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ラジカライズアワー  作者: 九郎士郎
激流編
31/39

29# ニートな俺

だらけてる、ええ。ヤツはだらけてます!ちょっとうらやましい!

「カイゾウさん。それ何くわえてんですかぃ?」

「飴だけど?食べる?」

「は、はあどうも……」

 俺に話し掛けたのは見たことあるようなないような、便利屋の一人。当初は恐れられてた(のか?)俺も色々あり、便利屋達に気軽に話し掛けられるまで成長した。だがそこはコミュニケーションの苦手な俺。まあ会話が続かない。二言三言会話しただけで特に話題も無く、沈黙の後向こうから離れて行く。まあ別にいいよ、全然寂しくなんかないよ……ホントだよ!

 そう言うわけで俺は棒付き飴をくわえながら、カウンターでうらぶれているわけ。

 ちなみに俺の仕事と言えば暴徒鎮圧。大商人が抱える私兵同士の暴力沙汰の仲裁。と言ってもほとんどが自警団のヤツらが片付けるので俺はなかなか呼ばれない。実動三日間くらいでそれも一瞬で終わる。後はぼけーっとギルドのカウンター右端でうたた寝か、飯食ってるか街の散策。暇なら寝てろと町蔵は言うが人間一日中寝てなんかいられない。

 ガストがくれた銀貨はほとんど駄菓子に消えた。今舐めてるチュ○パチャプスみたいなやつに。カーゴパンツの脹ら脛辺りにあるポケットにはそう言う駄菓子が沢山入ってる。散策途中で近所のガキとかにくれてやる事もしばしば、そのせいでガキらがなんかゾロゾロと俺の後を付けてくる現象がおきていたりする。なにコレ?ハーメルンの笛吹き?

 それにガストも最近忙しいみたいで、なかなかギルドに顔を出さないので俺のだらけ具合にも拍車がかかっている。鬼の居ぬ間になんとやらと言うヤツだ。

 俺ニートみたいだなーとか考えたりするが、別段コレと言ってやることもない。変わった事と言えば、ニコが革製の黒い眼帯をくれた事だ。十字の中心に輪が白色で描かれている、一見スナイパーライフルのレティクル(標準基)みたいな感じのヤツ。ニコ曰わく神様のマークなんだとか。医療用眼帯のゴムがダルダルになってきてたのでありがたく頂戴した。付け心地は悪くないしちょっと海賊みたいでかっこいいとか思ってたりする。

 「ありがとうニコ」と言うと痛々しい指を顔に寄せてカウンターに引っ込んでいった。そうそう、痛々しい指で思い出したけどニコの料理はだんだん美味くなってる。こないだ食ったコーンスープみたいのは美味かった。たまに失敗作はあるけどな。

 さて、一眠りするかと俺はカウンターに突っ伏した―――。


side:ボルトン=クライスラー


「ぼっちゃん。なにもこんなとこまで来て話さなくてもいいじゃありませんか?」

「ぼっちゃんはやめろ。ボルトン隊長」

「ハッ!これは失礼いたしましたジュード様」

「フン。親父はああ見えて地獄耳なんでな」

 現在私は五大総長であられるフォンド様の一人息子ジュード様と街外れの洋館へ来ている。ちなみに私は帝国軍からここブラウンファミリーに引き抜かれ私兵団二百名の隊長をやっている。ぼっちゃんがここへ来た理由は察しは付くが……。


「いよいよ例の薬品が完成間近だ。その上親父は盟友だかなんかのワンダ=ライオネルプライズに会いに行くらしい。俺はここしかないと思っている」

「ここと言いますと?」

「アンタには護衛の道すがら親父を殺ってほしい」

「……いよいよ来ましたか。しかし、私に被害がこうむることはさけていただきたいのですが?」

「心配するな手は打ってある。東亜街の猿どもに情報を流す、嬉々として襲ってくるに違いない」

「なるほど」

 ついにジュード様の時代が来る!!ジュード様は血筋などにこだわらない、実力成果主義。これで私も幹部入りできる!なんと喜ばしいことか!しかし実の親を手にかけるとは……末恐ろしい方だ。


