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おまけの話「なんとなく、休日な二人。」

作中に登場する固有名詞は、実在のものとは一切関係ありません。

AM6:30…



「……ん…。」

二人の共同生活は、ウィングが必ず先に起きる。

二人で暮らすようになって数年経つが、フィーアがウィングより先に起きたことは一度たりとも無い。

「………。」

休日でも習慣でいつも通りに起きてしまう。二度寝すればいい話なのだが、せっかく起きたのにまた眠ってしまうのは、なんだか勿体ない気がする。ウィングはそう考えていた。

「………ん。」

まだ寝ぼけた眼で部屋の隅を見る。と、そこにはケージの中でスヤスヤ眠る一羽の兎。

「………。」

愛兎の寝顔にくすりと柔らかく微笑むと、ウィングは静かにベットからおりた。刺激を与えないように静かにドアを開け、朝食のためにキッチンへと向かった。


AM7:00…



「………すぅ。」

一方その頃、熟睡中のフィーア。普段はこの辺りでウィングの強烈な目覚ましが炸裂する頃なのだが、さすがに休日はそんなことは無いらしい。静寂が部屋の中を支配している。

「………ぅふふ。」

幸せそうな寝顔だ。

「この世の光はぁ…私が護るぅ………。」

お約束のように寝言も言ってのける。さすがだ。



AM8:00…



ゆっくりと朝食を終え、ウィングは部屋に戻って来た。自分の食事が終わったら、次は愛兎の食事。ウィングが食事に行ってる間に起きたらしい愛兎は、彼の姿を確認すると、ケージをガシャガシャと鳴らしてご飯の催促を始めた。

