第十三話「今日乗り切れば連休です。〜前編〜」
作中に登場する固有名詞は、実在のものとは一切関係ありません。
「ついに連休ですか〜〜〜〜〜〜っっ!?」
「はい。」
「今日の仕事が終われば、ついに連休なんですねっ!!ディスティーナ様っ!!」
「はい。」
「くぅぅぅっ!!ビバ!連休ぅぅぅっ!」
「…いつも定期的に連休もらえてるのに、なんで毎回毎回こうハイテンションに喜びますかねぇ?」
「なぁ〜に言ってるかなぁっ!ウィング君っ!連休よっ連休っ!休みが連なると書いて連休なのよっ!これで何故テンションが上がらないかなぁ〜っ!」
「…はいはい。ま、確かに連休は嬉しいですからね。」
その日、異様にハイテンションなフィーアの姿がそこにあった。
運命の救済士という、かなり特殊な仕事をしている二人ではあるが、普通の仕事と同じように休日はある。だいたい、平日出勤の土日休み、みたいなものだろうか。休みはたいてい連休でもらえている。
言うなれば、今日は金曜日。今日の仕事を片付ければ、明日からは、のんびり二連休。想像しただけでテンション上がりまくりのフィーアと、今まで何度も繰り返されて来たスケジュールでしょう、と、相変わらずクールなウィングであった。
「んで、んで、ディスティーナ様。連休を前に、ちゃちゃ〜っと片付けておきたい今日の仕事はなんですか〜?」
「はい。今日の仕事は、ストーカー退治です。」
「ストーカー、ですか。」
「ふ〜む。前回のファンタジックな世界観から一転、急に現実的問題だわねぇ。」
「あらゆる運命を救済するのが、救済士の仕事です。」
ディスティーナが水晶球に手をかざす。一人の女性の姿が、水晶の中に浮かび上がった。
「この水晶球のシーン、第一話以外書かれたことなかったわよね。」
「いきなり現場にいるか、話の流れでそのまま仕事になだれ込むか、どちらかでしたもんね。」
「まぁ、たまには書いた方がいいかもとは思ってたけどね〜。書かないと、ディスティーナ様の小説上での役割ってもんがなくなっちゃうし。」
「運命を司るすごい神様のはずなのに、小説では随分と出番が少ないですからね。作者もここに来て、その辺を考慮に入れたのかもしれませんね。」
「まぁ、私達が仕事始めちゃうとほとんど現れなくなるから、どっちにしろ出番は少ないんだけどね〜。」
「そんなストレートな…。ディスティーナ様のような出番の少ない方がいらっしゃるおかげで、私達が多く出番を貰えているんですから…。」
「あなたたち…わざとですか?」
…ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…
「わ!?わー!!嘘です嘘です!冗談ですー!!」
「す、少し悪乗りしてしまったようで、大変失礼いたしました。」
「…以後、気をつけなさい。」
「は、はい…。ふぅ…危なかった…。」
「あの、ゴゴゴゴゴゴ…も、久しぶりでしたね。久しぶりでも、やっぱり恐かった…。」
「…コホン。」
「…んんっ。」
緊張した面持ちで姿勢を正す二人。ディスティーナは満足気に頷くと、再び水晶球に向き直った。
「彼女は三階堂愛。局地的に熱狂的なファンを持つアイドルです。」
「局地的、って…。」
「ずいぶんと微妙な感じですね。…ということは、ストーカーはその熱狂的なファン達の中に?」
「おそらくは…。ファンという存在は、度を過ぎると狂信者に変わります。ほおっておけば、彼女にどんな危害が及ぶかわかりません。よろしくお願いします。」
「は〜い。」
「了解しました。」
「というわけでやって来たわけだけど…どうしよっか?」
「そうですね…常套手段としては、やはり彼女を陰から護衛して、怪しい動きをしている奴を彼女に近づけないようにする。…でしょうか?」
「…それって、私達もストーカーっぽくない?」
「私達は彼女を護る立場ですから、ストーカーじゃないでしょう。」
「いや、第三者から見たら、さ。ストーカー同士の足の引っ張り合いに見えないかなぁ?」
「そんなこと気にしなくてもいいと思いますが…。なら、フィーアはどうするのが良いと思うのですか?」
「そ〜ねぇ…堂々とボディーガードです!って名乗って、彼女をガード。とか。」
