25# 新ギルド草案
赤くて、三倍速い。後は言わなくてもわかるよね?(後で気付いたw)
「こぉらマチゾぉ!」
「ナーナー」
「ここかぁ?ははは」
「ゴロゴロ……」
現在マチゾーとベッドの上でじゃれあってる。身体を洗ったマチゾーは想像もつかないほど毛が膨らみ、丸い綿毛と化している。今でさえ無防備に腹を出し、俺にモフモフさせていた。
超癒されるー。とマチゾーを抱いたり、撫でたり、猫じゃらし的な植物と戦わせたりと。マチゾーは現実逃避するには充分過ぎる程のスペックを備えていた。
「アハハハ、こいつめー」
『コホン、お楽しみ中すまないがそろそろいいか?』
「は?」
俺は寝転がって、マチゾーを抱き上げた瞬間、現実に引き戻された。正確には仮想世界の現実に。ややこし!
「いつから?」
『身体を洗い終わった辺りからだな』
「つまり最初からだな」
『オフコース!』
「死ぬわ」
『まあまあ、じきに死ぬから早まるな息子よ』
「普通に酷いな」
『んでな、朗報だ』
「あ?」
『助っ人が来てくれた。紹介しよう、社司君だ』
『社です。以前お会いしたのですが覚えておられますか?』
「……誰?」
『んー。ほら、五円チョコ買ったメガネのおっさん覚えてない?』
その時、俺は以前高級車で乗り付けた、オシャレメガネを思い出した。勧誘の人じゃなかったのか。
「あのメガネの?」
『そうそう!覚えててくれていたんだね?嬉しいなぁ!僕はねぇ元々町蔵先生の助手だったんですよ!それでね!一緒に電脳のプログラムなんかを組み立てて……(省略)』
それから三十分近く、社さんは町蔵をヨイショし続けていたので俺もいい加減うざったくなって話しに無理やり割り込んだ。
「で、脱出できるんですか?」
『え!ああーっとそれは断言できないかな?けど徐々に解体していけばなんとかなるかもしれない。まあ町蔵先生がおられれば鬼に金棒ですよ!改蔵君!』
「はあ」
『俺だ。と言うワケで社教授と協力してお前を助けてやるからな!こっちにはあんまり期待せずにクリアするんだぞ!』
「せめて期待させろやハゲ!」
そして通信は切れた。
なんだかよくわからないが、町蔵は町蔵で頑張ってくれてるみたい。うむ。俺もマチゾーとじゃれてないで自分から動かないとな。そもそも俺の問題なんだし。
俺は簡素なベッドから起き上がり、軽く伸びた後。上方スライド式の小さな窓を開ける。日は照りつけているが、暑さにもいくらか馴れたのかそれ程苦痛ではない。全く便利な身体だ。と言うかそもそもこの体はラジカライズの物なのだから、そこへようやく俺の精神と言うか魂と言うものが対応しただけかもしれない。
緩やかに頬を滑る風さえ感じられる。よし、今日は状況整理がてら観察しよう。ゲームクリアの糸口も探さないといけないし。
目的が決まった所で、俺はマチゾーの首根っこを掴んで懐に入れる。
「ニャァ」
「うん、今から俺達は観測者だ」
妙に観測者と言う言葉を気に入りながら、酒場へ出る。
中二階の踊場から下を覗き込むと丸テーブルにガストとオッサン(ボルフィード)と緊急馬鹿が座り。その周りのテーブルでは数人がカードゲームをしていた。
階段を降りてると俺に気付いたガストが、隣りにある椅子を指す。
「丁度よかった。いまボルと新しいギルドの運営に付いて話してたんだが、カイゾウもなんかあったら言ってくれ」
俺は席に座りながら適当に返事すると。
「カイゾウさん。何か飲みますか?」
とニコが可愛いく言って来たので「酒以外の冷たいヤツ」と言うとテテテとマスターの元へ駆けて行った。指の絆創膏からしてマスターに料理でも習ってるのかもしれないな、と観測者振りを発揮しながら、ガスト達の方へ向き直った。
