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第六話「使者の運命、救います。〜前編〜」

作中に登場する固有名詞は、実在のものとは一切関係ありません。

「海〜〜〜〜〜♪」

右を向いても、

「海〜〜〜〜〜♪」

左を向いても、

「海〜〜〜〜〜♪」

上を向いたら、

「青い空〜〜〜〜〜♪」

今日は絶好の、

「バカンス日和〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜♪」

「仕事です。」

「…ほんっとに冷めてるわね〜。こんな絶好のロケーションなんだから、もう少しテンション上げたらどーなのよ。」

「バカンスで来たわけではないのですよ?それに、ここは海洋惑星なんですから。辺り一面海なのは当たり前です。」

「…あ〜、はいはい。わかったわよ〜。…ったく、ほんっとに面白みがないわね〜。」

「二人揃ってバカンス気分になってしまっていては、仕事に支障をきたしますから。」

「……。ごめんなさい。真面目にやります。」

「別に構いませんよ。二人揃ってガチガチの仕事人間でも、上手くはいきませんから。今のバランスがちょうどいいんです。」

「そういうもの?」

「そういうものです。」

「…。(硬いのか柔軟なのか、よくわからないわねぇ…相変わらず。)」

首を捻るフィーアと、冷静な顔で周囲を見つめているウィング。

今日、二人がやって来ていたのは、四方を海に囲まれた孤島であった。



海洋惑星、アクレア。

地表の九割が海に覆われた惑星。

かつては陸地も多く存在したが、海面の上昇により、今ではそのほとんどが水没してしまっている。

そのため、地上に暮らしていた生命は、新たな生活の場を、海に求めるほかなかった。

その結果生まれた生命体。「人魚族」。人が、海に適応するために進化した姿である。基本的には、顔に体、二本足で二本の腕、と、人間と変わらない身体構成だが、水中に適応した呼吸器官と、海の水圧に負けない強固な骨格。そして、海の中を自在に泳ぐための大きな手足が特徴である。

一方、古くから海の中を生活の場としていた生命体も、進化を続けていた。かつては本能の赴くままに活動していた彼等だが、今では人間並の知識を身につけ、海底に巨大な国家を形成するまでに到っていた。それは、かつて自分達を捕え、喰らい、命を奪っていった人間達、人魚族の祖先達への対抗手段であった。

智恵を得た彼等は、自らを「進魚族」と名乗り、海への進入者であり、憎き人間達の子孫、人魚族への、強烈な敵意を燃やしていた。



「で、今回の仕事は、その人魚族を助けること、だっけ?」

「はい。今回、人魚族から進魚族へと、和平の使者が送られることになり、使者の一行が、現在、進魚族の王都へと向かっている最中だそうです。」

「ふ〜ん、和平、ねぇ。よそ者ですけど、仲良くしてください〜…みたいなこと?」

「ま、そんな感じかもしれませんね。」

「で、私たちはどうするわけ?」

「…ディスティーナ様の話、聞いてなかったんですか?」

「そ、そんなことないわよっ!」

「嘘はつかなくても結構。行き先が海だ、って聞いただけで、表情がすでにバカンスモードに入ってましたからね。どうせ、上の空で聞いてんだろうなぁ、って、思ってました。」

「ぐ…。細かい観察眼を持ちおって…。」

「もう一度説明しますから、しっかり聞いておくように。」

「は〜い。」



……………。



「…なるほど。じゃあ、その和平の使者御一行様が、もうすぐこの孤島にやってくるってことね。」

「そういうことです。進魚族の過激派に追われてここに逃げてくる使者の皆さんを援護して、進魚族を撃退。再び無事に送り出す。それが今回の仕事です。」

「…海には入らないの?」

「進魚族に食い殺されてもいいなら、入っていいですよ。」

「…遠慮しまふ。」

「…隙あらばバカンスを楽しもうとしてますね。」

「だ、だって〜。こんなに綺麗な海なのよ〜?せっかく水着も持ってきたのに〜。」

「…いつの間に。」

「うふふ〜、ウィングだって見たいでしょ?美女の水着姿♪。」

「是非とも、プライベートで見せてください。」

「…相変わらずツッコミの入れにくい返しをするわね…。そんなんじゃ、立派な芸人にはなれないわよっ!さぁ!あの夕日に向かって…」

「まだ昼前です。」

「…ちょっとはさぁ〜。テンション上げてさぁ〜。私のノリについてくることもさぁ〜。あってもいいと思うよ〜?」

「………。」

「な〜に、だんまり決め込んじゃってるのかなぁ〜チミは〜。いーかげん私のノリに付き合うのはうんざりってことですか〜?」

「…サーチイアー」

「へ…?」

突然力を行使したウィングに、キョトンとするフィーア。

空中に白い耳の紋様が出現し、周囲をぐるぐると周回する。やがてそれは徐々に行動範囲を狭めていき、そして、あるポイントでピタリと静止した。

「…来ますね。」

「え、何が…」

フィーアが全てを言い終えるより早く、

それは海中から現れた。



ザバァァァァァァ…ン!