「ふふ…はいはい。」

自然と顔がほころぶウィング。普段はほとんど見せない素の笑顔。なかなかの貴重映像だ。

兎用の牧草とペレットをケージの中に入れ、給水器の水を補充する。早速食べ始める愛兎。


…カリカリカリポリポリポリ…


「………。」

兎が食事をする時のカリカリポリポリという音。これがウィングの耳に、なんとも心地よく響いていた。

「………。」

自然と顔が緩むのがわかる。休日の朝、彼の楽しみの一つであった。



AM8:30…



「………んん…」

一方、フィーアはまだまだ眠りの中。当分、起きる気配はなさそうだ。

「………ん〜…ダメよぉ…ダメだったらぁ…。」

…今度は何の夢を見ているのやら。

「………その最後のサンドイッチは私のぉ……。」

…2*才にして、色気より食い気な女が一人。

「ハムカツサンドぉ……」



AM10:00…



ウィング、兎を部屋の中で散歩させながら、ゆったりと趣味のイラスト描き。


フィーア、まだまだ睡眠中。



AM11:45



「………」

すっかり昼ご飯の時間が近くなってきた頃、やっとフィーアが動き出す。うすぼんやりと瞳を開き、ボーーー…っとしたまま、ゆっくりと上体を起こす。

「…んー………」

この状態のまま約5分。やっと視界と意識が定まってきたようだ。そんなフィーアが次に取る行動は、

「……お昼ご飯…。」

…やはり、食い気な女。


この辺りから、二人が顔を合わせ始める。


「…あ、フィーア。おはようございます。」

「ん〜〜、いい匂い〜。ね、ね、何作ってるの?」

「夕飯用のビーフシチューです。」

「……………。」

「……………。」

「……………。」

「……そんなキラキラした瞳で見ても、まだダメですよ。」

「…どうしても?」

「これから、じっくり煮込んでいくんですから。まだ完成していません。」

「…じゃあ、味見は?」

「もうしましたから。」

「客観的な意見だって必要じゃない?」

「……………。」

「キラキラキラキラキラ…」

「口でキラキラ言わなくてもいいですから…。お昼なら別に用意してありますからご心配なく。」

「そなの?」

「そうです。」

「なぁ〜〜んだぁ。それならそうと早く言ってよ〜〜。ね、ね、お昼のメニューなに?メニュー。」

「チキンカツサンドです。テーブルの上に乗ってますから、御自由にどうぞ。」

「チキンカツかぁ。明日はロースカツサンドにしてね。」

「作ってもらってる身分で文句を言わないように。」

「は〜い。いただきま〜〜す。」

「……………。」

美味しければオッケー。好き嫌い無しの、良い子なフィーアであった。



PM2:00…



お昼も終えて、夕食の準備も済ませて、のんびりとした昼下がり。ウィングは自室で愛兎とたわむれ、フィーアも自室で音楽鑑賞中。…と、思いきや。


「ウィング〜。」

「ノックもせずに、いきなり部屋に入ってこないでください。」

「あらあら、愛するウサちゃんとラブラブ中でしたか〜。これは失礼をいたしまして。」

「…で、何か用事ですか?」

「ウィング、買い物に行こうっ!」

「何か足りないものでもありましたか?」

「そういう消耗品の買い物じゃなくて〜。アクセサリーを買いに行きたいの!」

「アクセサリー?」

「うふ、女の子だ、って感じするでしょ?」

「…私が一緒に行く必要ありますか?」

「も〜、わかってないわね〜。」

「?」

「アクセサリーを選ぶときに隣に男の人がいれば、かなりの確率でカップルだと思われるでしょ?」

「…で?」

「そうすれば、支払いは必然的に男性、っていう空気が生まれるじゃない。」

「…お一人で行ってらっしゃい。」

「や〜ん、冗談、冗談よぉ。ちゃんとお金は自分で出すから。だから一緒に来てよぉ。」

「支払い目的意外ならなんなんですか?アクセサリーなら嵩張らないでしょうから、荷物持ちもいらないでしょう。」

「そんなんじゃなくてさぁ、…ん〜〜〜…何て言えばいいかなぁ………。男性の目から見て、似合ってるかどうか見てもらいたい、って感じかな。」

「そういうものなのですか?」

「そういうものなのよ。女心ってやつは。」

「わかりました。そういうことならいいでしょう。」

「やたっ!さすがはウィング。話がわかる〜。」

「それでは、すぐに出かけましょうか。もう準備できてますか?」

「え?ウィング、その格好で出かけるの?」

「いけませんか?」

「ダ〜メ〜よ〜!!お洒落なアクセサリー見に行くのに、そんな普段着じゃ〜!」

「見に行くのはあなたなんだから、私は着飾る必要ないでしょう。」

「はぁ…、ほんっとにわかってないわね〜!!あなたは、アクセサリーを見る私の隣にいるのよ?そうすれば、たとえ違ったとしても、かなりの確率でカップルだと思われるでしょ?」

「…で?」

「その彼氏サイドが野暮ったい格好してたら、私のセンスが疑われちゃうでしょうが!」

「…要するに、あなたの見栄のために着替えろ、と言うわけですね。」

「う…、そ、そんな露骨に言うことないじゃない。その通りではあるけどさ…。」

「わかりました。別に断る理由もありませんし、少しくらいは小奇麗な服装にします。着替えるから、リビングで待っててください。」

「え、う、うん。わかった。待ってる。」

フィーアがウィングを買い物に誘うときは、大抵こんな感じになる。



PM3:30…



「う〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん・・・・・・」

「もう・・・何十分悩み続けてるつもりですか?」

「うるさいなぁ。これが女性ってものなのよ。ウィングも少しは女心ってやつを理解しなさい。」

「そんなものですか。」

「そんなものなのよ。大体、ウィングがはっきりと意見を言ってくれないから、こんなに悩んでるんじゃない。」

「そうなんですか?」

「どのアクセサリー見せても、似合ってます、ばっかりじゃない。もっと具体的になんか言ってくれれば判断基準になるのに。」

「そう言われましても…ホントにどれも似合ってるんだから他に言い様がないんですよ。」

「ふう…。ま、この私が身につければ、どんなアクセサリーも似合っちゃうってのは仕方がないことなんだけどね。」

「そうですね。どれを身につけても美しいです。」

「………。」

「どうしました?」

「…なんでもない。」

「頬、赤いですよ?」

「なんでもないってば…(な〜んでこいつってば、冗談に対してマジトーンの返答するかなぁ…。)。」

ウィングの素の褒め言葉には、普通に弱いフィーアだった。



PM6:00…



買い物も終わり(そのあと、ついでだから、ということで、ウィングが消耗品の買い物などしたりして、フィーアは早く帰りたいとむくれていたが)、帰宅した二人。ウィングは夕食の仕上げをし、フィーアは部屋でアクセサリーを身につけ、悦に入ったりしている。