「ジュード様」

「なんだ?」

「噂ですが、護衛には我々私兵団以外の人員もフォンド様自らお連れなさるとか」

「あのクソ親父……まあその辺はお前にまかせる。うまくやってくれ」

「ハッ!」


side end



side:ガスト=ブライトリング


「なぁガストよぅ。いつになったら僕のカイゾウちゃんに会わしてくれるの?ねぇー?聞いてる?」

「うるせーな、そのうちな!それにいつから僕のになったんだよ」

 今オレは古書専門店クレイ=ウッドマンの事務所でクレイにカイゾウの事で駄々をこねられている。

 オレはそんなのに付き合ってる場合じゃない!大体は形になってきたギルドだが、まだまだ問題がある。言わずとも知れたブラウンファミリーについてだ、かれこれ二週間は経つが何の動きもない、水面下でなんらかの接触があってもよさそうだが……それがないということはそもそも問題にするきがないのか?いや、いつでもどうにかできると踏んでいるのか?

 正直わからない。ただただ不気味でならない。


「ガストぉー」

「なんだよ?カイゾウなら漂流街だぞ」

「ブラウンファミリーが面白い仕事を募集してるよん?」

「面白い?」

 クレイから受け取った紙には臨時護衛任務の募集とあった。

 たしかブラウンファミリーには構成員二百超の私兵団がいるはずだ……どうして募集する必要が?サングラスを外して眉間を軽く揉む。

 もしかして……フォンドは私兵団になんらかの不満がある?いや不安か?それも漂流街にかまってられないほどの?これは確かめる必要があるな。


「クレイ!これ、ねじ込めるか?」

「別料金だよ?」

「かまわない」

「二人までなら……なんとかなるかな?」

「頼む」

「ハイホー♪」

 さて、後の問題は誰を送り込むかだが……オレは無駄に甘いコーヒーを口に含んだ―――。


side end



side:シャーギィ=ゴートレイル


「ウォロック前大佐。あなたはヴァンガード自衛軍としての自覚はないのですか?」

「いやいや、ほらあんまり怒ると小ジワが増えるぞ?シャーギィ?」

「ふざけないでいただきたい!それに今の私はゴートレイル大佐・・だ!」

「ゴートレイル大佐ぁ。漂流街に行ったくらいでそんな怒んなよ」

「目的地はどうでもいい!ただ無許可で外出するなと言っている!」

「許可とったらいいのか?」

「審議して妥当ならば」

「じゃあ許可をもらおう。今日から俺がいつ何時外出してもいい許可をな!」

「そんな許可出せるわけないでしょう!」

 私の怒りに対して、目の前のボルはがははと笑っている。帝国軍時代からの同期だが相も変わらずこの男には真剣みが足りない。それでよく三武勲章の一つ竜騎士級ドラゴンキャリバーを得ることができたのか、甚だ疑問である。私はため息をつく。


「とりあえずしばらくは自室で謹慎、追って処分を言い渡す」

「謹慎かぁー」

 とボルはなんの悪びれもなく頭を掻いて部屋を出て行った。

 あの人はなぜ大佐権限を剥奪され、平兵士まで降格させられたのかわかっているのだろうか?ひとえにその性格が原因なのだ!犯罪者に肩入れしたり、勝手に釈放したりと悪を悪とも思わないその傍若無人振りがヴァンガードの名を汚しているのだ。悪党は殲滅しなければならない!それがたとえ肉親でも私情を挟むことはまかりならん!先駆者の名を冠する我々ヴァンガードは人民の先駆けとなり!その手本となるべきなのだ!性格も能力も志も!あの人には全部足りない!そんなヤツはすぐに死ぬこととなる!


「命がいくつあってもたりないわよボル……」

 私は最後にそう呟いた―――。


side end



 まためんどくさそうな事が起きようとしてますよ?


次回へのヒント:明日から本気出す!

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