「え!?」

突然、何の前触れもなく、巨大な白い物体が海面に姿を現した。どうやら高速で急浮上したらしい。そしてその形は…

「な、何々?なんなの?この、でっかいシャコ貝!何人前あるのよ!」

「…いきなり食欲に繋げますか、あなたは。どうやら、シャコ貝型の潜水挺みたいですね。和平の使者の皆さんが乗ってるみたいです。」

「へ…。その人達って、海の中で暮らしてるんでしょ?なんでわざわざ潜水挺なんて使ってるわけ?」

「私達が車に乗るのと、同じ感覚だと思いますよ。ずっと泳ぎ続けるのは、やっぱり疲れると思いますし。それに行き先は、どんな危険があるかわからない場所ですから。」

「なるほどね。んで、使者御一行様はディスティーナ様の言った通り、敵さんから逃げて浮上してきた、ってとこかしら。」

「そうみたいです。ついでに言うと、私達に対しても、かなり警戒しているようですね。」

「あら、そうなの?」

「サーチイアーからわずかに会話が聞こえてきますが、相当警戒されてますよ。まぁ、この世界で陸地に生物が住んでいたのは、はるかなる太古の話。陸上生物は、物語や、古い歴史書でしか語られていない存在。それが目の前にいるわけですから、警戒してしまうのも仕方ないでしょう。」

「え!じゃあ私達って、この世界じゃ伝説的な存在なわけ!?なんか、かっこよくない!?」

「…別に、かっこよくはないと思いますよ。」

「えー、なんでよー。物語や歴史書にしか登場しない生き物なんでしょ?私達って。」

「人間のいない世界へ行けば、伝説にも登場しない未確認生物でしょうが…。…ん…」

「どしたの?」

「いらっしゃったみたいですね。追っ手。」

ウィングが、その言葉を言い終わらないうちに。



…サァァァアアアアッ!



「うわっ!」

再び声を上げるフィーア。水を切り裂く鋭い音と共に海面に現れたのは、無数の魚の背鰭だった。

「鮫ですか。しかも、こんなに大軍勢。」

冷静に、背鰭の群れを見つめるウィング。視界の中には、巨大なシャコ貝を取り囲むようにうごめく、無数の背鰭があった。

「…はぁ〜…こんなにたくさん。私の力じゃ時間がかかっちゃうわね。」

「ですね。私がやりますからご心配なく。」

「よろしくね〜。早く仕留めないと、シャコ貝食い破られちゃうわよ〜。」

「わかってますよ。」

軽く言葉を交わすと、ウィングは一歩進み出て、瞳を閉じた。両腕を大きく拡げ、掌を下に向ける。

口の中で小さく言葉を呟く。両手の指先に黄金色の光が集まり、徐々に膨れ上がっていく。そして、

「ブレインブレイク。」

ウィングが力持つ言葉を解き放った。同時に、指先に集まっていた黄金色の光は十本の光の筋となって、一斉に海面へと放たれ、迷う事なく背鰭の群れへと降り注いだ。



声にならない絶叫が、一斉にまき起こった。



ブレインブレイクはその名の通り、脳を破壊する力。脳神経に強烈な負荷を与え、凄まじい苦痛を与える。たいていの生物は、その強烈な痛みに耐えられず、一目散に逃走する。この鮫達も、例外ではなかった。

「お〜お〜。イルカショーならぬ、シャークショーですか〜。」

一人、この状況を気楽に見物しているフィーア。ブレインブレイクにやられた鮫達は苦しさのあまり、跳びはねたり回転したり、なんとか痛みを紛らわそうと、バタバタと動き回っている。それは、なかなかに豪快な光景だった。

ウィングは力を緩めない。まるでピアノを演奏するかのように、滑らかに十本の指を動かし、黄金色の光を放っていく。光が放たれる度に、のたうちまわる鮫の数も増えていく。あちこちで激しい波飛沫が上がり、のたうちまわる鮫達は、一匹、また一匹と、一目散に逃げ出していく。そしてついに、シャコ貝の周囲には、一匹の鮫も存在しなくなった。

「…ふぅ。」

「いやぁ〜お疲れお疲れ〜。いいもん見させてもらったわ。」

「気楽ですね、まったく…。しかし、あれだけの数に対して力を行使すると、やはり疲れますね。」

「ホント、お疲れ様〜。まぁ、これで仕事は終わったわけだし、今日はゆっくり休めるじゃない。」

「そうですね。それじゃあ…?」

帰りましょうか。そう言いかけたウィングだったが、その言葉は続かなかった。

「………?」

シャコ貝がわずかに振動している。

「なんか、揺れてるよね、あれ。」

「揺れてますね。」

「出発するのかな?」

「出発でしょうかね。」

「じゃあ、見送ってから帰ろうか。」

「そうですね。」

使者が出発するのを見届けてから帰ることに決めた二人。だが、

「…あれ?」

出発する様子がない。じゃあ、一体なんの振動なんだと訝しむ二人。そして振動を続けるシャコ貝は…



「………!」

静かに、その殻を開いた。



「…なんか、もう少し仕事続いちゃう感じ?」

「そうみたいですね。」

「…後編、行っちゃう感じかしら?」

「そうみたいですね。」

「…ネタあるのかしら?」

「…さぁ?」

「………。」



後編に続く。

時間かかりました…(-.-;)。疲労やら行き詰まりやらで思うように書き進めることが出来ず、遅くなってしまいました…。次回こそは!早く書けるようにネタを練らねばっo(^-^)o。次回も、よろしくお願いいたします!

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