくのでしょう。存在のすべて。非存在的なもののすべて。屍や恐怖のすべて。いいえ、決して。そう、闇はあたたかい。蒸発しすべては浄化する」
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畜生類
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「あの地平線をご覧なさい。美しい直線ではないですか。あれは、匣のようでいて、実際には永遠にとらえどころのないものです。逃げ去るのでしょう。そう、きっと宇宙の父母たる闇の温床は、あのあたりにあるのではないですか??死。そんなものに恐れをいだく必要なんてありません。なぜなら、すべては存在している。存在にとって、ひらたくいえば宇宙の命運にとって、それ以上の道理はありません。すべてはある。あるのだから、あります。揺りかご。起源もはても。加速的に伸びゆく、あの真っ白な未来に生まれている。そう、闇はこわくない。現前としていて、しかしながら絶対に捉えることのできぬ永遠なる地平・・・」
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畜生類
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「美しいとは思いませんか?永遠。まるで音楽のようではないですか」
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藤吉浪
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畜生類の言葉に、藤吉浪は不意にある結論に到達していた
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寂滅
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次の瞬間
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藤吉浪は、すなわち自らを死の闇へと投げやっていた