そして、夕食。


「全く、そんなにがっつかなくても大丈夫ですよ。二人暮らしなんですから。」

「だって、美味しいんだも〜ん。ほんっと、ウィングがパートナーでよかったわ〜。」

「まあ、ろくに台所に立たないあなたにとっては、死活問題かもしれませんね。」

「ほんっとよ〜。ウィングなら、いつでも嫁にもらってあげるわ〜。」

「…嫁、というより、お抱えの料理人、って感じでしょう?」

「お抱えの料理人だと給料払わなきゃだから、あくまでも無料の嫁。」

「…心配しなくても、パートナーでいる間は無料で料理を提供してあげますよ。」

「わ〜い。」

そんな会話が交わされる、いたって平和な食卓。



PM9:00…



夕食が終わって、後片付けやら入浴やらでバタバタしているうちにこんな時間。

この時間は、大抵二人してテレビを見ているのだが…

「ちょっと、フィーア。CMに入ったからって、チャンネル変えないでもらえますか?」

「え〜、いいでしょ〜ちょっとくらい。CM見てるの面白くないし。」

「そんなこと言いながら、自分が好きで見てる番組の時はCMまできっちり見てるじゃないですか。」

「当たり前じゃない。CM明けを見逃したくないもの。」

「私もそれは同じなんですけどね。」

「クイズ番組なら多少遅れても答えには間に合ったりするからいいじゃない。でも!ドラマはそうはいかないのよ!見逃した数分で展開がガラリと変わってることだってあるんだから!」

「…チャンネル戻しますよ。」

「あっ!待って待って!この打席が終わってから…」

「…」

「こら!勝手に変えるなっ!」

「最初に見ていたのは私です。」

「もう!あの打席の結果、すっごい気になる〜!!」

「…最初から見てたわけでもないのに、よく一瞬で入り込めますね。」

「スポーツ中継は、そういうものなのよ!」

…まあ、だいたいこんな感じで過ぎていく。

ちなみにこんな口論を戦わせながらも、見たい番組の録画作業などは、きっちりされていたりして。

番組をリアルタイムで見ることが重要らしい…。



PM11:00



この時間には、二人ともすっかり自分の部屋に戻っている。

それぞれが寝るまでの時間を自分の趣味に当てているだけなので、ここは割愛。

「そんな事言い出したら、このおまけストーリー、全部割愛されちゃいそうですけどね。」

「ていうか、これを書く意味自体あったのかしら?」

「噂によると、作者がなんとなく結末に困って、なんとなく物語を終わらせるために書いてるとか何とか…。」

「それが本当なら、相当やりっ放しな作者ね。」

「あれですね。いろいろと構想が沸いて書き出してはみたものの、結末がさっぱり浮かばなかったから苦肉の策…ってところでしょうか。」

「プリンセス救出で終わらせれば、それなりに形になっていたかもなのにね〜。」

「ラストがドMだらけじゃ締まりませんもんね。」

「っていうか、なんであんな話を考えちゃったのかしらね?」

「思いつきでしょうね。あの作者ならやりそうなことです。」

「思いつきで動かされるなんて、いい迷惑よね〜。」

「全くです。」


おまけストーリー 終わり。 


「あーーーーー!!なし崩し的に終わらせようとしてるっ!」

「オチが思い浮かばなかったんですね…。」


………えーと(^.^;)。なんか書いてみたくて書いちゃいました。…よかったのかなぁ(^.^;)?こんな形で完結させちゃって。とりあえず、これでこの作品も完結です。ありがとうございましたっo(^-^)o。

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