「…信用すると思いますか?見ず知らずの人間に、いきなりそんなこと言われて。」
「う〜ん、物事を少しでも考えるタイプなら、信用しないわね。」
「じゃあダメじゃないですか。」
…とかなんとか、話をしていると…
「……〜…♪〜…〜♪♪」
「んんっ!?なにやら鼻歌歌いながら歩いてくる女性が一人。」
「…彼女ですね。三階堂愛さん。」
「なんとも都合よく私達がいるところに現れたものね〜。」
「ディスティーナ様が、彼女の帰宅経路上に私達を送ってくれたからですよ。…それにしても不用心ですね。」
「確かに。局地的人気とはいえ、仮にもアイドルが、顔も隠さず独り歩き…。」
「まだ夕方ではありますが…。普通マネージャーが自宅まで送るものなんじゃないのでしょうか?」
「それは甘いわ、お二人さんっ!」
「うぉっ!?」
突然背後から飛び込んできた第三者の声に、思わず飛びのくフィーア。冷静なウィングも、目を丸くしている。
二人の背後に、いつの間にか一人の少女が立っていた。年齢はまだ十代半ばといったところだろうか。好奇心の塊です!と言わんばかりの大きな瞳が、爛々と輝いている。
「アイドル、と呼ばれる人種、全員にマネージャーがついていると思ったら大間違いなのよっ!」
「そ、そうなんだ。」
「でも、普通事務所に所属したら、専属ではなくとも、仕事を管理するマネージャーは付くものではないのですか?」
「そ〜こ〜が、甘いのよっ!お兄さんっ!」
「は、はぁ。」
「アイドル、と呼ばれている人種、全員が事務所に所属しているわけではないの!フリーで活動してるアイドルだっているのよ!」
「へ、へぇ…そうなんだ。」
「彼女、三階堂愛も、そんなフリーのアイドルの一人。自分で自分をプロデュースして、自分で自分の仕事を得る。いつの日か花開くために、地道に頑張っているのよっ!」
「は、はぁ…。…熱いわね〜。」
「あの、ところで、あなたは何者なんですか?」
「私は三階堂愛のストーカーですっ!」
…べごすっ!
「いったぁぁぁぁーーーーーーーいっ!!」
「ごめん。あまりにストレートな告白だったから、つい無言で殴っちゃったわ。」
「なによーーっ!あんた達だってストーカーなんでしょっ!?」
「なっ!!あんたと一緒にしないでよっ!」
「何言ってんのよ!彼女が帰宅に使う道にピンポイントで待ち伏せしてたくせにっ!」
「私達はストーカーじゃなくてボディーガードよっ!彼女をストーカーから護るためのっ!」
「ふんっ!他のストーカーはみんなそんな言い訳するのよっ!自分が彼女を護るんだ〜だから側にいる必要があるんだ〜…。キモいっつーの!ストーカーならストーカーだと素直に認めろってーの!」
「だぁーーーっ!ストーカーじゃないってーのにっっ!」
「フィーア。」
「何よっ!」
「三階堂さん、もう見えなくなっちゃいましたけど。」
「ああああああああっ!」
フィーアと少女が、同時に声を上げた。
「こ、こうしちゃいらんないわっ!早く後を追わなきゃっ!」
慌ただしく駆け出す少女。
「あっ!!ちょっと待ちなさいストーカーっ!!」
「…あっという間に見えなくなってしまいましたね。」
「感心してる場合じゃなくて!行くわよウィング!」
「そうですね。早いとこ、あのストーカー少女を追い掛けるとしましょう。」
「連休前のこの仕事。万が一しくじったりした日にゃあ、ディスティーナ様に連休取り上げられる、なんて、笑えないオチだって十分ありえる!気合い入れていくわよーーーーーっ!!」
「(ホントに連休大好きなんですね…)」
今まで見たことのないくらいの気合いを発しながら、道を突っ走っていくフィーア。その後を追いながら、ウィングは一つの疑問にぶつかっていた。
(彼女、言ってましたよね…他のストーカーがどうこう、って…。それはつまり、彼女の他にもストーカーがいる、ってことなんでしょうか?)
脳裏に走る、嫌な予感。もしかしたら今日の仕事は…
(長引く事になるかもしれませんね…。)
心の中で溜息をつきつつ、フィーアに遅れないように、ウィングは足を速めた。
今回はちょっと短め…私が書くと、だいたい前編って短めになってしまいます。…ペース配分が下手なようです、はい(^.^;)。後半も楽しみながら書いていきますo(^-^)o