柑橘系の酸っぱいジュースを飲みながら話しを聞いてると、ガストが運営うんぬん言い出した原因はこうなる。
前にもチラッと耳にしたことだが、漂流街の族をあらかた片付けたギルド(ほぼ俺だが)は現在仕事が少ない。そればかりか仕事になった族なんかが丸々便利屋になると言う需要と供給が逆転したありえない状況なのである。簡単に言うと社員過多なのに仕事がないのだ。それの打開策として、ヴァンガードの様に住民から税金を徴収したらどうか?と言うのがガストの考えで、その代わりにギルドが漂流街全域に便利屋達を警備巡回させる自警団みたいな組織を作るらしい。その事についてヴァンガード自衛軍の大佐だったボルに規律に関しても相談しているのだろう。
うん。俺の出る幕無し。よくわからんからな。まあ後であんまり堅苦しくするなと言っておくぐらいだ。
俺は必要ないとわかった時点で、組んだ両手を後頭部に回しイスをシーソーみたいにして揺れていた。真上の緩やかに回る扇風機を眺める。
平和だなぁ。イヤイヤまてまて、平和なのは良いがこれじゃあクリア出来ないじゃん。既にハッピーエンドじゃないか。何か探さないと……考えろ俺。和んでる場合じゃない。
あまりのリアルさにゲーム内だと言うことを忘れそうだぞ。たしかコレは海外ゲームのFSPのハズだ。ならば銃撃戦が連戦にならなきゃおかしいわけだ。確か町蔵が「お前は正規ルートから外れた」とか言ってたな。本来は狂犬と一緒にマフィアの頂点に君臨するんだっけか?それなら銃撃戦で連戦になること必至だわな。
ちょっとまて、だったらヴァンガードとは敵対するハズだ。均衡を保って居るとは言えマフィアなんだから。そのへんから見てもギルドはどちらかと言うとヴァンガードとは友好関係にある。だって元大佐が仕事を手伝うくらいなんだからな。正規ルートからかけ離れてんなぁー。と溜め息。と言う事はサイトに載ってる仲間とか敵とか全然使い物にならないわけだ。
参ったなぁと酸っぱいジュースを口にする。
「オイ、聞いてんのかカイゾウ?」
「あ?なんだ?」
「だからよ、巡回するにしても人数が多すぎるから、警備と従来の便利屋に分けようと思うわけよ」
「ほお」
「で、警備の方は固定給で税金をあてて。便利屋は出来高制にしようと思うわけだよ。それなら人数を減らさずに行けるだろ?」
「警備に人気集まるだろ」
「そうなるだろうな」
するとオッサン(ボルフィード)が腕を組みながら「適性試験だな」と静かに呟いた。オッサンは酒飲まないと普通の渋いオヤジなんだな。
「まあその試験はこのボルフィードが相手になろう!」
フフフと楽しそうに含んだ笑いを浮かべるオッサン。なんか目が光ってるように感じるのは俺だけか?
「あ、バカラは警備隊確定な」
とガスト。不意を突かれたバカラは目を見開く。
「嫌だ!俺もカイゾウさんと同じ便利屋が良い!」
俺、個人的には警備やりたいんですけどね。自宅警備とかさ。
するとガストはニヘラと笑いながら、人差し指を軽く振る。
「警備”隊長“だぜ?警備隊を指揮する司令官的ポジションだやらない手は無いぜ?それに警備隊も便利屋も同じギルドで仲間だろ?」
それを聞いたバカラは指揮する凛々しい自分を思い浮かべているのか、だんだんと目尻が下がって顔がゆるんできた。
「やってやろうじゃないか」
完全に下心だよね。なんか悪魔の囁きに負けたよね。
「んじゃあ三日後くらいに適性試験やるとして、頼むわボル」
「おう」
こうして今日は解散となった──。
カイゾウの考えをよそに、着々と物事は進んで行きます。
次回へのヒント=オッサン!やりすぎ!